OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

こんな癒しも、たまには必要

2008-01-11 16:54:08 | Laura Nyro

今日は国税から、たっぷりと虐められました……。

あぁ~、何のために頑張って、毎日、仕事をしているのか……。

ということで本日は、ひたすらにジャケットを鑑賞しただけでした――

Laura Nyro Sings Her Greatest Hits (CBSソニー)

美しいでしょう♪

歌も良いけど、ルックスにも完全降伏の私です。

このアルバムは日本独自で発売されたベスト盤なんですが、中身もさることながら、やはりジャケ買いの1枚かと……♪

今日は、疲れました。このぐらいでご容赦下さいませ。

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本家より好き

2008-01-10 16:59:43 | Weblog

Hotwax誌からの原稿依頼で、苦しんでいます。

というか内容は私の大好きなロマンポルノの名作紹介なので、本心はウキウキなんですが、文字数制限が厳しいので……。

なかなかブログのように気ままには書けませんねぇ……。

ということで、本日は――

The Vice‘Pres’/ Paul Quinichette (EmArcy)

アメリカでは大統領選挙が動き出しましたが、ジャズ界の大統領といえば、レスター・ヤングでした。そして副大統領と呼ばれたのがポール・クイニシェットです。

もちろんレスター・ヤングのスタイルを、まんま、受け継いだモダンスイング派のテナーサックス奏者で、流麗な歌心と本家に対する素直な憧れが魅力的です。

しかしその楽歴は1940年代においてR&Bのバンドで活動していた所為か、単にレスター・ヤングの物真似にならない、独特の黒っぽさと歌心が私の大好きなところです。

正直言うと、本家のレスター・ヤングよりも好きなのです。

もちろん、そうした実力とスタイルを買われて、1950年代前半には、カウント・ベイシー楽団の花形として入団・活躍しています。

このアルバムは、その当時のリーダーセッションを纏めたもので、当然ながらカウント・ベイシー楽団での同僚・精鋭が集っています。

そして、もう一度告白すれば、私はここに参加している天才ギタリストのフレディ・グリーンが、本当のお目当てだったのです――

1951年10月5日録音:Paul Quinichette Sextet
 A-1 Cross Fire
 A-2 Sandstone
 A-3 Prevue
 A-4 No Time

 メンバーはポール・クイニシェット(ts) 以下、ビル・ドゲット(org)、ケニー・ドリュー(p)、フレディ・グリーン(g)、ジミー・ルイス(b)、ガス・ジョンソン(ds) という魅惑の面々♪ ポール・クイニシェットの初リーダー録音と言われています。
 ビル・ドゲッドはジミー・スミス以前にオルガンの巨匠だった名手で、ジャズとR&Bの境目からラウンジ系の演奏までも得意としていた人気者でした。アレンジャーとしても優れていましたから、ここでは縁の下の力持ちだったという推察も可能です。
 肝心の演奏は、なんといってもカウント・ベイシー楽団から参加したリズム隊が素晴らしく、そこへ既にして真っ黒なケニー・ドリューの擬似ハードバップピアノが加わっているのですから、たまりません♪
 エグイ音で録音されているフレディ・グリーンのリズムギターも絶品ですし、全4曲にはスイングを超越した黒いフィーリングが滲み込んでいます。
 そしてポール・クイニシェットが滑らかで柔らかい歌心で歌いまくりですから、本当にたまりませんねっ♪
 演目は「No Time」だけがブルースで、他は有名スタンダード曲のコード進行をいただいたオリジナルとなっていますが、要所で上手くコードを変えているのがミソでしょうか。う~ん、それにしても「No Time」でのフレディ・グリーンは凄いですねぇ~~~♪

1952年1月30日録音:Paul Quinichette & His Orchestra
 B-1 The Hook
 B-2 Samie
 B-3 Shad Roe
 B-4 Paul's Bunion
 B-5 Crew Cut
 B-6 I'll Always Be In Love With You

 このセッションがまたまた強烈至極で、メンバーはバック・クレイトン(tp)、ディッキー・ウェルズ(tb)、ポール・クイニシェット(ts)、カウント・ベイシー(p,org)、フレディ・グリーン(g)、ウォルター・ペイジ(b)、ガス・ジョンソン(ds) という、まるっきり当時のカウント・ベイシー楽団からのピックアップ&同窓会という感じです♪
 まず「The Hook」がアップテンポで豪快にウネル演奏で、ポール・クイニシェットも徹底的にレスター・ヤングの役割を演じていますが、その豪快さは本家を凌ぐ黒っぽさ! リズム隊のノリも最高です。
 こうした楽しさは、この日のセッション全体に言えることで、フレディ・グリーンの凄いリズムギターがバッチリ録音されていますから、何度聴いても飽きません。
 またカウント・ベイシーのオルガンも、実に良い感じで、特に「Samie」は名演でしょうねぇ~♪ 唯一のスタンダード曲「I'll Always Be In Love With You」も素晴らしすぎて、涙がボロボロこぼれます。

1952年6月録音:Paul Quinichette & His Orchestra
 A-5 P.Q. Blues
 A-6 Bot Bot

 メンバーはジョー・ニューマン(tp)、ヘンリー・コーカー(tb)、マーシャル・ロイヤル(as)、アーニー・ウィルキンス(as,ts)、ポール・クイニシェット(ts)、チャーリー・フォークス(ts)、ボビー・タッカー(p)、フレディ・グリーン(g)、アル・マッキボン(b)、ガス・ジョンソン(ds) という、これも当時の擬似カウント・ベイシー楽団です♪
 しかし演奏は驚異というか、「P.Q. Blues」はファンキーどっぷりというブルースになっていて、ポール・クイニシェットはズート・シムズか!? という雰囲気です。
 それは「Bot Bot」でも同様で、目隠しテストならズート・シムズという答えが頻発するかもしれません。しかし音色とフレーズの柔らかさはポール・クイニシェットだけの個性であって、さらに演奏のキモが真っ黒という独自の個性が、たまらんのですねぇ♪
 もちろんここでもフレディ・グリーンのギターが大活躍♪ これも素晴らしい!

ということで、演目は全てがSPかEPのフォームですから、3分前後のトラックばかりですが、録音バランスの良さは特筆物ですし、仕上がりの密度は濃厚です。

特にフレディ・グリーンのギターが、本当に理想的に聞こえてきますから、ファンは納得して感涙でしょう。

一部、アナログ盤の時間的制約から、セッション順に聞けない欠点はありますが、この演奏の素晴らしさがあっては、それも気にならないと思います。

これは皆様に、ぜひとも聴いていただきたい、楽しい1枚です。

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左右非対称が勿体無い

2008-01-09 17:30:26 | Weblog

どうにもPCが不調で苦しんでいます。

やはり買い替えしかないのか……。う~ん、またまた散財モードですなぁ……。

ということで、本日は――

Bluse-ette / Curtis Fuller (Savoy)
 

ここ2回ほど、モノラルとステレオの両盤について云々してきましたが、モダンジャズの決定的人気盤という本日の1枚についても、賛否が分かれるところかと思います。

録音は1959年5月21日、メンバーはカーティス・フラー(tb)、ベニー・ゴルソン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ジミー・ギャリソン(b)、アル・ヘイウッド(ds) という不滅の五人組――

A-1 Five Spot After Dark
A-2 Undecided
A-3 Blues-ette
B-1 Minor Vamp
B-2 Love Your Spell Is Everywhere
B-3 Twelve-inch

――内容については、あらためて述べるまでもない、柔らかな魅力のゴルソン・ハーモニー、そして素敵なメロディが満載されたソフトバップの完成形ですから、何時聴いても和みます。

そして決して耳タコにならないんですねぇ~♪

そういう作品ですから、モノラル盤(画像右)では厚みのあるハーモニーがグッと強調され、反面、トミー・フラナガンのピアノが引っ込み気味ながら、リズム隊が強靭な魅力を発揮しています。

そしてステレオ盤(画像左)は左にトロンボーンとベース、真ん中にピアノ、右にテナーサックスとドラムスが定位した立体音響で、合奏部分になると左右からトロンボーンとテナーサックスが分かれて鳴りますから、なんとも言えない良い気分♪

しかもトミー・フラナガンのアドリブパートではリズム隊のトライアングルが見事に形成され、ミックスも対等な響きが心地良いところです。

このあたりは「Undecided」で特に堪能出来ますが、それにしてもハスキーな管楽器の協調性とトミー・フラナガンのアドリブの見事さには、うっとりさせられますねぇ♪ これがトミフラ節の典型かもしれません。

またアレンジが冴えた「Blues-ette」はテーマに続いてカーティス・フラーのアドリブになったところでピアノとドラムスが休止するので、左チャンネルからしか音が出ず、ちょっと物足りない雰囲気です。

しかしコーラスを重ねた後、無音の真ん中と右のスピーカーからビシッと決まった合の手が出るという快感も楽しめるのですから、一概にダメとも言えません。

こうしたリズム隊の妙技は、モノラル盤だとドラムスとベースの一体感とか、ピアノのメリハリの効いた主張が、かなり強くミキシングされているようで、迫力があります。

つまりリズム隊と管楽器が、それぞれひとつの団子状で楽しめるのがモノラル盤という感じでしょうか。

ですから、両方のバージョンで好き嫌いが十人十色かと思います。しかし演奏の楽しさ、充実度は出色! やっぱりこれは名盤だと、聴くたびに再認識させられるのでした。

ちなみに掲載ジャケット画像は左がステレオ盤、右がモノラル盤で、デザインが異なっていますが、並べた時に左右対称が完全になっていたほうが楽しいと思うのは、私だけでしょうか。

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暴走コルトレーン

2008-01-08 17:15:38 | Weblog

買ってから1回しか楽しんでいないどころか、全く封も切っていないブツが、私の所には多々あります。こんなバチアタリは若い頃には想像も出来なかった悪行に他なりません。

深く反省するしかないのですが、実際には買ってしまうと安心して、時間が無い所為にしているのですから、タチが悪いです。

特にボックス物は鬼門というか、無駄遣いモードになりがちです。深く反省せねば……。

ということで本日は、そんな中から――

Miles Davis OLYMPIA mar. 20th, 1960 (Laserlight)
 

1960年春の欧州巡業から、パリで行われたライブの放送録音用音源をCD化した2枚組で、以前にも出ていたブツですが、音像がしっかりしたリマスターで、しかも不安定だったモノラルの定位がかなり改善されています。

またブラケースに入ったCDが2枚、さらに紙の箱に入れられているという仕様で、またまた購買意欲を刺激されました。

メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という御馴染みのクインテット♪ しかしこの日のバンドは野放図というか、かなりの暴れが聴かれます――

disc 1 / part 1 (画像左)

01 All Of You
 マイルス・デイビスが十八番のスタンダードで、入魂のミュートを聞かせてくれます♪ 思わせぶりな歌心の妙技が絶品ですねぇ。リズム隊も気合が入っていて、特に2分57秒目でのカッコ良すぎるキメは最高ですし、ジョン・コルトレーンのアドリブへ受け渡す直前にはジミー・コブが怒濤の裏技!
 そしてジョン・コルトレーンが物凄いです。完成の域に達したシーツ・オブ・サウンドを駆使して烈しく音符を羅列しながら、実は歌心も忘れていません。
 このあたりは鉄壁のリズム隊があればこそでしょう。クールで熱いグルーヴに乗っかって縦横無尽に暴れるジョン・コルトレーンは、モダンジャズの至福の一時を謳歌する歓喜の叫び! これに浸りきるのがジャズ者の宿命かもしれません。8分30秒を過ぎたあたりから突入する擬似フリーの部分には圧倒されます。
 そしてウイントン・ケリーの歯切れの良いピアノには、心底和みます。というか、ややアドリブ構成の詰めが甘いところもあるんですが、ビシッとキメるジミー・コブにビンビンビンのポール・チェンバースが居ますから、やっぱり楽しいですよ♪
 それにしても、なんと17分も演奏して、全然ダレないのですから、このバンドはやっぱり最高なのでした。

02 So What
 これもステージでは定番ながら、スタジオバージョンよりもテンポが上がっている分だけ、ますます自由度が高い演奏になっています。
 まずポール・チェンバースがリードするテーマ部分の勢いが、そのまんま、マイルス・デイビスのアドリブに繋がっていく快感は、不滅の良さがあります。
 しかし肝心の親分が、些かトホホのスタート……。まあ、そこから盛り返していくところが、ジャズの楽しみでもあるんですが、正直、マイルス・デイビスもロクなフレーズを吹いていませんねぇ。それでもカッコイイというのが、この人の真骨頂なんでしょうが……。
 するとジョン・コルトレーン&リズム隊が怒りの反逆というか、はっきり言うと「Impressions」状態! 後のエルビン・ジョーンズが入った演奏に耳が馴染んでいると、やや違和感もあるのですが、ジミー・コブを中心としてクールなビートを出してくるこのリズム隊があってこその味わい、そしてスリルが強烈です。というか、この違和感の中で暴走するジョン・コルトレーンは、桁外れに過激だと思います。あぁ、嵐のようなの音符過多症候群!
 もちろん観客は大拍手! その中でアドリブを引き継ぐウイントン・ケリーも強烈にスイングし、例の飛跳ねフレーズにはジミー・コブのリムショットがジャスミートですから、たまりません。絶対に揺るがないポール・チェンバースの4ビートも最高です。

03 On Green Dolphin Street
 マイルス・デイビスが取上げてから有名になったといって過言ではないスタンダード曲ですから、絶妙なウイントン・ケリーのイントロからポール・チェンバースのアルコ弾きにリードされて、あのミュートトランペットが出た瞬間、グッと気分が高揚します。
 タイトなジミー・コブのブラシも素晴らしく、スタジオバージョンよりもテンポが速くなっていますが、かえってそれが快感♪ マイルス・デイビスも相等にツッコミの烈しいフレーズを吹いています。
 そしてもちろん、ジョン・コルトレーンは疾走フレーズの連発連打で大暴れ! 激烈な痙攣フレーズまでも飛び出して、もはやリズム隊もお手上げ状態ながら、ちゃ~んと、今、テーマメロディのどこを吹いているか判るのですから、流石です。
 するとウイントン・ケリーが待ってましたとばかりに大ハッスル♪ メキシコのプロレスのようにシャープで楽しく、飛跳ねまくったピアノには歓喜悶絶させられますよ。ちなみにこの部分では音の定位が左右に揺れるのですが、今回のブツではかなり改善されていて、ホッとします。

disc 2 / part 2 (画像右)

01 Walkin'
 大歓声の中から、あのテーマが鳴り出せば、あたりはすっかりハードバップ♪ マイルス・デイビスは何時もと同じ、お約束のフレーズしか吹かないのも潔く、不安定な音色も許してしまうのです。
 もちろんクールなグルーヴが素晴らしいリズム隊は驚異的で、特にジミー・コブのビシッとしたドラミングが痛快ですねぇ~♪ マイルス・デイビスとの相性もバッチリだと思います。
 そしてジョン・コルトレーンは些かスケール練習の様で、手がつけられないほどの大暴走なんですが、これが如何にも当時のジャズ界最先端という良い感じ♪ 烈しい痙攣節の連発に、ウイントン・ケリーなんか、途中で伴奏を投げ出してしまったんでしょうか……。
 それでも途中で必死のカウンターリフをぶっつけたり、アドリブパートでは十八番の展開に持っていく奮闘ぶりで、演奏を軌道修正しています。
 ただしジョン・コルトレーンのアドリブの最中に湧き上がる大歓声が、あまりにも強烈な印象なので、虚しい抵抗という気も……。う~ん、全然、ブルースっていう感じがしないです。

02 Bye Bye Blackbird
 またまたマイルス・デイビスのミュートが冴える歌物演奏ですから、会場の中には忽ち和みが広がり、そんな拍手がスピーカーから流れてくれば、気分は最高♪
 ただしマイルス・デイビスはコードを外したり、些か荒っぽい雰囲気です。それでも抜群のリズム隊が最高の伴奏で、モダンジャズの楽しさが横溢するんですねぇ。
 またジョン・コルトレーンも、あんまり尖がらずにハードバップの基本を聞かせ、逆に熱くなり過ぎたリズム隊が危なくなっているところが、ジャズの面白さでしょうか。すると、一瞬ですが、バンドがフリーの領域に踏み込みそうになる場面まで……。
 後半になって疲れが感じられるリズム隊もムベなるかなです。

03 Round About Midnight
 お待たせしました、やはりこれが出ないと収まらないでしょうねぇ。もちろんマイルス・デイビスは繊細で豪胆、ミステリアスなミュートの妙技を聞かせてくれます♪
 そして、例の強烈なリフ! ジョン・コルトレーンのアドリブが始っているのに、遠慮しないで打ちまくりですから、全く危険きわまりないです。
 リズム隊のビートも一段とアクセントが強くなっていきますが、意外にもジョン・コルトレーンが冷静なので肩透かし……。演奏も5分ほどで終了するのでした。

04 Oleo
 ところが続くこの演奏が力いっぱい凄いです!
 まずマイルス・デイビスがミュートで鋭く突進すれば、ジミー・コブはシャープなブラシで応戦し、ポール・チェンバースのエグイ4ビートが快感!
 そしてジョン・コルトレーンがアドリブに入るところでは、マイルス・デイビスもグルになって不気味な音を連続させるんですねぇ。なんとも悪い予感に満たされるんですが、案の定、その後はシーツ・オブ・サウンドの地獄巡りです。うっ、ジャイアント・ステップス!?
 と思ったところで、親分がミュートで横槍を入れ、息の合ったラストテーマが痛快です。

05 The Theme
 前曲ラストから、そのまんま始るのが御馴染みのテーマというわけでした。これがハードバップです♪

ということで、とにかく全篇、ジョン・コルトレーンが凄すぎます! リズム隊がクールなセンスを全開させているだけに、余計に毒々しさが表出した感じでしょうか。烈しい痙攣フレーズまでも繰り出してフリーに突進する瞬間まであります。しかし観客が大興奮ですから、他のバンドメンバーも諦め顔……。

そんな野放図な演奏が、ここにはたっぷりと記録されています。録音状態はモノラルですが、普通に聴けるほどに良いので、覚悟を決めて楽しみましょうね。

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立体音響の名人芸

2008-01-07 17:02:13 | Weblog

勤務地は雪国だというのに、今年も雪が少なくて、本音は大助かり♪

とはいえ、こんな異常気象では、後が恐くなるばかりです。

ということで、本日は――

The Poll Winners Ride Again ! (Contemporary)

昨日はモノラル盤の優位性について、ちょっと触れましたが、ステレオバージョンが圧倒的に良いというアルバムも、確実に存在しています。

例えば本日の1枚は、録音の良さでは定評のあるレーベルで作られていますから、モノラルとステレオの両バージョンで素晴らしい鳴りが楽しめるはずですが、アルバムプロデュースの本質を思えば、ステレオバージョンに軍配が上がると思います。

というのは、この作品は当時の楽器別人気投票で首位に立っていた3人が、対等の立場で奥儀を極めんとしたインタープレイ集ということから、左にレイ・ブラウン(b)、真ん中にバーニー・ケッセル(g)、そして右にシェリー・マン(ds) が定位したミックスが、最高の快感♪

しかもボリュームを上げると、左右のスピーカーから飛び出した音が空中で交じり合い、立体的な桃源郷が現出するのです。

ちなみにこうした企画が成立した経緯については、以前にアップした「ザ・ポール・ウィナーズ」と「ザ・ポール・ウィナーズ・スリー!」をご一読願いたいのですが、このアルバムは彼等の 2nd アルバムとして、最高傑作と認められる事も多い名盤です。

録音は1958年8月19&21日、演奏はもちろん、録音を担当したロイ・デュナンの芸術的手腕も堪能出来ます――

A-1 Be Deedle Dee Do
 バーニー・ケッセル作曲によるブルースで、イントロからテーマにかけて、早くも3人の妙技が味わえます。特に繊細に震えるようなところから野太い4ビートウォーキングに入っていくレイ・ブラウンのベースが、たまりません。
 バーニー・ケッセルも完璧なアドリブ構成ですし、レイ・ブラウンのアドリブのバックで聞かせるコードワークも、ステレオバージョンが完全に気持ち良いのでした。

A-2 Volare
 有名なイタリア歌謡曲が、素晴らしいアレンジで楽しめる名演です。特に右チャンネルから聞こえるシェリー・マンのドラムスは大技・小技の連発で、最高!
 さらに左チャンネルのレイ・ブラウンが、これまた絶妙のベースワークで彩りを添えれば、アドリブパートに入ってからは、正統派4ビートでスイングしまくるバーニー・ケッセルが凄いです。
 まさにこれこそが、第一人者の輝きでしょうねっ♪

A-3 Spring Is Here
 バーニー・ケッセルがリードして、有名スタンダードが案外素直に演奏されていきますが、レイ・ブラウンのベースが一筋縄ではいきません。終始、繊細な音使いで唯我独尊の響きが痛快なんですねぇ♪ スローな情感が素晴らしいです。
 このあたりはオスカー・ピーターソンのピアノトリオと似たような展開でもありますが、シェリー・マンのドラミングが特に個性的なので、如何にも白人的スマートさが全面に出た仕上がりのようです。

A-4 The Surrey With The Fringe On Top
 いきなり炸裂するシェリー・マンのドラムス、そしてレイ・ブラウンのリードベースがあって、バーニー・ケッセルが暴れのフレーズ! こうして始るスタンダードの解釈は、三者三様の思惑が見事に合致した名演になっています。
 バンドが一丸となったグルーヴは豪快ですし、バーニー・ケッセルのアドリブも力強く、グイノリのレイ・ブラウンにビシバシとキメを入れるシェリー・マン! 緻密なアレンジも嫌味になっていませんから、流石だと思います。 
 特にクライマックスでのシェリー・マンのドラミングは、凄いですねぇ~~~♪

B-1 Custard Puff
 レイ・ブラウンのオリジナルということで、作者のベースが大活躍なんですが、決して独善的ではなく、トリオの各人に見せ場が用意されたアレンジも秀逸です。
 シェリー・マンのスティックも冴えわたり、煽られたバーニー・ケッセルが暴走気味になるところも微笑ましく、しかし全体はレイ・ブラウンのベースが手綱を握った名演だと思います。
 こういう、ほどよいグルーヴが、このバンドの持ち味かもしれません。

B-2 When The Red, Red Robin Comes Bob, Bob Bobbin' Along
 なんとも長ったらしい曲名ですが、一応はスタンダードらしいです。私はここで初めて聴いた曲なんですが……。
 肝心の演奏は凝ったアレンジが、些か??? テンポがコロコロ変わって落ち着きがイマイチでしょうか。それでもバーニー・ケッセル主体のアドリブパートでは、トリオの絡みも豪快にキマッています。やはり名人は違うということなんでしょうねぇ。
 
B-3 Foreign Intrigue
 バーニー・ケッセルのオリジナルで、ちょっと哀愁のラテン歌謡曲みたいですが、本質はモダンジャズがバリバリという快演になっています。
 アップテンポでブッ飛ばすトリオの勢いは素晴らしく、シェリー・マンがキメまくってのドラミングは、特に痛快です。

B-4 Angel Eyes
 説明不要の大人気スタンダードということで、聴く前からちょいと楽しみな演奏なんですが、まずバーニー・ケッセルが一人舞台のテーマがシブイ♪ サビから入ってくるドラムス&ベースも心地良く、縦横無尽にアドリブするレイ・ブラウンのベースの鳴りが、さらに印象的です。

B-5 The Merry Go Round Broke Down
 オーラスは軽快なアップテンポの楽しい演奏です。
 アレンジも疎かになっていませんが、シャープなシェリー・マンのドラミングが強烈です。またゴマカシを極力避けようと奮闘するバーニー・ケッセルも憎めませんねっ♪

ということで、各チャンネルから鳴っている楽器の分離、エッジの鋭さは最高で、ステレオバージョンを大音量で聴けば、迷わずに陶酔する瞬間までも楽しめます。

というような事を書きながら、実はモノラル盤は所有していません。ですから、相等に無責任かもしれませんが、このアルバムに限っては、ステレオ盤が優位だと確信しているのでした。

暴言、ご容赦願います。

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再生の楽しみ、熱血演奏!

2008-01-06 17:20:28 | Weblog

昨日は他人の都合に振り回され、夜は新年会でセンスの無いコンパニオンに翻弄されました。

そして今日は朝から来客が多く、面倒なのでさっさと勤務地へ戻ってきたというわけです。それでも途中で事故の渋滞とか、車のドアの不調とか、トラブルは続きます。

そこで、ひとりジャズ喫茶は、これを大音量で鳴らしました――

The Bobby Timmons Trio In Person (Riverside)

1960年代のアナログ盤LPは、モノラルとステレオの両バージョンが作られていました。これはレコード購買層が必ずしも高級オーディオ装置を持っていなかったという当時の家庭環境を配慮したもので、モノラル盤は小さな電蓄でも迫力のある音が再生されるように配慮されていたのです。

そんなところから、何時の間にかモノラル盤は音が良いという定説が流布したわけですが、それは個人の好みが十人十色という側面もあると思います。

極言すれば、団子状の音がド迫力かもしれないし、左右に完全分離した楽器の鳴りが好きという人もいるでしょう。

さて、このアルバムは、そんなところが如実に感じられる1枚だと思います。

録音は1961年10月1日、ニューヨークのヴィレッジバンガードでのライブセッションで、メンバーはボビー・ティモンズ(p)、ロン・カーター(b)、アルバート・ヒース(ds) という素晴らしいトリオです――

A-1 Autumn Leaves
A-2 So Tired
A-3 Goodbye
A-4 Dat Dere / Theme
B-1 Popsy
B-2 I Don't Know What Time It Was
B-3 Softly, As In A Morning Sunrise
B-4 Dat Dere / Theme

――結論から言えば、録音が決定的ではありません。ベースの音が太過ぎるというか、モコモコとした芯が無いような感じで録られています。

ちなみに録音技師は Ray Fowlew という人ですが、まず米国盤のモノラルバージョンでは、それでもド迫力というか、グッと演奏が前に迫り出してくるので、感度良好! そしてステレオ盤は左にピアノ、真ん中にベース、真ん中から右にドラムスという定位で、アメリカプレスだとカッティングレベルが高いので納得出来るのですが、失礼ながら日本盤だと、何故か音の分離が悪いというか、どうも……。

そしてCDになると、音の解像度がグッと上がったステレオバージョンになっていて、これが意外とイケます♪ 特に我国で作られた紙ジャケット盤は良いですねぇ~♪

とは言え、これはあくまでも私の感性です。

さて肝心の演奏は、まず初っ端の「Autumn Leaves」が熱い名演です。ジンワリとスタートする部分は不穏な空気が魅力的ですし、御馴染みのテーマメロディは素直な解釈♪ しかしアタックの強いボビー・ティモンズのビアノが、アドリブパートに入るとガンガンと攻め込んできて、何時しか十八番のゴスペルフレーズが連打されます。

続く「So Tired」もジャズメッセンジャーズでは定番になっていたボビー・ティモンズによる人気オリジナルですから、ここでもジャズロックに極めて近い熱血ゴスペルファンキー! 軽くてもビートの芯がしっかり感じられるアルバート・ヒースのドラミングも流石です。

さらに一転してスローな「Goodbye」は、小粋なムードまで漂うボビー・ティモンズのソロピアノで、真摯な解釈が絶品♪ ここまでの三連発で、完全KOされること必至です。

そしてB面ではロン・カーターが大活躍! 強烈なリフを聞かせる「Popsy」は4ビートのウォーキングも凄みがあり、完全な主役となった「Softly, As In A Morning Sunrise」での熱いベースソロは繊細かつ豪胆な響きを聞かせてくれます。

このあたりは録音の按配も大きく影響していて、個人的にはステレオバージョンが好きですねぇ。しかし圧巻の名演となった「I Don't Know What Time It Was」ではモノラル、ステレオの両バージョンでベースの音が少し潰れ気味なのが勿体無い……。まあ、CDでは改善されているのですが。

ということで、聴くほどに味わい深い作品だと思います。全篇でのボビー・ティモンズの熱演は言わずもがな、落ち着いたドラミングでキメるアルバート・ヒースも素晴らしいと思います。

ちなみに人気曲の「Dat Dere」がテーマ扱いで短くしか収録されていませんが、CDにはボーナストラックとして完全バージョンが収められています。しかし出来は、まあまあ……。もうひとつのボートラ「They Didn't Believe Me」も、イマイチです。

つまりそれだけ本篇の出来が驚異的ということなんです。そしてこれこそ、いろんなバージョンで楽しめる名盤でしょう。ですから個人的には、CDにはステレオ&モノラルの両バージョンを入れて欲しいと、昔から願っているのですが……。

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名盤はジャズのフィーリング♪

2008-01-05 16:19:29 | Weblog

久々に実家に戻ったものの、諸事万端、アテが外れてスケジュールがメチャ狂い……。本当にどうなってんだか……。

という嘆き節の1日は、このアルバムで始っていました――

Duke Ellington & John Coltrane (impulse!)

どんな世界にも普遍の良さが稀に存在していますが、ジャズとしてはデューク・エリントンがその代表かもしれません。作曲された膨大なメロディは、その多くがスタンダード化していますし、演奏そのものがオリジナルの形で多くのファンに愛されているのは、言うまでもありません。

そして基本となるデューク・エリントンその人のピアノスタイルも、時代を超越した響きを持っているのです。このアルバムは、当時リアルタイムで最前線を疾走していたジョン・コルトレーンと共演した、ある種、無謀な企ての中で、それを立派に証明した大傑作盤だと思います。

録音は1962年9月26日、メンバーはデューク・エリントン(p)、ジョン・コルトレーン(ts,ss) の他に、2人が自分のバンドレギュラーのベーシスト&ドラマーを引き連れていますので、曲毎に編成が異なっているのも、なかなか味わい深いのです――

A-1 In A Sentimental Mood
 デューク・エリントンが1935年に書いた傑作メロディで、スローテンポが美しい雰囲気を醸し出します。
 ここでのリズムセクションはエリントン楽団からアーロン・ペル(b)、そしてコルトレーン・カルテットからエルビン・ジョーンズ(ds) という組み合わせながら、まずイントロからデューク・エリントのピアノが新鮮というか、不滅の響きで印象的!
 続くジョン・コルトレーンのテナーサックスによる素直なテーマメロディの吹奏も静謐で、この曲の魅力を完全に引き出していると思います。あぁ、シミジミと泣けてきますねぇ。
 エルビン・ジョーンズも控えめながら劇的なドラミングですし、イントロのリフを伴奏に使ってしまうデューク・エリントは、アドリブパートに入るとセロニアス・モンクっぽいニュアンスまでも聞かせるのですから、最初にこれを聴いた私は仰天したのですが、実はこっちが本家本元なのでした。
 
A-2 Take The Coltrane
 タイトルからして、このセッションの為に書かれたのでしょうか、ジョン・コルトレーンのアドリブフレーズのようなテーマメロディが印象的なデューク・エリントンのオリジナル曲です。
 そしてリズム隊はジミー・ギャリンソ(b) とエルビン・ジョーンズ(ds) ですから、アドリブパートに入るとデューク・エリントンは引っ込んで、ジョン・コルトレーンの激烈テナーサックスを中心としたトリオの大爆発が楽しめます。もちろんエルビン・ジョーンズは大奮闘! ジミー・ギャリンソはブンブンブンです。
 するとその背後で恐いコードを入れるのがデューク・エリントンなんですねぇ。これもあり、だと思います。

A-3 Big Nick
 ジョン・コルトレーンが書いたオトボケ調の和み曲♪ ソプラノサックスの響きが実に楽しい雰囲気ですが、アドリブパートは例によって力み優先モードとなります。
 ドラムスとベースは前曲と同じですから、ヘヴィなグルーヴが渦巻き、その中で苦悶するジョン・コルトレーンという図式ながら、デューク・エリントンの伴奏コードが味わい深いので、決して迷い道とはなりません。
 それどころか、逆にデューク・エリントンがアドリブに入ると、その場が別次元の緊張感に包まれるのです。見事な緊張と緩和だと思います。

A-4 Stevie
 デューク・エリントンのオリジナルで、なんとも黒っぽい楽しさが横溢した名演だと思います。
 リズム隊はアーロン・ペル(b) にサム・ウッドヤード(ds) というエリントン子飼いの2人ですから、ジョン・コルトレーンも気負い気味なんですが、アドリブパート中盤からは執拗なシーツ・オブ・サウンド! 自己のペースを取り戻してからは味わい深いフレーズ展開を聞かせてくれます。
 う~ん、それにしてもサム・ウッドヤードのドラミングは強靭なビートとハードなアクセントが恐い雰囲気ですし、デューク・エリントンのピアノもアタックが強くて、侮れません。

B-1 My Little Brown Book
 デューク・エリントンの片腕というビリー・ストレイホーンが書いた代表曲にして、私が大好きな隠れ名曲♪ 実はここでの演奏を聴いて、瞬時に虜になったのです。
 メンバーは前曲と同じで、泣きのテーマメロディを真摯に綴るジョン・コルトレーンは、緩やかなグルーヴの中を浮遊するようで素晴らし過ぎます! 本当に何時までも聴いていたいですねぇ。
 またデューク・エリントンが涙の滲むようなイントロから深遠なコードを響かせる伴奏という、神業を披露! 個人的には、このアルバムの中で一番好きな演奏となりました。

B-2 Angelica
 ジミー・ギャリンソ(b) とエルビン・ジョーンズ(ds) を従えたデューク・エリントンが、初っ端から楽しいラテンビートのビアノを披露して場を盛り上げ、ジョン・コルトレーンにバトンタッチ!
 ところが些か迷い道のテナーサックスが、自信なさそうで面白くなります。そして結局はジコチュウの4ビートにしてしまうというオチがあるんですねぇ。もちろんそこから激烈なモード節で遁走するのですが……。
 ちなみに作曲はデューク・エリントンながら、ほとんどその味わいが感じられないという仕上がりです。

B-3 The Feeling Of Jazz
 デューク・エリントンのオリジナルで、タイトルどおりの雰囲気がたっぶり楽しめる名曲・名演になっています。
 ミディアムテンポのグルーヴィな味わいは、アーロン・ペル(b) とサム・ウッドヤード(ds) のエリントン組によるもので、ジョン・コルトレーンも気持ち良さそうに素晴らしいアドリブを披露しています。もちろんそれは音符過多症候群ではなく、独自のちょっとせつない音使いが魅力です。実際、良いフレーズばっかり吹いているのは、この時期としては奇跡的♪
 まさにエリントンの魔法が作用したのでしょうか!?

ということで、ジャズ喫茶ではA面が定番かもしれませんが、私はB面を聴くことが多いです。なにしろ「My Little Brown Book」がありますからねぇ♪

ジャズ入門用にも最適だと思います。

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昭和40年代末の音がする

2008-01-04 16:40:45 | Jazz

新年の挨拶まわりで、どうしても思い出せない相手から親しく言葉をかけられました。はて、ダレだっけ……。

知らない相手に話を合わすという芸当が出来ない私は、大いに困惑したのですが、ふとした事から気がつくと、私が十代の終り頃に通っていたジャズ喫茶で、サラ回しをやっていた人でした。

あぁ、懐かしいなぁ♪ 今はもうジャズ関係の仕事ではないそうですが、何となく感慨深くて、当時流行っていた、こんなアルバムを聴いてみました――

Tune-Up / Sonny Stitt (Cobblestone)

モードもフリーも煮詰まって、電化ジャズにも馴染めない1970年代前半のジャズ喫茶に、突如として熱気をもたらしたのが、このアルバムでした。

リーダーのソニー・ステットは、ビバップ魂溢れる正統派のサックス奏者でありながら、実はコテコテ系ソウルジャズや電化物にも手を染めていたという物分りの良いミュージシャンでしたが、やはり本領は4ビートの真っ向勝負!

このセッションでは見事にそれを実証していますから、忽ちネオパップとか呼ばれて、ハードバップがリバイバルするきっかけとなった1枚です。

録音は1972年2月8日、メンバーはソニー・ステット(as,ts)、バリー・ハリス(p)、サム・ジョーンズ(b)、アラン・ドウソン(ds) という、激動の1960年代を生き抜いてきた、本気でしぶとい面々です――

A-1 Tune-Up
 マイルス・デイビスが書いたことになっているハードバップの定番曲を豪快に吹きまくるソニー・ステット! テナーサックスで淀みないフレーズを連発してくれますから、バックのリズム隊が逆に引っぱられる感じです。もちろん、そうした必死さが好演に繋がっているのは、言わずもがなです。

A-2 I Can't Get Started
 一転して悠然と吹奏される有名スタンダード♪ このメロディの節回しが実にジャズ喫茶に合っていたのですねぇ。サム・ジョーンズの力強いサポートも素晴らしく、ソニー・ステットもアルトサックスで熱演しますが、決してヒステリックにならない歌心優先主義♪ バリー・ハリスも追従しますが、実はサム・ジョーンズのベースにばかり耳が行ってしまうのでした。

A-3 Idaho
 またしてもテナーサックスで豪快に吹きまくるソニー・ステットの名演です。ただしブレイクでちょっとミスってから、最初は調子がイマイチ……。そこから快調なアドリブに盛り返していくあたりが、ジャズの醍醐味かと思います。
 ラストテーマの変奏は、まさに名人芸でしょうねぇ~♪

A-4 Just Friends
 これもモダンジャズでは定番のスタンダードということで、手慣れた感じもするのですが、あまりテーマメロディをしっかり吹かず、最初っからアドリブっぽい展開に進めていくソニー・ステットは流石です。
 それとバリー・ハリスの和みのピアノ、電気のアタッチメントがあるものの、それでもサム・ジョーンズがビンビンにベースの軋みを聞かせてくれますから、たまりません。

B-1 Blues For Prez And Bird
 タイトルどおり、レスター・ヤングとチャーリー・パーカーに捧げたブルースで、ソニー・ステットはテナーサックスを吹いています。
 まずスローな展開でじっくりとブルースを醸造させていくハンドの一体感が素晴らしく、グッとくるイントロから絶妙の伴奏まで、バリー・ハリスの活躍が目立ちます。もちろん「間」を活かしてインタープレイの妙技を聞かせるサム・ジョーンズ、地味ながらビートを完璧にキープするアラン・ドウソンが実に良い雰囲気です。
 そして後半はジワジワと情熱を発散させて山場を作っていく、ソニー・ステットが十八番の展開に! ただし決して大袈裟な事はしていなんですねぇ。それでも気持ちよくノセられてしまうのでした。

B-2 Groovin' High
 ディジー・ガレスピーが書いたビバップの聖典曲ですから、ソニー・ステットもアルトサックスでチャーリー・パーカーに迫っています。しかし結果はエキセントリックな恐さよりも、楽しいジャズになっているのですから、これこそがソニー・ステットの資質と魅力なんでしょう。
 実際、ほとんどマイナースケールを吹かないソニー・ステットは、それ故に我国ではイマイチ人気がないと感じます。もちろん抜群のテクニックと流麗なフレーズ、楽器の鳴りっぷりは超一流なんですけれど……。

B-3 I Got Rhythm
 オーラスはジャズ創成の秘密が込められた循環コードの名曲ですから、ソニー・ステットはテナーサックスでレスター・ヤングへのトリビュートに撤しています。あぁ、イタダキのフレーズが次々と流れてきますよ。
 そして後半はアルトサックスに持ち替えての大熱演! リズム隊とのコンビネーションも最高潮ですし、アラン・ドウソンの緊張感満点のドラミングは、やや録音が悪いので勿体無いです。

ということで、古い演目を新しい録音でという目論みから、まず、ソニー・ステットのサックスの鳴りが、素晴らしく記録されています。ただしドラムスが少し引っ込み気味で、これは本来パワー派のアラン・ドウソンにしては拍子抜けかもしれませんが、反面、繊細でビシッとキマるドラミングが、意想外に楽しめます。

結局、こういうアルバムは大音量のジャズ喫茶が一番似合うという皮肉があって、ますます我国で人気を集めたようです。

もちろんソニー・ステットは何時も一生懸命なミュージシャンですが、極論を言えば、このアルバム1枚持っていればOKという感じもするんですねぇ。つまり傑作であり、代表作だと思います。

う~ん、これを聴いていると、私は間違いなく昭和40年代末のジャズ喫茶にタイムスリップするのでした。

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ジャケット美人にブル~スを

2008-01-03 16:34:00 | Jazz

正月も終わりきらないうちから、もう仕事に入ってしまいました。おまけにPCのドライブがイカレ気味……。データが読めんぞっ!

というわけで、今年はなんとなく波乱のスタートでした。

そこで本日も美女ジャケで和みます――

Alone With The Blues / Red Garland (Prestige / Moodsville)


名手レッド・ガーランドのソロピアノ盤で、テーマはブルースとくれば、ジャケットは美女♪

まあ、あまり脈略の無いコジツケではありますが、やや男顔の彼女には無国籍な美しさも漂うわけで♪

肝心の中身はブルースというよりも、ブルース歌謡を洒脱に弾いたレッド・ガーランドの和みのピアノが、たっぷりと味わえます。

ちなみに録音は1960年4月2日で、まさにレッド・ガーランドが人気絶頂の頃かと思います――

A-1 In The Evening
A-2 Blues In The Closet
A-3 Chains Of Love
A-4 Tired
B-1 Sent For You Yesterday
B-2 Trane's Blues
B-3 Wee Baby Blues
B-4 Cloudy

――という演目の中では有名楽曲の「In The Evening」が、やはり良い雰囲気です。ちょっと緩いビート、柔らかなピアノタッチ、お洒落な感覚のアドリブはレッド・ガーランドでなければ醸し出せないところでしょう。もちろん、ほどよいブルースフィーリングは言わずもがな♪

このあたりはレイ・ブライアントも同タイトルのアルバムを出していることから、比較の対象にもなるのですが、レッド・ガーランドにはコテコテの感覚が稀薄なので、純粋にブルースという事では、些かツッコミが足りないのも事実です。

しかしカクテル感覚というか、粋なラウンジでこの手の演奏が流れていたら、側には美女がお約束という雰囲気なんですねぇ。これは自宅でシミジミする時でさえ、このアルバムさえあれば♪

という必需品ではありますが、「Blues In The Closet」とか、あるいは「Trane's Blues」といった純モダンジャズ系のブルースになると、どうしてもアート・テイラー&ポール・チェンバースが今にも入ってくることを期待してしまいます。

ですから、個人的には粘っこくガンガン行った演奏よりも、穏やかにディープな表現に撤する「Chains Of Love」や「Cloudy」が大好きです。

さあ、明日からはガッツ入れて、という古臭い表現も似合いです。

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ローラ・ニーロは私の女神♪

2008-01-02 15:26:02 | Laura Nyro

お正月2日目、本日は年始まわり♪

そして夜は映画鑑賞で劇場へ♪ 「エイリアン対プレデター」の続篇でも観ようと思います。

また今年は拙プログも幅広く、愛聴盤を取上げたい所存から、まず本日は――

More Than A New Discovery / Laura Nyro (Verve Folkways)

ローラ・ニーロは女性シンガーソングライターとして偉大なひとりですが、その歩みは決して順風ではなかったし、まだまだこれからという時に癌で亡くなるという、美人薄命……。

とにかく残された楽曲は全てが私好みという素晴らしさです。それはアメリカンポビュラー、ゴスペル、R&B、ジャズ、クラシック、その他諸々をゴッタ煮にして美味しいところだけをすくいとったようなメロディ♪ さらに深遠にして本音と理想が味わい深い歌詞、それを歌いあげるボーカルの力量! 最高です。

ただ、そういう繊細で自分にも厳しい姿勢が、彼女の活動を地味にしていたのも、また事実でした……。それでも彼女が書いた楽曲は、多くのミュージシャンに愛され、沢山のヒット曲となって、世界に流れているのです。

さて、このアルバムは彼女が19歳だった1967年に発売されたデビューアルバムで、収められた楽曲は全てが15歳頃からストックされていたというのですから、驚きです。これは実際に聴けば、納得されるでしょう。

彼女はイタリア系のユダヤ人で、両親ともに音楽関係の仕事をしていたところから、優れたソングライターの才能を持つ娘を音楽出版の関係者に売り込んでいたという話もありますが、最初に契約したのはジャズの分野では名門レーベルのヴァーヴが当時、新たにスタートさせたポビュラーフォークの専門レーベル「フォークウェイズ」でした。

録音は1966年秋頃で、伴奏メンバーはスタン・フリー(p)、ルー・マロウ(b)、ビル・ラヴォーニャ(ds)、ジェイ・パーリナー(g)、バッキー・ピザレリ(g)、トゥーツ・シールマン(hmc) が推定されています。ちなみにこのメンツは、当時のクリス・コナーの伴奏グループでもありますから、そのジャズ&ポビュラー感覚は言わずがな――

A-1 Good By Joe
A-2 Billy's Blues
A-3 And When I Die
A-4 Stoney End
A-5 Lazy Susan
A-6 Hands Of The Man
B-1 Wedding Bell Blues
B-2 Buy And Sell
B-3 He's A Runner
B-4 Blowing Away
B-5 I Never Meant to Hury You
B-6 California Shoeshine Boys

――結論から言うと、リアルタイムでは全く売れなかったそうです。しかし楽曲の素晴らしさは業界で評判となり、例えば「Wedding Bell Blues」はフィフス・ディメンション、「Stoney End」はバーブラ・ストライサンド、「And When I Die」はBS&Tにカバーされて大ヒット! もちろん他のミュージシャンによる録音も多数ありますし、このアルバムの楽曲は全て、カバーバージョンが存在しています。

ちなみに私はフィフス・ディメンションの「Wedding Bell Blues」で、そのお洒落な皮肉っぽいメロディの虜となり、ローラ・ニーロに出会ったのです。

もちろんローラ・ニーロ自身のデビューシングルも「Wedding Bell Blues」でしたが、これが全くの不発……。しかも1967年6月に開催されたモンタレー・ポップフェスティバルに出演した彼女には強烈なブーイング! 確かにジミヘンやジャニス、ザ・フーが絶大な歓迎を受けたことからして、彼女の地味で深遠な世界は???だったかもしれませんが……。

この出来事により、彼女は以降2年間、人前で歌うことが無かったと言われています。

肝心の楽曲については、まずジャジーで静謐、そして暖かい歌いまわしが絶品の「Billy's Blues」が最高! 軽妙なメロディと歌詞、フックの利いたメロディが素敵な「Wedding Bell Blues」はもちろん、十代にして「死」の意味合いを歌った「And When I Die」の歌詞には絶句させられます。

ということで、書きたいことは尽きないのですが、結局は売れなかったこのアルバムが多くのカバーヒット曲の宝庫となり、ローラ・ニーロも再起して翌年にはコロムビアと契約♪ 素晴らしい傑作盤を連発して時代を築くのです。

また、このアルバムもジャケットデザインや曲順を変更し、タイトルも「ファースト・ソングス」として再発されました。

それは所謂シンガー・ソングライターのブームと重なりますが、その代表というキャロル・キングにしても、このアルバムから大きな影響を受けていることは否定出来ません。

そして我国では吉田美奈子! 初期の彼女の楽曲や歌いまわしなんか、ローラ・ニーロそのまんまで、私は大好き♪ もちろん山下達郎さえもです。

ちなみにローラ・ニーロは、アメリカではアル・クーパーやトッド・ラングレンと似たような資質があって、3人とも常に似たような曲ばかり書いていますから、私の好みもムベなるかなです。

とにかく何度聴いてもジンワリと心が温まり、気分が高揚し、ホロリと泣ける名盤です。どうやら最近、紙ジャケット仕様でリマスターCDが出ているようですから、この機会にぜひ! 私も買おう!

歌詞カードがあれば、その歌の内容にも感動すること必至ですよ。

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