旧稿連載再掲の3回目、最終回である。
日米の反対を押し切って、アジアインフラ開発銀行が盛大に出発する。この3月31日スタート時参加国締切を経て、15年末運用開始という段取りである。IMFや世銀において経済力に見合った地位、発言権をG20決定の約束を破ってまで与えられなかった中国の、日米への反発に始まった流れが、これを招いた。日米主導のアジア開発銀行が、中国の経済力に屈する事になっていく流れであろう。英国の「日米への離反」に始まって、韓国、オーストラリア、ブラジルまでが加盟しているのだから。そして、経済盟主の移り変わりがこのまま続くならば、国際政治の移り変わりに必ず直結していく。
10年前の以下のように酷い「党官僚制度」状況から、中国はよく立ち直ってきたと、僕は思う。10年前のこの状況をみれば、これから10年後が少しは見えてくるのではないかという資料として、今再掲した。中国は、ソ連のような党官僚制度亡国への泥沼に陥らない道を辿れるのであろうか。この10年の変化が日米の予想を超えたものであったことだけは確かだと言えるだろうが。
【「『激流・中国』に、日本は部外者ではいられないだろう」その3 文科系 2006年07月30日
(「3 背景としての中国の政治体質問題」の続き)
地方政府と不動産会社とが結びついて、以下の「政策」が絡み合って、進められている。「農村労働力減らしという国家的調整政策」、「中央からは農民には減税命令。しかし金は下りてこず、地方は役人天国で行革をする意思もなし」、かくして「官による開発ビジネス」、「形象工程(出世のための業績作り箱物工事)」などなどだ。関連した最大問題点は、現代中国に土地の所有権というものが存在しないことである。国家のものであって、慣例としての使用権のみが存在し、その使用許認可権を政府が持っているという始末だから。
こうして、悪代官育ては底なしであって、自治体の最大単位、省にまで広がっている。2代続けて省の天皇、省党書記が逮捕された南西部、貴州省の場合を見てみよう。03年4月、「汚職官僚の総司令官」と呼ばれた貴州省党書記の劉方仁が逮捕された。同時に副省長、交通庁長、新聞出版局長、地方税局長なども連座させられている。彼らの罪状は収賄、家族の腐敗、生活態度などの4つであるが、最大の腐敗舞台は貴州省高速道路開発総公司であり、その設備費の水増し報告、ピンハネである。交通部門は全国的に、省段階でも不正が多くて、「油水部門」という悪名まであるほどだ。なおこういう場合の中国では、1族ぐるみの収賄は普通のことである。劉党書記一党で最も派手だったのは娘婿で、「貴A80000」ナンバーの真っ赤なホンダを乗り回す銀行員として知られていたという。
次は、こういう悪代官育成の温床というものを見てみよう。
党天国の下で、3権分立は中央でも地方でも機能していないに等しいのである。司法は実質的に公安の下にあり、立法の代議員推薦名簿は行政、党官僚が作る。もっとも、最近やっと対立候補名簿が提出されることも、所によりあるらしいが。こうして例えば、国に次ぐ自治体、省の党書記をチェックする存在は地方にはなく、中央政府のみである。つまり、1級上が動かなければ、何も始まらないのだ。こうして、先に見た丁作明事件のように、上級を動かそうとしている間に告発者が逮捕されたり、殺されるという事件は、現代中国では良く聞く話である。
4 読み終わって。「激流・中国」に日本は部外者ではいられないだろう
さて、日本の食料自給率は40%だ。商業的農業は良い買い手にしか売らない。この調子で行けば中国農業は、都市や日本を相手の商売としての発展をますます図っていくという道もたどるのだろう。乗り遅れた、旧式の零細農家はどうするのだろうか。日本にこういう問題が生じた60年~70年代とは比較にならぬぐらい世界の経済状態は厳しいのであって、都市流民つまりホームレスのような道しかないのではないだろうか。
また都市でも、軽工業、化学工業、機械、電子、医薬などの分野は、外資の市場シェアがすでに3分の1を超えている。パソコンソフトの95%はマイクロソフト、タイヤの70%はミシュラン、携帯の70%がノキア、モトローラで、国産自動車はもうだめだろうと言われている。流通は、世界トップ50小売業のうち40が中国に上陸、外資がほぼ全面支配を達成したようだ。安い労働力以外に将来性のある部門は、中国に存在するのだろうか。
こうして見てくると、ただでさえ少なくなり、世界最大の肥料生産率・消費率でやっと支えている農地の、減少、土壌浸食、砂漠化などの問題に対処していく財源や展望までが心配になってくる。なにしろ長期の対策と、莫大な経費を要する大事業なのだから。三峡ダムとか両大河の運河連結ぐらいではとても追いつけまい。対処方を考えるべき政治は、犯罪的なぐらいに、遅れているようだし。
(結び部分、後略。 終わり)】
今の心境を一言。
民主党政権が出来てすぐに、幹事長だった小沢一郎氏が大代表団を率いて中国に渡った。アメリカが関わったことがはっきりしている師匠・田中角栄の失墜を見つづけてきた小沢の、思えば今を見越した乾坤一擲の大勝負だったのだと思う。「アメリカの頭越しに中国に関わる事」。これを「アメリカという虎の尾を踏む行為」と表現してきたのは、今評判の孫崎享。この行為によってこそ、小沢は角栄と同じ運命を辿ることになったのだと思う。アメリカと組んだ官僚たちの仕業として。国家として借金大国である日米はもう普通なら、この流れに抗うことは出来ないだろう。第三次世界大戦でも起こすのでなければ。愚かな「軍拡・武器輸出」のアベ政権が、そんな方向に向かわないことを願うのみである。
日米の反対を押し切って、アジアインフラ開発銀行が盛大に出発する。この3月31日スタート時参加国締切を経て、15年末運用開始という段取りである。IMFや世銀において経済力に見合った地位、発言権をG20決定の約束を破ってまで与えられなかった中国の、日米への反発に始まった流れが、これを招いた。日米主導のアジア開発銀行が、中国の経済力に屈する事になっていく流れであろう。英国の「日米への離反」に始まって、韓国、オーストラリア、ブラジルまでが加盟しているのだから。そして、経済盟主の移り変わりがこのまま続くならば、国際政治の移り変わりに必ず直結していく。
10年前の以下のように酷い「党官僚制度」状況から、中国はよく立ち直ってきたと、僕は思う。10年前のこの状況をみれば、これから10年後が少しは見えてくるのではないかという資料として、今再掲した。中国は、ソ連のような党官僚制度亡国への泥沼に陥らない道を辿れるのであろうか。この10年の変化が日米の予想を超えたものであったことだけは確かだと言えるだろうが。
【「『激流・中国』に、日本は部外者ではいられないだろう」その3 文科系 2006年07月30日
(「3 背景としての中国の政治体質問題」の続き)
地方政府と不動産会社とが結びついて、以下の「政策」が絡み合って、進められている。「農村労働力減らしという国家的調整政策」、「中央からは農民には減税命令。しかし金は下りてこず、地方は役人天国で行革をする意思もなし」、かくして「官による開発ビジネス」、「形象工程(出世のための業績作り箱物工事)」などなどだ。関連した最大問題点は、現代中国に土地の所有権というものが存在しないことである。国家のものであって、慣例としての使用権のみが存在し、その使用許認可権を政府が持っているという始末だから。
こうして、悪代官育ては底なしであって、自治体の最大単位、省にまで広がっている。2代続けて省の天皇、省党書記が逮捕された南西部、貴州省の場合を見てみよう。03年4月、「汚職官僚の総司令官」と呼ばれた貴州省党書記の劉方仁が逮捕された。同時に副省長、交通庁長、新聞出版局長、地方税局長なども連座させられている。彼らの罪状は収賄、家族の腐敗、生活態度などの4つであるが、最大の腐敗舞台は貴州省高速道路開発総公司であり、その設備費の水増し報告、ピンハネである。交通部門は全国的に、省段階でも不正が多くて、「油水部門」という悪名まであるほどだ。なおこういう場合の中国では、1族ぐるみの収賄は普通のことである。劉党書記一党で最も派手だったのは娘婿で、「貴A80000」ナンバーの真っ赤なホンダを乗り回す銀行員として知られていたという。
次は、こういう悪代官育成の温床というものを見てみよう。
党天国の下で、3権分立は中央でも地方でも機能していないに等しいのである。司法は実質的に公安の下にあり、立法の代議員推薦名簿は行政、党官僚が作る。もっとも、最近やっと対立候補名簿が提出されることも、所によりあるらしいが。こうして例えば、国に次ぐ自治体、省の党書記をチェックする存在は地方にはなく、中央政府のみである。つまり、1級上が動かなければ、何も始まらないのだ。こうして、先に見た丁作明事件のように、上級を動かそうとしている間に告発者が逮捕されたり、殺されるという事件は、現代中国では良く聞く話である。
4 読み終わって。「激流・中国」に日本は部外者ではいられないだろう
さて、日本の食料自給率は40%だ。商業的農業は良い買い手にしか売らない。この調子で行けば中国農業は、都市や日本を相手の商売としての発展をますます図っていくという道もたどるのだろう。乗り遅れた、旧式の零細農家はどうするのだろうか。日本にこういう問題が生じた60年~70年代とは比較にならぬぐらい世界の経済状態は厳しいのであって、都市流民つまりホームレスのような道しかないのではないだろうか。
また都市でも、軽工業、化学工業、機械、電子、医薬などの分野は、外資の市場シェアがすでに3分の1を超えている。パソコンソフトの95%はマイクロソフト、タイヤの70%はミシュラン、携帯の70%がノキア、モトローラで、国産自動車はもうだめだろうと言われている。流通は、世界トップ50小売業のうち40が中国に上陸、外資がほぼ全面支配を達成したようだ。安い労働力以外に将来性のある部門は、中国に存在するのだろうか。
こうして見てくると、ただでさえ少なくなり、世界最大の肥料生産率・消費率でやっと支えている農地の、減少、土壌浸食、砂漠化などの問題に対処していく財源や展望までが心配になってくる。なにしろ長期の対策と、莫大な経費を要する大事業なのだから。三峡ダムとか両大河の運河連結ぐらいではとても追いつけまい。対処方を考えるべき政治は、犯罪的なぐらいに、遅れているようだし。
(結び部分、後略。 終わり)】
今の心境を一言。
民主党政権が出来てすぐに、幹事長だった小沢一郎氏が大代表団を率いて中国に渡った。アメリカが関わったことがはっきりしている師匠・田中角栄の失墜を見つづけてきた小沢の、思えば今を見越した乾坤一擲の大勝負だったのだと思う。「アメリカの頭越しに中国に関わる事」。これを「アメリカという虎の尾を踏む行為」と表現してきたのは、今評判の孫崎享。この行為によってこそ、小沢は角栄と同じ運命を辿ることになったのだと思う。アメリカと組んだ官僚たちの仕業として。国家として借金大国である日米はもう普通なら、この流れに抗うことは出来ないだろう。第三次世界大戦でも起こすのでなければ。愚かな「軍拡・武器輸出」のアベ政権が、そんな方向に向かわないことを願うのみである。
『アジア投資銀への参加 英外務省強く反対』
フィナンシャルタイムズ記事紹介なのだが、外務省の強硬な反対に財務相が逆らって、最後はキャメロン首相の財務相支持からアジアインフラ銀行参加が決まったのだそうだ。言わばこの決断によって、世界の雪崩現象が決まったと言える。
『日米との同盟関係にひびが入る』
このように、親米国はどこでも外務省がアメリカのスパイをやっているように見えて、面白かった。これに対して財務相はこう振る舞ったらしい。
『米国などからの反発よりも商業的利益の方が勝ると主張』
そう、現下世界のどこの国も、国民を喰わせるのでいっぱいいっぱいなのである。マネーゲーム経済が、現物経済から搾取することによってこうなってきた。そして今回、マネーゲーム経済国が現物経済国に敗れたと、英国の日米離脱とは、そんな流れにも見えて、面白い。
ちなみに、この銀行出現によって、日米マネーゲームは最大の武器を失ったことになる。遅かれ早かれ、日米株の落下が始まるのではないか。国家資金で吊り上げた株に世界の金を集めようという魂胆など、とっくに見透かされているのだろう。
世界的に消費量のふえて食品で値上げ・・・
この動きは止まりそうもない。
そんな時代を映し出すNHKの朝ドラが始まった。
ちょっと修身の教科書みたいだけれど。
イラクではアメリカ農業企業が席巻し始めた。「アラブの春」地帯でも間違いなくこの動きが急のはずだ。国家権力がふらついた時には、そこに米農企業、石油企業がどんどん入り込んでいくという世界戦略なのだ。世界食糧基地、世界石油基地をあちこちに創るという作戦である。
そして、この背後には米大金融が居るはずだ。石油と農産物との先物などデリバティブぐるみの世界戦略ということである。農業では、アメリカの人工種子が世界の種子を駆逐しつつのことであって、本当に怖いと思う。