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日本サッカー史に聳える中田英寿の足跡  文科系

2017年09月20日 12時33分00秒 | スポーツ
 これは、06年ワールドカップ直後にある所に書いたものだが、再掲させていただく。日本サッカーは、彼にどれだけ感謝してもしたりないはずだと、そういう思いで書いた物だ。ワールドカップ(日本出場)が近づくといつも思い出すべき事と、自分に言い聞かせている内容である。

【 最後に、〇六WCドイツ大会終了を待って、二九歳でサッカー界からの引退表明をした中田英寿のメモリーを記しておく。彼が日本サッカーにどれだけの革命をなしたかという諸事実の記録である。

 まず、彼のジャパン代表登場がどれだけ衝撃的であったかから、始める。
 九七年、フランスワールドカップ・アジア予選途中で絶望的な苦戦続きから加茂・代表監督解任という結末、窮地が訪れていた。前回の「ドーハの悲劇」を経て、「今回こそは、WC日本初出場!」という国民の期待が崩れかけていた瞬間である。この瞬間に、突如出現した新米の二十歳。チーム危機の中、実力でレギュラーをもぎ取り、あまたの先輩たちが即座に「チームの司令塔」と自然に認めて、その後数ゲームで日本初出場という結果を出して見せた「日本の救世主」。日本中を大フィーバーさせたのも当然のことだろう。この二十歳の出現がなければ、フランスでワールドカップ日本初出場という歴史自身がなかったはずなのだから。クライマックスとして上げられるのが「ジョホールバルの奇跡」、対イラン第三代表決定戦。得点したのは中山、城、岡野。この三得点それぞれへの最終パス(アシスト)は全て中田が出したものだった。
 さて、この彼、その後も日韓、ドイツと三回のワールドカップを引っ張り続け、さらに希有のアスリートであることを証明し続けて見せた。これが、中田の二十歳から二九歳までの出来事なのである。そもそも「三大会連続出場」は他に川口、小野だけだし、「三大会レギュラー出場」ともなればもちろん、中田以外にはいない。こうして、日本サッカー界の常識を覆した革命児と表現しても、サッカー界の誰一人反対はできないという選手なのである。

 サッカー選手としての彼は、そもそもどんな特長をもっていたか。
 二十歳の彼のパスは、「『追いつけ!』という不親切この上ないもの」と日本の評論家たちから総スカンを食った。が数年後にはもう、彼のパススピードでしか世界には通用しないとは、周知の事実となった。
「フィールドを鳥瞰していることを示すようなあの広い視野はどうやって身につけたものなのか?」。こちらは、反対者のいない関係者全員が初めから一致した驚きの声だった。どんなプレー中でも背筋を伸ばし首を前後左右へと回してきょろきょろする彼のスタイルは、その後日本の子ども達の間に広がっていったものだ。正確なロングパスは正確な視野からしか生まれないのだから。
「人のいない所へ走り込まないフォワードにはパスをあげないよ」。これも今や、「フォワードは技術以上に、位置取りが全て」という、日本でも常識となった知恵だ。これについては日本FW陣の大御所、中山雅史のこんな証言を読んだことがある。
「中田が俺に言うのね。『そんなに敵ディフェンダーをくっつけてちゃ、パスがあげられない。どこでも良いから敵を振り切るように走ってって。そこへパスを出すから。そしたらフリーでシュート打てるでしょう』。俺、そんな上手くいくかよと、思ったね。でもまー、走ってみた。きちんとパスが来るじゃない。フォワードとして『目から鱗』だったよ!」
 この出来事が中田二十歳の時のことだ。十年上の大先輩によくも言ったり!従ってみた中山もえらい。中山が代表で中田から学んだものこそ、その後三十歳を過ぎて2度の得点王に輝き、J史上最強と言われる黄金期磐田を作り上げた原動力だったのだとも、僕は確信している。封建的な日本スポーツ界では、希有なエピソードなのではないか。

 中田はまた、自分個人用のサッカー専用体力トレーニングにプロ入り以来毎日、汗を流し続けている。「走れなければサッカーにはならない」、「外国人には体力負けするなんて、プロとしては言い訳にもならないよ」。自らのプレー実績で示してきたこれらのことの背景こそ、このトレーニングなのである。

 さて、「不親切な速すぎるパス」とか、「スペースの活用」、「ますますサッカーは格闘技になっている」とか、これら全ては今でこそ日本でも常識になっているものだ。しかし、中田はこれら全ての「世界水準」を二十歳にして、どうやって身につけたのか。「世界から習った」、「例えば十六歳で出会ったナイジェリアから(ヌワンコ・カヌーの名前をよく挙げていた)」などと彼は述べている。ほとんど世界の相手を観察してえた「知恵」なのである。もの凄い観察力、分析力、練習プログラム考案力、自己規制!それら全てにおいて、なんと早熟だったことか! この上ない頭脳の持ち主が、若くして観察のチャンスに恵まれたと語りうることだけは確かであろう。

 彼はまた、世の全てが媚びを売るがごときマスコミへの反逆者でもある。「嘘ばかり書く」、「下らない質問ばっかり投げてくる」と主張し続け、「こんなものは通さず、自分の大事なことはファンに直接語りたい」と、スポーツマン・ホームページの開拓者にもなったのだった。当時有名になったナカタ・ネットを創ったのは、弱冠二一歳、九八年のことである。それも、日本語、英語、イタリア語だけでなく、中国語、韓国語版まで備えたサイトに育ち上がって行った。国際人というだけではなく、アジアの星にもなっていたということなのだ。

 他方、日本のサッカーマスコミは未だに程度が低い。テレビのサッカーでも、ボールばかりを追いかけているように見える。ゴールに向かって組み立てられていくサッカーの神髄は、これでは絶対に見えてこないはずだ。この『ボール追いかけ』カメラワークは野球中継の習慣から来ているものだろう。野球はどうしてもボールを追いかける。その習慣で、サッカーでもボールを追いかける『局面アングル』が多くなっているのではないか。それにもう一つ、日本の新聞などのサッカー報道でも、勝ち負け、得点者に拘りすぎているように思われる。サッカーの得点は、ほとんど組織の結果と言って良いのだから、フォワードよりも組織を写して欲しいと思うのだ。得点を援助したラストパス、いわゆる「アシスト」報道がないのも、日本の特徴だろう。

 ありがとう、中田英寿。僕をこれほどのサッカー好きにしてくれて。僕の生活にサッカーを与えてくれて。】

 最後に、現在のマスコミは「キング・カズ!」を連呼しているが、何故ヒデの名前がもっと多く出てこないのだろうか。不思議だ。ワールドカップ初出場、W杯本戦初の予選リーグ突破・ベスト16の立役者を日本サッカー史のキングと呼ばずして、誰をそう呼べるというのか? ナカタを差し置いたこの「キング・カズ」もまた、読売辺りが画策したマスコミ的偏向なのであろう。

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3 コメント

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3W杯連続で中心選手! (文科系)
2019-08-29 12:55:03
 今日これを改めて読んで、気付いた。このエントリー中の本文を書いた06年以降今日まで、中田ヒデの他に標記の選手がもう1人生まれた。長谷部誠である。それも、南ア、ブラジル、ロシアと、3大会連続キャプテン! これも大した偉業である。

 長谷部誠は、一体いつまでドイツでプレーし続けるのか。まだまだ当分、チームが彼を離してくれそうもないからだ。それも、長くプレーできるDFであるという以上に、フィールドの主、指示者という役割を与えられているから、まだまだ続きそうなのである。こういう選手がまた、ドイツ人は大好きだと来ているから、長谷部は幸せ者だと思う。 
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あろかだったスポーツマスコミ! (文科系)
2019-08-29 13:20:08
 文中にもあるが、中田出現時の日本サッカーマスコミの知識は、何と貧弱で愚かだったことか。何も考えないで時々のマスコミ評論を見ているだけだと、そんな貧弱なスポーツ鑑識眼しか育たないのだと思う。日大アメフト問題、柔道界数々の不祥事、相撲界のそれ・・・古い権威主義と一体になったようなスポーツ界をば、オリンピックを前にしてよくよく観ていようではないか。

 高校野球もどんどん丸坊主が無くなってきたそうだが、こんなことは当たり前。今時、「全員丸坊主」というチームがどうかしているのだ。「洗脳」されてない普通の高校生の頭脳なら、そう考えられるのが普通だろう。日本スポーツ界の一角には、そんな洗脳力すら残存しているのである。
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長谷部誠 (文科系)
2020-03-27 10:15:23
 このヒデ並みの選手がその後もう1人現れた。長谷部誠である。まずなんと言っても、南ア、ブラジル、ロシアと3W杯チームのキャプテン。それも、南ア、ロシアと2大会で予選リーグを突破しているチームの絶対的キャプテンなのだ。
 また、近年全盛期のドイツで優勝して年間ベスト11選手に選ばれただけでなく、名門チームの守備の要を長く努めてきた実績などである。
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