OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

新年はロリンズで♪

2007-01-01 16:19:15 | Weblog

謹賀新年♪

まあ、なんとなく新年が来たという雰囲気ではありますが、来客とか新年の挨拶回りで、のんびりできませんです。

本当はこの機会に、買ったまんまになっている、いろんなブツを鑑賞しようと目論んでいたんですが、結局、新年の初ジャズは、これになりました――

The Bridge / Sonny Rollins (RCA)

ぶっとい音色と変幻自在なアドリブで、1950年代にジャズテナーサックスの王者となったソニー・ロリンズが、何故か全盛期を極めていた1959年秋頃に突如第一線から姿を消し、1962年にようやく再起した折りに吹き込まれたアルバムです。

その豪快なスタイルとは結びつかないような、繊細な神経の持ち主なんでしょうか? 私のような凡人には、窺い知れない苦悩や懊悩があるんでしょうねぇ、実はソニー・ロリンズは、これまでのキャリアの中で幾度か、第一線での活動を停止しています。所謂、雲隠れってやつですねぇ……。

それは酒や麻薬の悪癖から立ち直るためだったり、私生活のゴタゴタから逃れるためだったり、あるいは音楽的な行き詰まり等々、様々な原因が取りざたされていますが、結局は本人にしか分からない決断なんでしょう。

しかし、ソニー・ロリンズは何時だってソニー・ロリンズであって、残されたレコードやライブの演奏では、絶対普遍のロリンズ節しか出てこないのです。

このアルバムにしても、吹き込まれた時期はジョン・コルトレーン(ts) の台頭、オーネット・コールマン(as) の登場、さらにエリック・ドルフィー(as) 等々の新感覚派の活躍が目立っていたわけですから、同じサックス奏者として久々に新録音を出すにしても、ソニー・ロリンズとしては王者の面目とか貫禄を意識しないではいられないはずだったと思うのですが、結局はそれは、凡人の勘繰りにしか過ぎませんでした。

録音は1962年1&2月、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、ジム・ホール(g)、ボブ・クランショウ(b)、ベン・ライリー(ds) ですが、1曲だけ H.T.ソーンダース(ds) が交代しています――

A-1 Without A Song (1962年2月14日録音)
 いきなり弾むように楽しく演奏されるテーマ部分から、豪放磊落な歌心に彩られたアドリブパートまで、完璧なソニー・ロリンズだけのジャズが披露されています。
 う~ん、当にタイトルに偽りなしですねぇ♪ 膨らみのあるジム・ホールの伴奏も良い感じ♪ スタスタッという快適なブラシを聞かせるベン・ライリーも良いなぁ~♪ 本当に聴いていて心が大らかになってきます♪

A-2 Where Are You ? (1962年2月13日録音)
 これも悠々自適という、ソニー・ロリンズならではのスローな歌物解釈が冴えた演奏です。脇を固めるギター、ベース、ドラムスは、けっこうバラバラな事をやっていながら、ちゃん~とソニー・ロリンズがやりたい事を分かっているんでしょうねぇ、本当に絶妙のバックで活躍していると思います。
 そしてソニー・ロリンズは、ラストテーマの吹奏がさらに素晴らしい限りです♪

A-3 John S (1962年2月13日録音)
 ちょっと時代を意識したかのような楽しくないテーマが、らしくありませんが、アドリブパートに入っては縦横無尽なソニー・ロリンズが楽しめます。
 まず得意技のモールス信号という単音吹きの連発から、ウネリ満点の豪快なノリ! さりにリズム隊完全無視の暴走までもっ!
 その無視されたサポートの3人は、まずベースのボブ・クランショウのドライブ感が物凄く、ドラムスのベン・ライリーも熱演ですし、ジム・ホールなんかブチキレ気味のコード弾き&オカズ入れですよっ!
 あぁ、痛快な演奏です! 何度聞いても興奮させられます!

B-1 The Bridge (1962年2月14日録音)
 アルバムタイトル曲も、過激なテーマメロディから爆裂のアドリブが展開されます。もちろんバンド全体の一体感は失われていませんが、個人技の極北を披露するソニー・ロリンズの我侭さに、かえって怒り心頭のリズム隊が、強烈です。
 例えばこんな激烈な伴奏をするジム・ホールなんて、耽美派ジム・ホールのイメージを覆すものですし、ベン・ライリーの神経質に騒がしいシンバルワークやツッコミの鋭いボブ・クランショウも実力発揮の存在感です。

B-2 God Bless The Child (1962年1月30日録音)
 不気味なベースのイントロから一転して、優しさと安らぎに満ちたソニー・ロリンズのスローな吹奏が、最高です。
 曲はビリー・ホリディ(vo) の十八番として有名ですが、ここでの演奏は、そのインストバージョンとしては代表的なものだと思います。
 特にジム・ホールのソロが短いながら秀逸♪ そこはかとない泣きの真髄です。
 ちなみに、この曲だけ、ドラムスが H.T.ソーンダースに代わっています。

B-3 You Do Something To Me (1962年2月13日録音)
 アルバムの最後を飾るのは、ソニー・ロリンズが最も「らしい」姿を披露する、軽妙洒脱なスタンダード曲解釈です。
 そのテーマメロディの変奏と膨らませ方が、まず素晴らしく、アドリブパートでも無伴奏ソロやリズムのグルーヴを逆手に取ったかのようなトリッキーなフレーズの連発、さらに「間」を狂わせるかのような変則ノリで、自由自在に飛翔をするのです。
 またジム・ホールが、素晴らしいです。分かっているっていう感じですかねぇ~♪

ということで、これはソニー・ロリンズの代表作にしてモダンジャズの大名盤なので、ガイド本にも必ず掲載されるアルバムなんですが、リアルタイムではあまり売れなかったと言われています。

実はソニー・ロリンズは復帰にあたり、大手レコード会社のRCAを選んだのは、その莫大な契約金のためだという噂もあり、逆にこのアルバムで先行きを不安視した会社側は、売れる企画優先のレコーディングを、この後に押付けた云々というヒストリーが出来上がっていますが、ファンとしては虚心坦懐に残された録音を鑑賞し、純粋に楽しめれば、それで良しとするのが本音だと思います。

その意味で、この作品は本当に全部が素晴らしいなぁ、と思える仕上がりだと断定いたします。まあ、あくまでも独断と偏見ですが……。しかしこのソニー・ロリンズを聴いていると、そう言う他は無いのでした。

本年もよろしくお願い致します。

コメント (5)
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