★その① 元米国務省職員によるイラク攻撃批判
毎日新聞が、イラク開戦5年を迎えるにあたって、イラク戦争の総括特集を始めている。きわめて重要な特集だ。毎日新聞に敬意を表したい。
米国のイラク攻撃は、21世紀のはじめを汚した深刻な外交的一大事件であった。末永く記憶にとどめられる事件となるに違いない。
それは世界を分裂させた。中東情勢の混迷を加速させた。日本は「テロと戦う」米国軍に決定的に従属させられる事になりつつある。なによりもおびただしい人命が失われた。その犠牲は今も続いている。
自衛隊のサマワからの撤退にともなって、イラク戦争はすっかり日本のメディアから消えてしまった。それにともなって日本人の関心も急速に失せた。
しかし、いつか日本でも、誰かの手によって、米国のイラク攻撃が冷静に検証されなければならない。我々は、米国のイラク攻撃を支持した小泉外交の大きな罪を直視しなければならない。それなくしては日本外交の再生はない。日本の自立はおぼつかない。
12日の毎日新聞に掲載されていたジョン・ブラウン元米国務省職員(59)の次の証言は、当時の私の記憶を鮮やかに蘇らせてくれた。それはレバノンで皆が言っていた事だ。駐レバノン米国大使が私に述べていた事だ。ブッシュ大統領と小泉首相の軽さが見事に一致していた事を教えてくれる。
・・・この戦争は素晴らしいという同僚は一人もいなかった・・・ブッシュ大統領自身、国際的な事にほとんど興味を持たず、知識もなかった。
ホワイトハウスの取り巻き連中の関心は常に国内問題だった。つまり、共和党政権をどうやって維持するか・・・02年11月の中間選挙に勝つために大統領を強い指導者に見せかける必要があった。そのためにイラク危機を利用したのだ・・・
政権幹部はこんな結果になるとは全く予測していなかったはずだ。簡単に考えていたのだ。中東に関する無知のゆえだ・・・ブッシュ大統領は・・・イラクにイスラム教のシーア派とスンニ派の2宗派がある事さえ知らなかった・・・
イラク戦争を遂行する必要上、米政府はウズベキスタンやパキスタンなどの独裁政権と手を結んだ。アブグレイブ刑務所での収容者虐待や拷問(を重ねた)。その結果世界中で反米感情を高めてしまった。イラク戦争によって米国のイメージは決定的に低下した・・・
米国はもっと長期的な広い視野で外交をする必要がある。イラクはそれを教えている・・・
あらためて強調する。イラク戦争の総括なくしては日本外交の再生はない。日本の自立はない。
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2008年03月11日
★その② 拷問を容認するブッシュ大統領
さすがにこのニュースには驚いた。このような人物を大統領に居座らせた米国議会や米国民に、あらためて失望させられた。米国に正統性はない。
ブッシュ大統領は、8日のラジオ演説で、CIAがテロ容疑者への尋問で「水責め」などの拷問を禁止する法案に拒否権を発動したと発表した。それを11日の読売新聞が報じている。
布で覆った顔に大量の水を浴びせて自白をせまる「水責め」は、どう考えても今日の民主主義国家では許されない行為だと思っていた。映画の中のシーンであると思っていた。ところが米国でこれが行われてきたのだ。それが明るみになって世界の批判が集中した。民主党主導でそのような拷問を禁止する法案が上下院を通過した。
それをブッシュ大統領が拒否したのだ。「大規模テロ計画を未然に防げた」からだと胸を張ったのだ。
米国では「テロとの戦い」では何でも許されるのだ。これでは反米テロはなくならない。その米国と価値観を共有する日本に未来はない。
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2008年03月11日
毎日新聞が、イラク開戦5年を迎えるにあたって、イラク戦争の総括特集を始めている。きわめて重要な特集だ。毎日新聞に敬意を表したい。
米国のイラク攻撃は、21世紀のはじめを汚した深刻な外交的一大事件であった。末永く記憶にとどめられる事件となるに違いない。
それは世界を分裂させた。中東情勢の混迷を加速させた。日本は「テロと戦う」米国軍に決定的に従属させられる事になりつつある。なによりもおびただしい人命が失われた。その犠牲は今も続いている。
自衛隊のサマワからの撤退にともなって、イラク戦争はすっかり日本のメディアから消えてしまった。それにともなって日本人の関心も急速に失せた。
しかし、いつか日本でも、誰かの手によって、米国のイラク攻撃が冷静に検証されなければならない。我々は、米国のイラク攻撃を支持した小泉外交の大きな罪を直視しなければならない。それなくしては日本外交の再生はない。日本の自立はおぼつかない。
12日の毎日新聞に掲載されていたジョン・ブラウン元米国務省職員(59)の次の証言は、当時の私の記憶を鮮やかに蘇らせてくれた。それはレバノンで皆が言っていた事だ。駐レバノン米国大使が私に述べていた事だ。ブッシュ大統領と小泉首相の軽さが見事に一致していた事を教えてくれる。
・・・この戦争は素晴らしいという同僚は一人もいなかった・・・ブッシュ大統領自身、国際的な事にほとんど興味を持たず、知識もなかった。
ホワイトハウスの取り巻き連中の関心は常に国内問題だった。つまり、共和党政権をどうやって維持するか・・・02年11月の中間選挙に勝つために大統領を強い指導者に見せかける必要があった。そのためにイラク危機を利用したのだ・・・
政権幹部はこんな結果になるとは全く予測していなかったはずだ。簡単に考えていたのだ。中東に関する無知のゆえだ・・・ブッシュ大統領は・・・イラクにイスラム教のシーア派とスンニ派の2宗派がある事さえ知らなかった・・・
イラク戦争を遂行する必要上、米政府はウズベキスタンやパキスタンなどの独裁政権と手を結んだ。アブグレイブ刑務所での収容者虐待や拷問(を重ねた)。その結果世界中で反米感情を高めてしまった。イラク戦争によって米国のイメージは決定的に低下した・・・
米国はもっと長期的な広い視野で外交をする必要がある。イラクはそれを教えている・・・
あらためて強調する。イラク戦争の総括なくしては日本外交の再生はない。日本の自立はない。
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2008年03月11日
★その② 拷問を容認するブッシュ大統領
さすがにこのニュースには驚いた。このような人物を大統領に居座らせた米国議会や米国民に、あらためて失望させられた。米国に正統性はない。
ブッシュ大統領は、8日のラジオ演説で、CIAがテロ容疑者への尋問で「水責め」などの拷問を禁止する法案に拒否権を発動したと発表した。それを11日の読売新聞が報じている。
布で覆った顔に大量の水を浴びせて自白をせまる「水責め」は、どう考えても今日の民主主義国家では許されない行為だと思っていた。映画の中のシーンであると思っていた。ところが米国でこれが行われてきたのだ。それが明るみになって世界の批判が集中した。民主党主導でそのような拷問を禁止する法案が上下院を通過した。
それをブッシュ大統領が拒否したのだ。「大規模テロ計画を未然に防げた」からだと胸を張ったのだ。
米国では「テロとの戦い」では何でも許されるのだ。これでは反米テロはなくならない。その米国と価値観を共有する日本に未来はない。
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2008年03月11日
お礼申し上げます。13日はもう欠稿と思っていました。そこに貴方のこのエントリー。嬉しかったです。
なお、毎日新聞のこの連載は僕も愛読しています。11日火曜日の第1回目は、かのジョン・ボルトン前国連大使でした。こんなことを語っていましたね。
フセイン転覆は正しかったが、スンニ、シーア、クルド人があんなに仲が悪いとは誤算だったと。
さらに、こんな酷いことも。
「世界のどこかでテロリストと戦わねばならないのなら、米国や西欧で戦うよりイラクで戦う方がいいことは明らかだ」
「テロが中東全域や世界各地に拡大することによる犠牲と、イラク戦争の犠牲を比較する必要がある」
それとネット虫さん、最近コメントが極端に少ないときがあり、ちょっと寂しい思いをしていましたので、コメントもよろしく。