OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

フラッシュはフラッシュ!

2010-06-01 16:47:45 | Rock Jazz

Flash (Sovereign)

何とも刺戟的な、全くサイケおやじ好みのジャケットは、1970年にセカンドアルバムを完成させた直後のイエスを追い出されたギタリストのピーター・バンクスが、心機一転結成したフラッシュという新グループのデビューアルバムです。

もちろんフラッシュという英語にはパンチラという意味がありますから、その意気込みたるや見事!

そして結果は初期イエスのロックジャズ路線を見事に引き継いだ、好きな人にはたまらない世界が展開されています。

ここまでの経緯をあらためて簡潔に纏めておけば、まず主役のピーター・バンクスは公式デビューした時こそイエスのオリジナルメンバーではありましたが、意地悪いファンや研究者からすれば、決して初代のギタリストでは無いとされていますし、また後任としてイエスに参加したスティーヴ・ハウが超絶のテクニックと冷静な状況判断をウリとする職人肌であったのに対し、ピーター・バンクスの基本姿勢はロックジャズという人間味の強いものでしたから、1970年代初頭からのプログレ全盛期においては些か時代遅れという感が無きにもあらずでした。

しかし、その情に厚い演奏スタイルは時に熱血、またある時には別の意味での職人気質が強く打ち出されているようで、そんなところがサイケおやじを夢中にさせるのでしょうか。

ですから、1972年に世に出た本日ご紹介のデビューアルバムは、早々に当時が全盛期だったイエスとの比較から、時代遅れとか古臭いという烙印を押され、さらにはイエスのコピーバンドとさえ……。

それでもサイケおやじは、フラッシュを愛聴していました。理由は初期イエスの味わいを求めてなのは、言わずもがなでしょう。

これが実に最高なんですよねぇ~♪

他人が何んと言おうとも!

 A-1 Small Beginnings
 A-2 Morning Haze
 A-3 Children Of The Universe
 B-1 Dreams Of Heaven
 B-2 The Time It Takes

メンバーはピーター・バンクス(g,key) 以下、コリン・カーター(vo,per)、レイ・ベネット(b,vo,per)、マイク・ハフ(ds,per) に加えて、このアルバムでは当時のイエスに在籍しながら、やはり直後にバンドを追い出されるトニー・ケイ(key) が助っ人参加しています。

そしてアルバムを聴けば納得なんですが、当然ながらピーター・バンクスが集めたメンツは初期イエスを再現発展させるべく、例えばコリン・カーターの素直な歌唱はジョン・アンダーソンを強く意識していますし、同様にレイ・ベネットはクリス・スクワイア、マイク・ハフはビル・ブラッフォードの代用品的な部分は否定出来ません。

しかもA面ド頭の「Small Beginnings」を聴けば早速鮮明になるのですが、曲調も演奏の構成やスタイルも、丸っきりイエスのデビューセカンドアルバムを鋭く踏襲しているのです。

これを快感とするか、臆面も無いコピーとするかで、このアルバムも、またフラッシュというバンドの存在意義も変わってくるのは自明の理ではありますが、サイケおやじは当然ながら前者♪♪~♪

ハイハットやタムをメインに使うマイク・ハフのドラミングはジャズっぽく、懸命に野太い蠢きを創造するレイ・ベネットのベースワークも決して悪くありませんし、バンドアンサンブルやボーカル&コーラスの真似っこぶりは嬉しくなるほどですよ♪♪~♪

このあたりはピーター・バンクス&トニー・ケイの本家イエス組の執念!?!

と言ってはミもフタも無いと思いますが、そうした味わいを当時のイエスとは別趣向で進化させようとする試みは、このアルバムのもうひとつの魅力として、続く「Morning Haze」に結実しています。

それはズバリ、CSN&Y路線のアコースティックギターとコーラスワークのコンビネーションを使い回したハートウォームな世界として、なかなか素敵ですよ♪♪~♪ う~ん、これには同時期にブレイクしていたアメリカも顔色無しでしょうねぇ。ピーター・バンクスはアコースティック・ギターも巧みです。

そしてAラスの「Children Of The Universe」が、これまたプログレとハードロックが見事に大衆ポップス路線にリンクしたような、元祖産業ロック!? 親しみ易い曲メロとクセの無いコリン・カーターの歌いっぷりがジャストミートしていますし、演奏パートのウキウキ感はイエスの些か勿体ぶったところとは相容れない魅力でしょう。

正直に告白すれば、この時期のイエスの大ヒット曲「Roundabout」よりも、サイケおやじはこっちが好きなんですよっ! 誰もが一度は作ってたであろう、好きな曲ばっかりのカセットテープにも必ず入れていたほどです。

演奏時間はいろんな美味しいキメがテンコ盛りなんで9分近いんですが、上手く編集したシングル盤でも出していれば、ヒットは間違いなかったと思うんですが、どうだったんでしょうかねぇ。

こうしてB面を聴き始めれば、まずは「Dreams Of Heaven」が、これまた初期イエスを完全継承する名曲名演です。重厚なバンドアンサンブルは微妙なユルさがクセモノでしょうか、そこを修正しながらの個人技の応酬が如何にもロックジャズの王道に感じられます。極言すればピーター・バンクスが一番やりたかったのが、このタイプだったのかもしれません。

バンド全員による大仰なフリーフォームのイントロから受け継がれるアコースティックギターによるスローなソロ演奏、そしてグワァ~ンとハードな展開に突入するテーマ部分は王道イエスの曲調と双子のようなイメージで、続く激しいアンサンブルとアドリブパートの充実へと繋がっていきます。

そこには高速4ビートで飛翔していくギターソロが千変万化に楽しめますし、その音色やフーズ構成が時としてキング・クリムゾンのロバート・フリップになったり、ジョン・マクラフリンになったりしつつも、結局はピーター・バンクスならではのロックジャズが楽しいかぎり♪♪~♪ 複雑な変拍子にも落ち込まないリズム隊もがっちり訓練されているんでしょうねぇ。

ですからオーラスのプログレパラード「The Time It Takes」がソフト&メローな雰囲気、つまりは後のAOR的な肌触りだとしても、そこはプログレ全盛期の勢いというか、ちょいと旧態依然のフィーリングが逆に良い感じかと思います。

おぉ、むうぃでぃぶる~~す?!?!

うぅぅむ、きんぐくりむぞん??!?

間奏でのキーボードやギター、さらには様々なSEを彩りにしながら、曲メロは結局、「Epitaph」してしまうあたりが、憎めないんですよね。

ということで、繰り返しますが、初期イエスの系譜をストレートに継承した歌と演奏ばかりです。そしてそれゆえに当時もその後も全くプレイクすることなく、今に至ったのが真相であり、ピーター・バンクスは不遇のミュージャンとして記憶されるばかりかもしれません。

それでもフラッシュは、このデビュー盤を含めて3枚のアルバムを残していますし、常に言われ続けたイエスとの比較では後塵を拝したことが否めないとしても、イエス系のプログレに興味を抱かれた皆様ならば、一度は聴いていただきたいと、私は切望するばかりです。

そんな思いが通じたのでしょうか、実は先日、CD屋を徘徊していたら、なんとフラッシュの諸作が紙ジャケット仕様で復刻されていました。そこで辛抱たらまらず、全買いしてみたら、なんと値段がひとつ税込で三千七百八十円!

う~ん、確かに復刻ジャケットも良く出来ていますが……!?

と思ったら、なんと最新リマスターとアナログ盤から起こしたCDの2枚組でした!

いゃ~、これには思わず平身低頭というか、上手いところを刺激してくれますねぇ~♪

て、気になるリマスターなんですが、手持ちのイギリス盤LPと比べて、音のクリアーさは当然ながら、些かスマートになりすぎた感じが……。

またアナログ盤起こしの方は、微妙なチリチリノイズが残されたストレートなものですが、本物のアナログ盤が馴染んでいた耳には、これまた線が細い感じが致します。尤もそれは再生カートリッジの問題等々も関連してくるんでしょうねぇ。

ですから、これからフラッシュを楽しまれようとする新しいファンにとっては、これしか無いの決定版かもしれません。

ちなみに良く出来た紙ジャケットはアナログ盤LP同様の見開きですらか、ちょうど折り目の背の部分が気になるクレパスにジャストミート♪♪~♪ デザインは有名なピプノシスということで、流石のサービス精神が嬉しいかぎり♪♪~♪

そのあたりも含めまして、お楽しみ下さいませ。

コメント
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