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マスコミの“橋下報道”は?        大西五郎

2012年03月05日 18時55分05秒 | Weblog
大西さんが東海放送人9条の会に投稿された記事を転載します。(らくせき)

マスコミは“橋下現象”を報じているが
その本質と背景を正しく伝えているか
               2012.3.5 CBC・OB 大西 五郎

高い支持率の世論調査報道
 3月5日の毎日新聞は3~4日に行なった全国世論調査で、
橋下大阪市長が率いる「大阪維新の会」の国政進出に「期待する」と
答えた人は61%に上り、「期待しない」の34%を大きく上回ったと伝えた。
一方政党支持率をみると、民主党14%、自民党13%で、
1月の前回調査からそれぞれ3㌽下落し、09年の政権交代後では最低水準に。
代わりに「支持政党なし」が6㌽増の54%と過半数に達し、
『既成政党離れが進み、民意の受け皿として維新への期待感が高まっている』と
報じた。

 朝日新聞が大阪府民を対象に2月に行なった世論調査でも、
橋下市長に対する府民の支持率は70%、不支持は17%。
「維新の会が次の総選挙で国会に影響力を持つような議席をとってほしいか」
という質問には59%が「とってほしい」と答えた
(朝日新聞2月21日、調査は18~19日)。

他政党を凌ぐ「維新八策」の詳しい紹介
 大阪維新の会が2月14日に次期衆議院選の公約となる
「維新版船中八策」のたたき台を公表すると、
まだ国政に議席も持っていない政冶団体の政策骨子を
新聞各紙、放送各局ともこれを大きく報じた。
マスコミはこのところ維新の会の動向を競って詳しく伝えている。
他の政党の政策をこれほど詳しく紹介しているだろうか。
維新の会への「傾倒ぶり」が目に余る状況である。

 もっとも朝日新聞は「維新八策たたき台」が公表された翌日(15日)の社説で
「なぜいま『国盗り』か」と、「大阪再生をめざす」「国の政党とは一線を画す」と
言っていた橋下氏の言行不一致を指摘した。
しかし普通社説は「最も読まれない記事」と言われている。
社説での指摘も重要だが、一般の読者が読む記事でどう報じるかが、
より重要であろう。

憲法九条改正(集団的自衛権容認)論

 橋下氏は憲法九条についても「2年かけて国民的議論をした上で、
国民投票を実施すべきだ」と述べ、
「他人を助ける際に嫌なこと、危険なことはやらないという価値観。
国民が九条を選ぶ(改正しない)なら、僕は別なところに住もうと思う」と
記者団に述べたといいます。
つまり「集団的自衛権を認めていない今の憲法を変えるべきだ」と
言っているのです。
「維新八策」に憲法改正についての国民投票の実施を盛り込むつもりです。
それなのにマスコミこの問題を橋下談話として事実を報道するのみで、
橋下氏の改憲論を問題にしたところはない。

橋下流政冶や熱狂の背景の分析こそマスコミの使命

先の社説と同日の天声人語は「本紙世論調査で、
橋下氏の政冶手法を評価する人は3分の2にも達した。
現代版八策の中身は首相公選や参院の廃止など、
憲法や国の形をわかりやすく一変させる志向が強い。
実現性は薄くても、今の生きづらさや英雄待望論には響き合う。
計算してのことだろう。
驚くような勢いは、世の鬱憤をはらんで巨大化していく風船を思わせる。
とはいえ将来に向けて地道な変化を積み重ねていくのが民主主義の姿であろう。
熱狂の向こうに光があるか茫然があるか。冷静な吟味が必要である」と書いていた。
その通りだと思う。ならマスコミの現状はどうであろうか。
「冷静な吟味」より「現象を追いかける」ことに流れてはいないか。
教育条例の中身は伝えても、過大な処分は不当とした最高裁判決との関係を解説したか。
最高裁判決があることは付言しても、そのことを橋下氏に指摘して、
それでもなお自分の言い分に従わない教員はやめさせるというのは、
教育のありかたとしてどうなのかと橋下氏に問い質した記事は読んだことがない。
市職員への思想調査の問題でも、市労連が反対した、
府労委が不当労働行為の疑いを指摘したということは報道しても、
弁護士でもある橋下氏の憲法感覚を問い詰めたことがあるのか。

維新の会が「民意の受け皿」になるのはなぜか。
巧みな言説で民意を掠め取っているのではないか。
世論調査の結果だけを報じるのではなく、
「民意」がどこにあるのかの詳しい検証こそが、
マスコミ・ジャーナリズムの使命ではないか。

その通りですね。

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