OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジョニー・ウィンターの全力疾走のブルース

2010-06-17 16:56:23 | Winter Family

Live At The Fillmore East 10/3/70 / Johnny Winter And
                                                       
(Collector's Choice /Sony = CD)

ジョニー・ウィンターと言えば、百万ドルのブルースギタリスト!

それがサイケおやじの世代にとっては社会通念だと思いますが、実際、この白人ブルースマンがメジャーで公式デビューした時には本当にそれだけの巨費が投じられたそうですし、見事に契約を獲得したCBSでは、「世紀のスーパースター登場!」なんていう大袈裟なウリを全面的に打ち出していました。

そうです、確かにジョニー・ウィンターは、その1960年代末には比類無きブルースロックの天才ギタリストであり、激情迸るライヴステージはヘトヘトになるほど観客を熱狂させていたのですが、それは故郷のテキサスをメインにしたアメリカ南部での活動、また弟のエドガー・ウインターと組んでいたファミリーバンドでの巡業、そしてモダンブルースの本拠地となっていたシカゴでの修行時代から、延々と続けられていた現場主義!

ですから、それが当時の音楽マスコミでは、特に若者から支持を得ていた「ローリングストーン」誌の特集記事になった直後、大手レコード会社のRCAとCBSの争奪戦が繰り広げられ、ついには「百万ドル」という前代未聞の契約金が世界中を驚愕させたのです。

こうしていよいよデビューアルバムが世に出た1969年、なんとCBSと契約する以前にジョニー・ウィンターが地元のマイナーレーベルに吹きこんでいた初期音源がリバティ系列のインペリアルに買い取られ、同時期に新進スタアのデビューアルバムが2種類出るという、これもまたジョニー・ウィンターが破格の大物新人だった証でしょう。

我国でも、これはそのまんま昭和44(1969)年に発売され、インペリアル盤が「百万ドルのブルースギタリスト」の邦題で東芝から、CBS盤が「世紀のスーパースター」という、これまた極みつきのタイトルでソニーから出たのですから、あまり洋楽情報の無かった当時、サイケおやじも含めて、先に出た東芝盤が話題のファーストアルバムだと思い込んでいたファンも多かったと思います。

う~ん、それにしても、ここまでの経緯を後追いで知るにつけ、実際には僅かな金額で下積み時代の音源を買い取って仕立て上げた東芝盤に「百万ドル」の邦題を冠するエグイ商売には、呆気にとられて敬服するばかり……。

しかし結論から言えば、そのふたつのデビューアルバムは「百万ドル」の元を取り返すほど売れもせず、また評論家の先生方からもイマイチのウケしか得られなかったようです。

ただしジョニー・ウィンターの人気が落ちたかといえば、それは全くの的外れな推論に過ぎず、絶え間ない巡業でのライプ演奏は過激な評判となっていきました。

つまり前述したデビューアルバムのようなスタジオレコーディングでは、時間的な制約や纏まりを優先させなければならない諸事情から、どうしても破天荒なジョニー・ウィンターの魅力を収めきれなかったのが本当のところでしょう。

実はサイケおやじもリアルタイムでソニー盤のLPを買ったんですが、前宣伝から思い込んでいた、エリック・クラプトンやジミヘン以上のギター!? が楽しめるという思惑を見事に空振りさせられましたですねぇ……。

まあ、このあたりは演じられていたスタイルがブルースロックというよりは、一本調子のハードロックに近く、しかもサウンド作りそのものが素直でヒネリが足り無かった所為かもしれません。

さて、そこで本日ご紹介は、最近発掘されたジョニー・ウィンターがメジャーデビューして間もない時期のライプ音源で、全く激しいブルース&ハードロックなギターと熱いボーカル、そしてバンドが一丸となった突撃のステージへタイムトリップ♪♪~♪

録音と場所はタイトルどおり、1970年10月3日のフィルモアイーストで、メンバーはジョニー・ウィンター(g,vo)、リック・デリンジャー(g)、ランディ・ポップス(b)、ボビー・コールドウェル(ds) という、新たに結成したばかりの「ジョニー・ウィンター・アンド」と称したレギュラーグループですから、抜かりはありません。

 01 Guess I'll Go Away
 02 Good Morning Little School Girl
 03 Rock And Roll Hoochie Koo
 04 It's My Own Fault
 05 Highway 61 Revisited
 06 Mean Town Blues
 07 Rollin' And Tumblin'

とにかく全篇が熱いです!

過激にブッ飛ばし、唸ってはエグ味が強く、それこそ聴き終えた時にはグッタリと疲労感を覚えるほどです。

なにしろ容赦無いギターソロと臓腑を抉られるようなリフ、グイノリのリズム&ビートの連続ですからねぇ~。

しかも各曲の演奏時間が長く、なんとB.B.キングの代表曲でスローな「It's My Own Fault」を22分以上、やってしまうんですよっ! もちろんジョー・ウインターとリック・デリンジャーの言い争いの如きギターの掛け合いは強烈な「お約束」ですし、その粘り具合もギットギトの脂っこさ!

本当に疲れますねぇ~~~、心地良く♪

ちなみにリック・デリンジャーは元マッコイズのリック・ゼーリンガーと同一人物で、この時期に芸名を変えたようですし、ランディ・ポップスもまた元マッコイズということで、コンビネーションは文句無し! 1960年代中頃にはマッコイズそのものがイケイケ主義のR&Rを得意としていましたから、まさにジョニー・ウィンターと手が合うのは当然かもしれませんねぇ。実は最初のドラマーも元マッコイズのランディ・ゼーリンガーだったのですが、ちょうどこのライプが録音された直前にボビー・コールドウェルと交代したようです。

そのあたりが特に顕著なのが、後にリック・デリンジャーの代名詞ともなる「Rock And Roll Hoochie Koo」で、メロディよりもリフとノリを重視するという、これぞっ、ハードなR&Rがど真ん中!

またボブ・ディラン作のブルースロック「Highway 61 Revisited」では。ストレートな勢いで炸裂するジョニー・ウィンターのスライドギターが危険極まりなく、またボーカルも完全なるディラン調というところも憎めませんが、この曲は確かボブ・ディランの芸能生活三十周年のライプでも元気に演じていましたですよね♪♪~♪ それもまた衰えない芸風でしたが、やっばり若かった1970年、25歳のエネルギーは眩いばかりです。

そして18分もやってしまうハードブギの「Mean Town Blues」からオーラスのシカゴブルース定番曲「Rollin' And Tumblin'」へのクライマックスに至れば、もう聴いているだけでもシンドイほど!?

う~ん、もう既に五十代のサイケおやじには、心身ともにハード過ぎる世界なんでしょうか……。

あぁ、せめて二十代、出来れば十代の青春ど真ん中に、これを聴きたかったですねぇ。

それほどに脂っこくて、分厚いブルースロックが全篇で66分超! 

ご存じのようにジョニー・ウィンターもまた、様々なトラブルから紆余曲折を繰り返し、それゆえに今日では多くのアーカイヴ音源が世に出ている中でも、この音源は屈指のひとつじゃないでしょうか。

書き遅れていましたが、、実は最初、ネットで発見した時はブート? だと思っていたのですが、ちゃ~んとソニー系列から出ている正規盤なので音質には何の問題もありませんし、ジャケ写もそれらしいデジパック仕様♪♪~♪

ということで、ハードな白人エレクトリックブルースという、如何にも1970年代なロックにどっぶりと浸りたい皆様には、ぜひともお楽しみいただきとうございます。

もちろんギター小僧&おやじには絶対!

コメント (6)
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