OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

山内テツの凱旋帰国

2010-01-08 13:19:48 | Rock

玉突きリチャード / Faces (Warner Bros.)

世界で最初に成功を掴んだ日本人ロックミュージャンは、ベース奏者の山内テツでした。

まあ、こういう話になると、業界には坂本九という全米ナンバーワンヒットを放った偉大なロックンローラーもいるわけですが、山内テツは「ロックンロール」が「ロック」になった1970年代に、堂々とイギリスのトップバンドでレギュラーメンバーに起用された実績が不滅ですし、実際、当時の我国の洋楽ファンは喜びというよりは、驚愕が本当のところじゃなかったでしょうか。

ところが肝心の山内テツについて、私は当時からよく知りませんでした。

ただ、最初に注目されたのが昭和47(1972)年にあったフリーの来日公演で、この時はエマーソン・レイク&パーマーの前座扱いだったんですが、そのフリーと言えば、前年の初来日公演が今日でも伝説化しているほどの壮絶ライプでしたから、期待は高まるばかりの状況の中、なんとやってきたのはポール・コゾフとアンディ・フレイザーが抜けて、ラビット(key) と山内テツ(b) が入っていたという臨時編成でした。

そして当然ながらと言えば失礼なんですが、この時のライプは気抜けのビールというか、実は私も行ったんですが、あまり冴えたステージではなかった印象です。

しかし山内テツという日本人が、超一流のロックバンドのメンバーとして「来日」したことは大きな話題となっていました。

ですから、その山内テツが昭和48(1973)年になって、フェイセズのレギュラーメンバーに迎えられたというニュースは、さらに驚愕の事実だったのです。なにしろ当時のフェイセズはロッド・スチュアートという看板スタアを擁した最高のR&Rバンドのひとつでしたからねぇ~♪

そして翌年2月の来日公演では、まさに凱旋帰国だったのが、山内テツです。

この時は本当に我国の音楽マスコミが率先して大騒ぎしたのが夢のようで、またファンの多くも、本当に嬉しい気持でライプへ行ったんじゃないでしょうか。

ただし、これは昔っから言われていたことですが、洋楽に対する日本人プレイヤーのリズム感は合っていない!?! という既成観念が言わずもがなの真実として、評論家の先生方はもちろんのこと、実際のプロの演奏者達にもコンプレックスがあったと言われていますから、リズムとピートが命のペース奏者たる山内テツの存在感や如何に!?!

そのあたりを意地悪く注目するマニアも確かにいたのです。

これについては諸説があるところでしょう。ただ、個人的には、前述した臨時編成のフリーのライプに接した時の経験からして、山内テツのペースプレイは安定感があったと思います。

そしてフェイセズが人気絶頂時の来日公演では、バンドの持ち味であるルーズでファジーなノリを、がっちりと支える役割を充分に果たしていたと思いますし、バンドの面々も、また会場に参集したファンも、山内テツを盛り上げんとする実に良い雰囲気のコンサートでした。確かMCも山内テツがやる場面がありましたし、マイクスタンドを豪快に振り回して熱唱するロッド・スチュアート、タイトでファンキーなケニー・ジョーンズのドラミング、テキトーなギタープレイが好ましかったロン・ウッド、イアン・マクレガンが楽しさ満点に弾きまくるピアノも忘れられません。

さて、そこでようやく本日のご紹介ですが、これはジャケットに偽り無しという、山内テツが参加後の初録音となった「玉突きリチャード / Pool Hall Richard」をA面に収録したヒット盤♪♪~♪ 後にはベストアルバムにも収録されるフェイセズの代表曲ではありますが、当時はシングルオンリーの発売だった痛快なR&R!  ハナからケツまで飛ばしまくった歌と演奏の中で、どっしり構えた山内テツのペースが良い味出しまくりです。

もちろん来日公演の興奮が冷めやらぬ時期に買ったものですよ。

ちなみにB面収録の「雨に願いを」はご存じ、黒人R&Bグループのテンプテーションズが放ったヒット曲のカバーですが、これに山内テツが参加しているか否かは諸説ありますので、ここではあえてふれません。ご容赦願います。

ということで、山内テツという日本人のロックミュージシャンが堂々と世界で活躍したのは、今もって驚きと喜びの二重奏です。しかし残念ながら、フェィセズはロッド・スチュアートの二重契約問題もあって活動に陰りが……。そしてついに解散となったのは、皆様が良くご存じのとおりです。

また山内テツのその後については、我国でリーダー盤も制作され、また様々なセッションに参加するなど、1970年代はそれなりに活発な動きもあったのですが、近年はどうしているのでしょう……。

なんかこの時期になると、前述したフェィセズの来日公演の気持良さもあり、思い出される山内テツなのでした。

※お詫びというか、弁解として、バンド名の「Faces」を日本語表記ではフェイシズ、あるいはフェイセスが多用されていますが、本日はレコードジャケットに記載のある「フェイセズ」を使わせていただきました。ご了承願います。

コメント (6)
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