OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

デスモンド、ブルーベック、そしてマリガンの復刻映像

2009-12-07 12:22:22 | Jazz

Live In Berlin 1972
    / Gerry Mulligan, Paul Desmond & The Dave Brubeck Trio (Standing Oh!vation = DVD)

本日も最近出ました発掘DVDのご紹介ですが、これはパッケージを見ただけでグッと惹きつけられましたですねぇ~~♪ なにしろデイブ・ブルーベックを中心にポール・デスモンドとジェリー・マリガンですよっ!

ご存じのように、ブルーベック&デスモンドと言えば、1950年代中頃から1967年頃まで、世界最高の人気を集めたモダンジャズのトップバンドをやっていましたし、その2人が別れて後はジェリー・マリガンを準レギュラーとしたデイブ・ブルーベックの活動が、やはり同じ味わいを維持しつつ、さらに時代の要求に呼応した新しい展開を繰り広げていた時期が1970年代初頭までの流れでした。

もちろんその過程では、デスモンド&マリガンによるレコーディングも名作セッションとして残されていたのですから、実は1972年秋の欧州巡業から作られた再会セッションのライプアルバム「We'er All Together For The First Time (Atlantic)」が人気盤となったのも当然が必然!

そしてこのDVDは、その拡大映像版という演奏が、たっぷりと楽しめます♪♪~♪

収録は1972年11月4日のベルリン、メンバーはポール・デスモンド(as)、ジェリー・マリガン(bs)、デイブ・ブルーベック(p)、ジャック・シックス(b)、アラン・ドウソン(ds) という豪華な面々が、真摯で熱いプレイを繰り広げています。

しかも画質はAランクのカラー映像ですし、モノラルの音声もなかなかバランスが良好ですから、トータル約93分という長尺もアッという間の夢見心地でしょう。

01 Blues For Newport
 ブルースとはいえ、デイブ・ブルーベックの作曲ですから、そのテーマメロディは硬質に構築され、それゆえに各人のアドリブも油断がなりません。
 まず先発のジェリー・マリガンが椅子に腰かけながらも、あの独得のタイム感覚とドライブしまくったフレーズの中に歌心が満載のバリトンサックスを披露すれば、続くポール・デスモンドは何時に変わらぬ浮遊感たっぶりのクール節を颯爽と吹いてくれます♪♪~♪
 あぁ、この展開だけで幸せになりますねぇ~♪
 ちなみにステージの照明もカメラワークも、またメンバー各々の衣装も、全てが如何にも1970年代初頭のムードなんですが、ポール・デスモンドだけがネクタイ姿というのも頑固な姿勢というか、全く観てのお楽しみとはいえ、ちょっとキメのフレーズを吹く時に体を斜に構えるあたりが最高にカッコイイですよ。
 そしてデイブ・ブルーベックが、これまた頑固というか、最初はグルーヴィなノリを聞かせていながら、中盤からは唯我独尊の怖い変態ビートのアドリブを展開し、最終盤に再び絶妙の4ビートへ戻っていくところは流石です。また、それに呼応してリズムとビートのパターンを変えていくドラムスとベースも名手の証でしょうねぇ~♪
 演奏はこの後、ジャック・シックスのベースソロを経てアラン・ドウソウのドラムスと対決するフロント陣という見せ場に入りますが、決して無暗に熱くならず、適度にリラックスしたアラン・ドウソウの余裕も見事だと思います。

02 All The Things You Are
 モダンジャズでは定番演目のスタンダードですから、良く知られた曲メロが名人達によってどのような歌心に変換させられるか、その点だけでも嬉しくなるはずです。
 実際、テーマアンサンブルのパートからポール・デスモンドはジェントルにスイングし、ジェリー・マリガンは歌心優先主義を貫いていますから、これはアドリブパートに入っても継続されるのが当然の流れということで、全てが「歌」の大名演♪♪~♪
 しかもバックのリズム隊が、特にアラン・ドウソンのライトタッチのドラミングに顕著なように、様々なパターンを細かく演じることによって醸し出される新しい感覚なんですねぇ~♪ そのあたりを百も承知で伴奏していくデイブ・ブルーベックのニンマリ顔も印象的ですし、疑似対位法を用いたような得意技を出しまくるピアノの固いタッチも良い感じなのでした。

03 For All We Know
 十八番を演じるポール・デスモンドの独演会♪♪~♪
 当然ながら、あのクールなアルトサックの音色で演じられる浮遊感満点の曲メロ変奏からアドリブの桃源郷へと、本当に酔わされてしまいますよ♪♪~♪
 繊細なリズム隊の伴奏も実に上手いと思います。

04 Line For Lyons
 ジェリー・マリガンの代表曲ともいうべき、メロデイの魔法とウキウキの気分に満ちたテーマが私は昔っから大好きなんですが、それがここではポール・デスモンドを主役に据えて披露されるんですから、たまりません。流麗なアドリブフレーズに絡んでいくジェリー・マリガンの控えめな至芸も最高ですし、続く自身のアドリブにしても、全くツボを掴みきった名演になっています。
 それと地味ながら芯の強いビートを送り出しているリズム隊も侮れません。
 さらに終盤の疑似対位法的なアンサンブルは、デイブ・ブルーベックのバンドの証として、嬉しくなってしまいますね♪♪~♪

05 Blessed Are The Poor
06 Mexican Jumping Bean

 この2曲はポール・デスモンドが抜け、ジェリー・マリガンとデイブ・ブルーベックが中心となった新しい感覚の演奏で、そこにはモードや民族音楽の味わいに加え、微妙なロックフィーリングさえ導入されているようです。
 実際、重々しくて暗い「Blessed Are The Poor」は如何にも当時の感性として、似て非なるものが我国のジャズ喫茶でも人気を集めたレコードが数多ありました。そして今となってはデイブ・ブルーベックの深淵な企みが理解出来たというか、全く「らしくない」ディープなところは貴重かと思います。
 一方、「Mexican Jumping Bean」はタイトルどおりに明るめな躍動曲なんですが、そのキモはモードですから、ジェリー・マリガンもついに椅子から立ち上がっての熱演を聞かせてくれます。これが、なかなか良いんですねぇ~♪ アラン・ドウソンが控えめながら、ついつい熱くなっていくドラミングが正直です。

07 Song Off
 そして再びポール・デスモンドが戻っての演奏は、如何にも白人らしいブルースのモダンジャズ的解釈! その典型が楽しめます。もちろん即興による、その場だけのインスピレーションが大切されているのは言わずもがな、ブルースという様式美を追及すると言うよりも、お約束のフレーズばっかり演じてくれるメンバーのサービス精神は、気恥ずかしくも嬉しいプレゼント♪♪~♪
 なんとなく白人ブルースロックにも似た快感なんですが、中でもデイブ・ブルーベックが腰を浮かせての大熱演には、思わずイェ~~~♪ なんて拍手喝采ですよ♪♪~♪
 また意図的にブリブリやってしまうジェリー・マリガンに対し、落ち着いた思わせぶりを演じるポール・デスモンドのクールな貫録が、実にカッコイイです。

08 Someday My Princ Will Come
 演目表記を見た瞬間から、これは楽しみにしていたトラックで、もちろんポール・デスモンドが在籍中のデイブ・ブルーベックのカルテットでも至高の名演が残されている人気曲♪♪~♪
 そして定石どおり、ピアノによるシンプルなテーマの提示から浮き立つようなポール・デスモンドのソフト&クールなアルトサックスがアドリブに入って行けば、そこは完全なるモダンジャズの桃源郷♪♪~♪ 手堅いジャック・シックスのベースワークとアラン・ドウソンの地味~なブラシが、逆に強い存在感になっているのも不思議ですが、妙に納得してしまいます。
 ちなみにジェリー・マリガンが当然の顔で休んでいるのは、ちょっと勿体無いような気もしますが、リユニオンであれば、正解かもしれませんね。
 その分だけデイブ・ブルーベックのピアノも冴えまくりなのでした。

09 These Foolish Things
 ジャック・シックスのペースを主役としたピアノトリオ演奏で、正直、個人的にはあまりグッとくるものはありませんが、まあ、いいか……。

10 Take Five
 そしてお待たせしました!
 もう、このメンツで、これが出なければ納まらないというモダンジャズでは畢生の大名曲が、極めて当時最前線のジャズフィーリングで演じられていますから、イントロのピアノが出た瞬間、客席からは盛大な拍手が沸き起こります。
 あぁ、それにしても、この素敵なメロディとビートは不滅だと思いますねぇ。もうテーマ部分だけで満足させられてしまうんですが、それゆえに幾つか残されている同曲のテイク&バージョンを聞いてみても、アドリブがテーマメロディを越えられないという宿命が、ここでも表出しています。
 しかしリズム隊ゆえでしょうか、幾分の新しい感覚の中では、歌心の可否が不明なポール・デスモンドの浮遊感表現が、それなりに気持良く、またジェリー・マリガンの些かネクラ気味のアプローチも、実に新鮮だと感じます。
 さらにデイブ・ブルーベックのピアノが、これまた曲者! 意図的に伴奏をしないパートがあったり、アドリブにおいては、これも恣意的な表現が新主流派っぽいベースとドラムスを伴っていることもあるのでしょうか、なかなか熱い興奮を呼び覚まします。
 現実的に言えば、こういう展開は賛否両論でしょうし、実は前述したアルバム「We'er All Together For The First Time (Atlantic)」にも、この演奏が少しばかり編集されて入っているのですが、やはり映像で接すると味わいか違うなぁ~、なんて思います。
 また、その意味でアラン・ドウソンのドラミングは、どうしてもデイヴ・ブルーベックのバンドではレギュラーだった天才のジョー・モレロと比較される運命にあるんですが、ここでのドラムソロは、アラン・ドウソンの面目躍如たる素晴らしさ! これだったら、演奏全体で、もっと叩きまくって欲しかった場面が多々あることを思えば、ニクイ限りですよっ!

11 Take The“A”Train
 オーラスはバンドテーマとも言うべき、大サービス演奏で、メンバー達が自ら楽しんでいる様子も微笑ましさに嬉しくなります。特にデイブ・ブルーベックのニンマリ顔は印象的♪♪~♪
 これがモダンジャズの楽しさだっ!
 という主張が見事なのでした。

ということで、とにかく画質は最高クラスに鮮やかですし、音声はモノラルながら、ドロップアウトも少ない良好な復刻です。

なによりも、こういうセッションが映像で楽しめるだけで、嬉しくなる皆様が大勢いらっしゃると推察しております。

演奏面ではアラン・ドウソンという比較的過小評価のドラマーが動いてる、それも貴重でしょう。大方の印象は新主流派っぽいハードバップのドラマーというところでしょうから、ここでの些か控えめなドラミングは物足りないかもしれませんが、それもここでは正解の仕事じゃないでしょうか。実際、この名手の小技の冴えが映像で確認出来るのは、もうひとつの楽しみだと思います。

もちろんポール・デスモンドという大スタアに接することが出来るのも高得点♪♪~♪

機会があれば、ぜひともお楽しみいただきとうございます。

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