山上徹也の安倍晋三射殺事件は、非常によく計画されていたという意味で犯意も十分すぎるほどの確信犯殺人事件である。他方、どんな残酷な殺人事件の判決にも、背景などを考察した情状酌量というものが考慮される。安倍晋三の国葬賛否論議が続く間はずっと、この重大事件の背景をわかっている限りにおいて描き出していきたい。
この殺人事件が起こって、山上徹也の「統一教会への恨み」が報道されたとき、ほとんどのマスコミが「某宗教団体」という書き方をした。それも、「無関係なことで逆恨みして」という描き方がほとんどだったと記憶する。この報道姿勢はいまから思えば、「事実上、政権党に洗脳されてきたに等しく、政権、安倍を忖度、擁護するに等しいマスコミ論調」だったと言えるほどだ。山上徹也の生い立ちをば統一教会が残酷すぎるほどに破壊したのだし、その統一教会の改名や、安倍を中心として保守党選挙への大々的活用などは、「無関係な逆恨み」という当初のマスコミ報道をば唾棄しつつ笑い飛ばすものにしてしまった。
たとえば、デイリー新潮8月3日は、こんなことを伝えている。
『 安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」2022/08/03 05:57
(前略)
安倍氏が選挙応援を教団に依頼
そうした安倍氏肝いりの候補の一人だったのが、元産経新聞記者で、2013年の参院選全国比例で初当選した安倍派の北村経夫参院議員だ。カルト宗教に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、「初当選時、当時首相だった安倍氏が北村氏の選挙応援を教団に依頼しているのです」
教団の内部文書にはこう書かれていた。「〈首相からじきじきこの方(北村氏)を後援してほしいとの依頼〉〈まだCランクで当選には遠い状況です〉〈今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の『死活問題』です〉と。19年の参院選でも統一教会内部で北村氏を応援するビラが出回っていました。当時、大宮で行われた演説会では国際勝共連合の関係者が仕切っており、300人以上が入れる会場に半分から3分の2くらいは信者が動員されていました」
自民党山口県連の関係者が後を受ける。「北村さんはいずれの選挙も盤石な地盤を築いていたとは言い難く、安倍さんが選挙直前になって慌てて、統一教会に支援を依頼したといわれています。“統一教会のおかげで当選できた”と地元ではまことしやかにささやかれているのです」
北村事務所は、「旧統一教会から支援を受けたことも、見返りを求められたこともありません」と回答するも実際、統一教会の推薦が決まると手厚い支援が受けられるようで、
「一般的に統一教会サイドから20〜30人程度のボランティアが連日手伝いに来てくれます。電話作戦やチラシ配り、ポスター張りなどの機動部隊となってくれるので、貴重な戦力です。15〜20人くらいの人員で選対事務所を切り盛りしているところもありますから、本当に助かります」(県連関係者) (後略)
(デイリー新潮8月3日) 』
さて、2015年に、今の安倍派会長代理で、当時の下村博文文科相が統一教会の改名を認めて以来、安倍派を中心にこのカルト信者を自分らの選挙にフルに活用してきたと、次々と明らかになっている。洗脳カルトの世界基準に当てはまる被害者を無数に生み出してきた団体を改名再出発させた見返りに、「税金で雇われて国民のために働け」とされた公僕たちが狂信者らを選挙に活用、動員してきたのである。そんな議員が特に安倍派に集中しているのである。
山上徹也の安倍晋三に対する犯意の背景には、十分すぎるほどの情状酌量要件が存在していた。ちなみに、政府主催の桜を見る会には、山口県人(安倍会員)がやたらに多く、統一教会関連の参加者らもいたのだ。安倍時代になってから、佐川や黒川ら官僚たちを(保守党選挙)忖度行政に走らせた罪もこの上なく大きい。選挙に強い安倍晋三とは、「こういうことであった?!」という思いになるのである。選挙のためにこんなことを重ね広めて来た安倍晋三を国葬にする? 「自民党葬」ならば分かりすぎるほどに分かるのだが、国民の苦労に思いをはせることができぬこういう「公僕」を国葬なんかには出来ない。