OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クール派ギタリスト三人衆の復刻映像

2009-12-06 12:00:06 | Jazz

Guitar Masters Live In Germany 1973 & 1980
                          / Jim Hall, Jimmy Raney & Attila Zoller (Jazz Vip = DVD)


これも先日、発見して即ゲットしてきたDVD♪♪~♪

タイトルどおり、白人ジャズギタリストの名手3人が存分に披露した至芸を収録していますが、結論から言うと、和みのある演奏ではありません。

しかしテレビ放送用に収録されたと思われる画質は最高のカラー映像ですし、もちろん音質も一部で微細なドロップアウトもありますが、総じてバランスが良い優良なブツでした。

そして中身は後述するふたつのパートに分かれています。

1980年10月10日、フランクフルトで収録
 01 Scherz
 02 A Common Nightmare

 まず最初のパートはジミー・レイニーとアッティラ・ゾラのデュオ演奏で、左にアッティラ・ゾラ、右にジミー・レイニーが定位したステレオ音声で約20分ほど、2曲が披露されますが、そこに明確な曲メロテーマはありません。つまり同じクール派ギタリスト同士の魂の交感ともいうべき即興的な展開になっているのです。
 極言すれば各々が好き勝手にコードやフレーズを弾いていながら、何時しかどちらかのギタリストが相手に合わせるような瞬間が出現し、またそれが自己満足的な演奏に戻っていく流れなんですねぇ。
 ですから曲名がつけられいますが、それは便宜的なものでしかありません。
 しかし、そこには何時か、どこかで聞いたことのあるスタンダードなメロディの断片が浮かんでは消えていくという至福がありますし、その過程で生み出されていく緊張感満点の意地の張り合いやフレーズとコードの応酬は、鳥肌と恐怖心さえ呼び覚ますほどです。
 う~ん、実は会場にはお客さんが入れ込まれているんですが、演奏が終わっても、呆気にとられた拍手しか……。
 またDVDで鑑賞しているこちらにしても、全然和めないですねぇ……。
 ただしギターを弾く様子というか、2人のクール派ギタリストが織りなす巧みの技の競演は、その指使いや音の選び方、和音構成の魔法、さらにピッキングの秘密等々が、鮮明な映像でじっくりと観察研究出来ますから、その奥の深さと凄みには、またまた鳥肌がっ!
 ちなみにジミー・レイニーは説明不要のクール派として、その流麗なギターワークは定評がありますが、アッティラ・ゾラも欧州をメインに活動している同系のギタリストとして、しぶとい人気がある名人ということで、その似て非なる個性を存分に楽しめるわけですが、時代的には2人とも既に老境でありながら、こんなに凄い老人がいる!?! というだけでも圧倒されると思います。

1973年9月14日、ハノーバーで収録
 03 My Romance (Hall - Zoller Duet)
 04 Eztension (Quartet)
 05 All Across The City (Jim Hall Solo)
 06 Ballad (Hall - Mitchell Duet)
 07 Free Mood (Trio)
 08 Blues In The Closet (Quartet)
 こちらのパートはジム・ホール(g)、アッティラ・ゾラ(g)、レッド・ミッチェル(b)、ダニエル・ユメール(ds) という、今では夢の顔合わせ♪♪~♪ ただし演目の後につけた注釈どおり、全てがカルテットの演奏ではないのが賛否両論でしょう。
 しかし中味の濃さは本当に凄く、まず有名スタンダードを素材に2人のギタリストが自己研鑽を披露する「My Romance」からして、震えがきます。特にジム・ホールは、一般的なイメージである「優しい歌心」なんて置き忘れたような鋭さで、クールなフレーズと熱いジャズ魂を徹頭徹尾、追及していると感じます。
 もちろんそれは相方のアッティラ・ゾラの音楽性に合わせた結果かもしれませんが、完全ソロギターによる「All Across The City」にしても、自作曲という以上の何か、憑かれたような情念がジワジワと漂ってきます。また、レッド・ミッチェルとの二人芝居的な「Ballad」に至っては、幽玄のメロディが空間を浮遊しながら、不思議な増殖を繰り返すような、ちょっと私の稚拙な筆では表現不可能な世界! これは皆様にも、ぜひとも接していただきたいところで、個人的には、このセットの中で、一番にジム・ホール的なイメージの強い、聴き易い演奏だと思います。
 しかしカルテットによる「Eztension」は、本当に激ヤバというか、1973年という時代を考慮しても、相当に進んでいた演奏で、今日ではパット・メセニーあたりがやったとしても、ここまでの密度は、ちょっと難しいかもしれません。しかもメンバー各々が、全くの自然体というところが、映像作品ならではの確認ポイント♪♪~♪ なんか、ここらあたりにも圧倒されるものが確かにありますよ。
 その意味ではオーラスの「Blues In The Closet」は題材がビバップの古典ですから、グイノリの楽しさを期待してしまうのですが、それを意図的にはぐらかしていく展開がニクイばかり! う~ん……。
 それとおそらくはジミー・レイニーとのセットでもそうでしたが、この映像集ではホスト役と思われるアッティラ・ゾラが、やはり時代的にも先鋭的な感覚を完全披露! 自分中心のトリオ演奏となった「Free Mood」では、ジプシーモードのクール派的な展開に絶妙のロックジャズ感覚も交えながら感度良好♪♪~♪
 ちなみに音声はモノラルですが、こちらも各楽器のバランスは問題ありません。

ということで、繰り返しますが、和みを期待して鑑賞するとハズレます。

しかしギタリストいう現代の魔法使いが、その奥義を出し惜しみせずに披露した素晴らしい時間が、全篇約81分間堪能出来るだけでも、私には至福でした。

惜しむらくは3人の合同演奏が無かった点で、これはタイトルからして誤解を招くところではありますが、正規発売としては初DVD化ということで、高得点の復刻だと思います。

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