1 前置き、問題意識またはこの理解の重要さについて
「良い守備からこそ得点の多くが生まれる」とは、昔からの格言。が、ドルトムントのゲーゲンプレスが生まれて以降の世界サッカーでは特に、攻守の境目がどんどん難しくなっている。最近よく「攻守の切替の速さ」が最重要のサッカー戦略用語になっているのだから、なおさらのことだ。何を攻撃と言い、何を守備というのか。そもそもゲーゲンプレスとは、「攻ー守ー攻」という3つの局面を必ず含んだ得点術用語であって、そういう3局面を含んだ1つの得点戦略なのである。
こんな時代になってなお守備と攻撃を厳然と分けて何かを語れると考えている事自身が、すでに時代遅れの思考なのだと思う。そこで僕は、得点法に絡んで来る守備は守備などとは呼ばずに、潰しと呼んできた。それも主として、個人的潰しではなく、組織的潰しをこそ得点法として論じるべき時代に入ってきた、と。
2 パラグアイ戦理解のためにも
さて、以上のことを初めに語ったのは、こういう発想を頭に置いておかないと、現代サッカーの最重要局面が理解できないからである。ハイ・ゾーン・プレスで攻めていて、ボールを取られ、すぐに奪い返して得点に結びつけようなどという局面が正確に論じられず、思考が追いついていかないことになる。そしてこういう思考からは、代表最近のスイス戦とパラグアイ戦の以下に観るような甚だしくかつ大事な違いを説明することもできなくなる。日本が勝ったパラグアイは今でも強いチームなのであって、この予選ではブラジルとコロンビアからそれぞれ一勝を挙げているのだから。しばらく悪いゲームしかできなかった日本が、何が原因でこんな相手とこんな良いゲームが出来るようになったのか。
スイス戦の後で大迫はこう述べた。「あんなプレスをやらされるなら、30分で死んでしまう」。 パラグアイ戦の戦評では逆に、「前4人の連携プレス、ボール奪取が実にスムースで、これが勝因」と述べた専門家が多い。どこでこんな大きな違いが生まれたのかこそ、今後の代表の戦いを考える最要点のはずだ。
3 「組織的に敵ボールを潰す」司令塔
さて、現代サッカーで最も大事な敵ボール奪取は、組織的に行われる。組織で奪うのであって、誰か個人が奪ったように見えてもそれはたまたま「彼の所へボールが来た」にすぎないのである。そして、こういうボール奪取組織作りにはその司令塔が不可欠である。前陣がプレスに行きやすいように後ろを押し上げて敵のパスやスペースを消していく司令塔だ。 自らの言葉とプレーとで、その都度良いボール奪取陣形を作る役割である。これがいー加減な扱いをされるなど機能しないと、前と後ろが間延びをして「死にそうになった」と大迫が言うスイス戦代表が出現してしまう。W杯の戦いを例に取れば、ドイツ大会、ブラジル大会はこれで敗れたとさえ、言って良い。
そしてさて、例えば長谷部が、この事の名手であるのは明らかだ。だって、先日のドイツ・カップ戦決勝でバイエルンを破って優勝したフランクフルトの守備陣営において最も信頼厚い司令塔なのだから。このゲームの長谷部は、時にボランチ、時にリベロという大活躍だったが、守備の要の役割を果たして、ドイツ代表集団といえるバイエルン相手の決勝戦に勝利したのである。また、久々に鮮やかな勝利を収めたパラグアイ戦では、キャプテン山口がこの役割を演じたことも明白である。前4人があれだけ上手くプレスに行けたというのは、後ろでパスコースやスペースを埋めるなどの選手流動が上手かったということに他ならないからだ。
さて、こういう長谷部や山口に対して、「潰しはまーまーかもしれないが、その次のパスが下手だからダメ」とか、「パスが下手なのは、視野が狭いからだ」とかと断罪した上で、「パスが上手いボランチ2人、例えば柴崎と大島に替えるべき」とパラグアイ戦評論を書いたとしたら、潰しの組織作りを何も見ていない大変なゆがんだ視点だと僕は言いたい。例えばこんな反論をしたい。柴崎や大島に、組織的潰しの司令塔などできるわけがない、とか。彼らと、長谷部、山口とは役割が違い、後者に替えうる人は他には居ない、とか。ロングパスの視野はないかも知れないが、別の視野がある、前と後の潰し組織作りにこそ、長谷部、山口の視野の広さ、良さが発揮されているのである、とか。本田も含めて全員が、厳重にこの司令塔の指示を守らねばお話にならない、とか。
という以上全ても含めて、パラグアイ戦の組織が何故以前の戦いとは全く違って見事だったのかを正しく分析することは、今後の代表を正しく考えてみられる最低の作業になると主張しておく。
「良い守備からこそ得点の多くが生まれる」とは、昔からの格言。が、ドルトムントのゲーゲンプレスが生まれて以降の世界サッカーでは特に、攻守の境目がどんどん難しくなっている。最近よく「攻守の切替の速さ」が最重要のサッカー戦略用語になっているのだから、なおさらのことだ。何を攻撃と言い、何を守備というのか。そもそもゲーゲンプレスとは、「攻ー守ー攻」という3つの局面を必ず含んだ得点術用語であって、そういう3局面を含んだ1つの得点戦略なのである。
こんな時代になってなお守備と攻撃を厳然と分けて何かを語れると考えている事自身が、すでに時代遅れの思考なのだと思う。そこで僕は、得点法に絡んで来る守備は守備などとは呼ばずに、潰しと呼んできた。それも主として、個人的潰しではなく、組織的潰しをこそ得点法として論じるべき時代に入ってきた、と。
2 パラグアイ戦理解のためにも
さて、以上のことを初めに語ったのは、こういう発想を頭に置いておかないと、現代サッカーの最重要局面が理解できないからである。ハイ・ゾーン・プレスで攻めていて、ボールを取られ、すぐに奪い返して得点に結びつけようなどという局面が正確に論じられず、思考が追いついていかないことになる。そしてこういう思考からは、代表最近のスイス戦とパラグアイ戦の以下に観るような甚だしくかつ大事な違いを説明することもできなくなる。日本が勝ったパラグアイは今でも強いチームなのであって、この予選ではブラジルとコロンビアからそれぞれ一勝を挙げているのだから。しばらく悪いゲームしかできなかった日本が、何が原因でこんな相手とこんな良いゲームが出来るようになったのか。
スイス戦の後で大迫はこう述べた。「あんなプレスをやらされるなら、30分で死んでしまう」。 パラグアイ戦の戦評では逆に、「前4人の連携プレス、ボール奪取が実にスムースで、これが勝因」と述べた専門家が多い。どこでこんな大きな違いが生まれたのかこそ、今後の代表の戦いを考える最要点のはずだ。
3 「組織的に敵ボールを潰す」司令塔
さて、現代サッカーで最も大事な敵ボール奪取は、組織的に行われる。組織で奪うのであって、誰か個人が奪ったように見えてもそれはたまたま「彼の所へボールが来た」にすぎないのである。そして、こういうボール奪取組織作りにはその司令塔が不可欠である。前陣がプレスに行きやすいように後ろを押し上げて敵のパスやスペースを消していく司令塔だ。 自らの言葉とプレーとで、その都度良いボール奪取陣形を作る役割である。これがいー加減な扱いをされるなど機能しないと、前と後ろが間延びをして「死にそうになった」と大迫が言うスイス戦代表が出現してしまう。W杯の戦いを例に取れば、ドイツ大会、ブラジル大会はこれで敗れたとさえ、言って良い。
そしてさて、例えば長谷部が、この事の名手であるのは明らかだ。だって、先日のドイツ・カップ戦決勝でバイエルンを破って優勝したフランクフルトの守備陣営において最も信頼厚い司令塔なのだから。このゲームの長谷部は、時にボランチ、時にリベロという大活躍だったが、守備の要の役割を果たして、ドイツ代表集団といえるバイエルン相手の決勝戦に勝利したのである。また、久々に鮮やかな勝利を収めたパラグアイ戦では、キャプテン山口がこの役割を演じたことも明白である。前4人があれだけ上手くプレスに行けたというのは、後ろでパスコースやスペースを埋めるなどの選手流動が上手かったということに他ならないからだ。
さて、こういう長谷部や山口に対して、「潰しはまーまーかもしれないが、その次のパスが下手だからダメ」とか、「パスが下手なのは、視野が狭いからだ」とかと断罪した上で、「パスが上手いボランチ2人、例えば柴崎と大島に替えるべき」とパラグアイ戦評論を書いたとしたら、潰しの組織作りを何も見ていない大変なゆがんだ視点だと僕は言いたい。例えばこんな反論をしたい。柴崎や大島に、組織的潰しの司令塔などできるわけがない、とか。彼らと、長谷部、山口とは役割が違い、後者に替えうる人は他には居ない、とか。ロングパスの視野はないかも知れないが、別の視野がある、前と後の潰し組織作りにこそ、長谷部、山口の視野の広さ、良さが発揮されているのである、とか。本田も含めて全員が、厳重にこの司令塔の指示を守らねばお話にならない、とか。
という以上全ても含めて、パラグアイ戦の組織が何故以前の戦いとは全く違って見事だったのかを正しく分析することは、今後の代表を正しく考えてみられる最低の作業になると主張しておく。
先ず前半は、サイドバックとか彼の側のセンターバックなど敵サイドの選手の特徴を賢明に観察する。そこで相手の癖のようなものを見付けておくのだろう。そう考えないと、理解できないプレーがあるからだ。彼が後半に度々起こす。
「対面相手からのいきなりのボール奪取、そのままドリブルでシュート。あるいは、ほとんどシュートにつながる身方へのパス」
さて、こういう「ボール強奪」は守備とは言えないだろう。すでに1つの得点法なのである。最近の世界では、こういう選手、プレーがどんどん増えている、とも力説したい。
このフランクフルト・バイエルン戦における長谷部は、別コメントに書いたようにボランチとリベロの両方を演じている。このゲーム終盤では、長谷部がハメスからボールを奪って、そのボールから得点が生まれたはずだ。
ハメスのような攻撃の選手はこのように、守備の仕方によっては案外チームの弱点にもなるのである。長谷部はハメスのその弱点をよく知っているということだ。
ちなみに、ポーランドのエース、レパンドフスキは香川の元同僚であった。香川を使うのが面白かろう。そして、そのころから長谷部は、レパンドフスキのこともよく知っているのである。