OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ロッドはトラッドロックの王様

2009-06-02 11:55:51 | Rock

Gasoline Alley / Rod Stewart (Vertigo)

今や大衆音楽の男性歌手としては大御所となった感もあるロッド・スチュアートにも、当然ながら下積み時代がありました。

それは同時代のロックスタアの多くがそうであったように、少年時代からR&Bに親しみながら歌手としてのドサ回りを経験し、どうにかマイナーなレコード会社からシングル盤を出すという、お決まりのコースを辿っていたのですが、ついに訪れた大チャンスがジェフ・ベック・グループへの参加でした。

そして「Truth」と「Beck-Ola」というジェフ・ベックにしても、またロックの歴史上でも特に優れた2枚の名作アルバムで熱唱を聞かせた1960年代末に至り、ロッド・スチュアートの名前は一躍有名になるのですが、驚いたことに、そのバンド活動中にもアルバイト的に様々なレコード会社でシングル盤を出したり、あるいは他のミュージシャンのセッションに参加していたというのですから、ロッド・スチュアートの顔の広さというか、貪欲というか、上昇志向とばかりは決して言えない行動力は流石だと思います。

で、そんな中で盟友となったのが現在はストーズのメンバーになっているロン・ウッドでした。そして何時しか2人は解散直前のスモール・フェイシズへと合流し、新生フェイシズとしての活動をスタートさせるのですが、ロッド・スチュアート本人は既にマーキュリーというアメリカのレコード会社とソロの契約をしていたため、フェイシズとの二足の草鞋という実にバイタルな時代が始まるのです。

それはまず1970年にイギリスで発売されたロッド・スチュアート名義のソロアルバム「An Old Raicoat (Vertigo)」、次いでフェィシズとしては最初のアルバムとなった「The First Step (Warner Bros.)」が、ほぼ同時期に世に出るという異常事態!

ちなみに実際にロッド・スチュアートが所属していたのは、アメリカのマーキュリーと同系列のフィリップスがイギリスで発足させたヴァーティゴという新レーベルでしたが、そんな契約の関係もあり、アメリカでは前述のソロデビューアルバムが「Rod Stewart Album」という別名で一足早く、1969年末に出ていたようです。

というのは今となっての感慨です。

そうした経緯は全く知らぬまま、サイケおやじがロッド・スチュアートに邂逅したのは、前述したジェフ・ペックの傑作アルバム2枚でしたが、正直言えば、ロッド・スチュアートのボーカルよりもジェフ・ペックの強靭で変幻自在なギターにシビレ、バンド一丸となった破天荒なハードロックに興奮させられていたのが本筋でしたし、音楽マスコミも含めて、ロッド・スチュアートの歌唱にあえて言及していた実態は、それほど無かったと記憶しています。

ですから我が国でも昭和45(1970)年のリアルタイムで発売された前述の「An Old Raicoat」にしても、タイトルをわざわざ「ロッド・スチュアート・アルバム」というアメリカ盤仕様にしていたわけですが……。

ご推察のように、後の全盛期を鑑みれば、その2枚のアルバムの出来は決して良いとは言えません。しかし次作へと繋がる萌芽は十分に感じ取れます。もちろん、これは私が何れも後追いで聴いての感想です。つまり当時は無視されていたというのが、現実じゃなかったでしょうか。

ところが翌年になって発売された本日ご紹介のアルバムが、突然として音楽マスコミに絶賛され、それは我が国でも同じでした。いや、当時は海外からの情報が極端に不足していましたから、サイケおやじがそうした好評に接したのは昭和46年の日本洋楽マスコミによってと言うべきでしょう。

そしてラジオから流れてくるシングル曲「ガソリン・アレイ」のせつない哀愁のメロディ、幾分しわがれながらも強力に芯のあるボーカルに魅せられたのです。また同時にアルバムも期待どおり、マスコミで持ち上げられたまんまの潔い名作でした。

 A-1 Gasoline Alley
 A-2 It's All Over Now
 A-3 Only A Hobo
 A-4 My Way Of Giving
 B-1 Country Comforts
 B-2 Cut Across Shorty
 B-3 Lady Day
 B-4 Jo's Lament
 B-5 You're My Girl

演奏に参加しているメンバーはロン・ウッド(g,b,vo)、イアン・マクレガン(p,key,vo)、ロニー・レイン(b,vo)、ケニー・ジョーンズ(ds,vo) というフェィシズの仲間達に加え、下積み時代からジェフ・ベック・グループまで行動を共にしてきた盟友ミック・ウォーラー(ds)、そしてマーティン・クイッテントン(g)、ピート・シアーズ(key,b)、ディック・パウエル(key,vln) 等々、実にハートウォームな面々♪♪~♪

まずシングルカットもされたド頭「Gasoline Alley」は、既に述べたように土の香りも心地良い哀愁のメロディが魅力♪ それは後で知り得たことですが、所謂ブリティッシュトラッドの影響下にある旋律で、それをブルースやソウルのフィーリングを強く滲ませたロッド・スチュアートのしゃがれ声ボーカルで表現されれば、シビレて当然でしょう。ちなみに曲を作ったのはロッド&ロンの名コンビです。

そして続く「It's All Over Now」はストーンズでお馴染みのR&Bカバー曲ですが、ここでの下世話なロックンロールっぽい解釈はストーンズとは似て非なる楽しいグルーヴが全開♪♪~♪ もちろんフェィシズにとっても十八番のノリとして、バンドのウリとなる唯一無二の酔いどれロック味に仕上げられていますから、サイケおやじは少年時代から今に至るも大好きです。カッコイイ~! としか言えない演奏のブレイクには思わずニヤリの仕掛けがあって、これはフェィシズが後に放つ大ヒット曲「Stay With Me」にも使い回しされていますよねぇ~♪ ちなみに最近のストーンズがこの曲をライブで演じる時には、このバージョンに極めて近いアレンジを使っていますが、ロン・ウッドが関わっていればこその居直りでしょうねぇ~♪ 全く憎めないです。

またボブ・ディランのカバー曲「Only A Hobo」は、アコギやマンドリンに加えてバイオンリを使ったことにより、尚更に哀愁が強くなったという確信犯が痛快♪♪~♪ もちろんロッド・スチュアートのボーカルはシンミリ系のハードボイルドですよ。

その極みつきといって過言ではないのが、B面トップの「Country Comforts」です。これはエルトン・ジョンが自作自演のバージョンも残されていますが、このロッド・スチュアートの魂の歌唱に勝るものなど、この世に無いと確信されるほどです。田舎で育った懐かしい少年時代を回想する男の独り言を、熱き心で歌いあげるロッド・スチュアートを盛りたてるバンドのシンプルな美学も素晴らしく、これを聴いているとロッド・スチュアートというボーカリストはバラードシンガーとして最も力を発揮する人だと実感されます。

アルバムには他にも元祖アンプラグドなロックンロール「Cut Across Shorty」や、それとは正反対にハードロック王道路線の「You're My Girl」という、今日のイメージに繋がる名演も入っていますが、個人的には、よりアコースティックな「Lady Day」や「Jo's Lament」にも捨て難い魅力を感じます。

また「My Way Of Giving」はスモール・フェイシズがオリジナルというリメイク物ですが、ちょっと??? このあたりの事情は、このアルバム制作と新生フェイシズのセッションが同時進行していた事の証かもしれません。

ということで、これは私の愛聴盤のひとつですが、当然ながらリアルタイムではLPが買えず、友人から借りたレコードをコピーしたテープを聴いていましたが、その日本盤はアメリカ仕様のマンホールがデザインされたジャケットが、中身と合っていないようでイマイチでした……。

ところが、掲載したイギリス盤は、素粒子のモノクロ写真を使った味わい深いものでしたから、買えるようになった時には迷わずこちらをゲット! そういえばアメリカの黒人ブルースの某名盤に雰囲気がクリソツですよねっ♪♪~♪

そしてロッド・スチュアートは本格的にスタアへの階段を上り始め、1970年代半ば頃には世界的に大ブレイクしたわけですが、サイケおやじはそういう時代よりも以前の英国トラッドロック期が忘れられないのでした。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする