自民、取材拒否撤回 TBSから謝罪あったと(2013.7.6 毎日新聞)
自民党がTBSの報道内容に公平さを欠いたとして取材を当面拒否するとしていた問題で、同党は5日、石破茂幹事長宛てにTBSの報道局長名の回答文書があったことを明らかにしたうえで、「これを謝罪と受け止める」として同日で解除すると発表した。
発表文は「本回答、またこの間、数字にわたる政冶部長はじめ報道現場関係者の来訪と説明を誠意と認める」とした。
安倍晋三首相は同日夜、BSフジの番組で「今後はしっかりと公正な報道をするという事実上の謝罪をしてもらったので決着した」と語った。
自民党は6月27日にTBSに送った文書で、電気事業法改正案が廃案になった経緯を伝えた報道番組について「民主党など片方の主張にのみ与したもの」と抗議していた。
一方、TBSの側も5日夜に自民党に提出した文書を公表。報道番組について「『説明が足りず、民間の方のコメントが野党の立場の代弁と受け止められかねないものであった』等と指摘を受けたことについて重く受け止める」とし、「今後一層、公平公正に報道する」としている。
謝罪でなく回答 TBSが反論
TBSの龍崎孝政冶部長は「本日、報道局長が自民党本部を訪問し、抗議に対し文書で回答するとともに説明したが、放送内容について訂正・謝罪はしていない」とのコメントを出した。
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TBSの対応は報道機関としては情けないものと言わざるをえません。報道局長がノコノコと自民党本部までいって『説明』すれば、「謝罪した」と、自民党に取材拒否の正当性を主張する根拠を与えたことになります。重要法案の廃案は自民党の対応に問題があったと現場の記者が判断したのならば、正々堂々と「TBSはそう思っている」と主張すればいいのです。
自民党がTBSに対して取材拒否をするとしたことと、TBSから接触があって、自民党はこれを謝罪と受け止めて取材拒否を解除したことは、朝日新聞や中日新聞も伝えています。ただ
「取材拒否をした」ということは両紙とも簡単に伝えただけで、報道内容に取材拒否で対抗することの不当性を指摘していませんでした。(毎日新聞は№97で紹介したように、メディアの専門家の大石泰彦・青山学院大学教授などの批判的意見を紹介)
6日の朝日新聞は「自民、取材拒否1日で解除 選挙意識?幕引き急ぐ TBS謝罪せず」と報じ、ようやく田島泰彦・上智大教授(メディア法)らのコメントを紹介しました。田島教授は「報道内容が不服ならば反論すればいいのに、一方的に取材を拒絶しようとした。与党は説明責任を果すべき立場だ。取材回路を奪うというのは許せない。一方、TBSも取材拒否に強い対処をせず、報道に非があったと受け取られるような文書を出してしまった。互いに本質的なところをあいまいにし、有権者の利益より自分たちの利害を考えて決着させた。後味が良くない」と両者の対応を批判しています。政冶評論家の淺川博忠さんも「度量の狭さ不安」と述べています。
大西 五郎