昨日、今日と、久々に自分だけの時間を堪能しましたです。
もちろん中古屋も襲撃、古本屋も徘徊して収穫も大きく、散財もありましたけど、お金は生きているうちに使わなければと、苦しい言い訳をしています。
で、最近は復刻CDが紙ジャケットになるのが主流のようですね。中古でしたが、こんなんゲットしてきました――
■Phil Woods & The Japanese Rythm Machine (RCA)
フィル・ウッズはハードバップ期から活躍している優れた白人アルトサックス奏者ですが、一番勢いがあったのは1970年代だと、私は思います。
特にジャズ喫茶という文化がある我国では、残されたレコードを中心に本場の演奏に接する機会がほとんどですから、そこに名演・名盤があれば、自ずと人気者になってしまいます。その意味からフィル・ウッズには「ヨーロピアン・リズム・マシーン」とか「ミュージック・デュ・ボア」等々という、当にジャズ喫茶に無くてはならないアルバムを吹き込んでいる名手です。
したがって1975年の初来日公演は、否が応でも熱烈歓迎でしたが、気になったのが単身来日だったことです。
実は当時のフィル・ウッズはレギュラーのバンドを持っておらず、このあたりは、けっこう厳しい本場の現実というところでしょう。なにしろ時代はフュージョンブームが急上昇、そして正統派ジャズは落目のなんとらや……。
そこで日本人ミュージシャンがサポートすることになった次第でしょうが、フィル・ウッズには○○リズム・マシーンという錦の御旗がありますからねぇ~♪ これが摩訶不思議なノリと異様な高揚感が充満したステージとなりました。というのは、私が直に体験したライブからの感想ですが、嬉しいことに、その日の模様はレコード化され、我国独占で発売されたのが本日の1枚です。
録音は1975年7月31日の新宿厚生年金会館、メンバーはフィル・ウッズ(as,ss)、市川秀男(p)、古野光昭(b)、ジョージ大塚(ds) という、当にジャパニーズ・リズム・マシンとの共演です――
A-1 Windows
チック・コリアが書いた新主流派バリバリの名曲です。
ここでは冒頭から思わせぶりなフィル・ウッズのテーマ吹奏が、その太くて豊かな音色と音量で一層、魅力的です。
さらに日本側リズム隊も最初っから異様なほどテンションが高い雰囲気ですから、本当にヤバイです。どこに連れていかれるか、ちょっと……。
ですからフィル・ウッズは何の遠慮もせずに吹きまくり、グイグイ突進です。
すると市川秀男がハービー・ハンコックも真っ青のフィーリングで見事に期待に応えますが、ジョージ大塚のドラムスがバタバタと潔くないというか、ここらが日本のジャズメンに対して我国のファンから厳しい声があがるところでしょう。ただし演奏が白熱してフリーに近くなってくると、何とも言えない良い味になるんですよねぇ~。
演奏は終盤でフィル・ウッズと古野光昭のデュオパートが用意され、なかなかスリルある展開から、ようやくリズム隊が本領発揮の繊細な感覚を聴かせてくれます♪
A-2 Spring Can Really Hang You Up The Most
個人的に大好きなスタンダード曲なので、嬉しい演奏でした。
そして甘さと激しさ、厳しさを存分に発揮して悠然と吹奏するフィル・ウッズの勇姿に感動したことが、今でも思い出される名演です。とにかくテーマの膨らませ方が最高です! キメで入れるチャーリー・パーカー直伝のフレーズも良いですねぇ♪
そして本格的なアドリブパートでは、テーマメロディを大切にしつつも、烈しい感情吐露が、当時若かった私にはジャストミートの熱演でした。
気になるリズム隊は古野光昭の絡みがジャズの醍醐味ですし、ドンチャカ系のジョージ大塚のドラムスでは、そのオカズやキメを逆手に取ってしまうフィル・ウッズが流石の柔軟性です。
最後の独り舞台的なアルトソロも、お約束の嬉しさに満ちています。
B-1 Johnny Hodges
フィル・ウッズが敬愛するジョニー・ホッジスに捧げて書いた、和んで楽しい名曲です。しかもここではソプラノサックスを吹いてくれましたからねぇ~、ちょっと驚きましたが、これがまた、良いです。名手の証というか、なかなか楽しませてくれる歌心は、最高です。もちろんジョン・コルトレーンっぽい烈しいフレーズまでも!
それと良いのが市川秀男です♪ 自分のアドリブパートでは、当然リズム隊だけのトリオになるんですが、3人がバラバラをやっている雰囲気の中、一瞬のうちに纏まって、また散り散りになるというジャズの面白さが、何度も繰り返されます。
自己主張の烈しい古野光昭も、実に良いですねぇ。
B-2 Speak Low
お馴染みのスタンダード曲ですが、なんと最初が、あの「マイルストーンズ」になっていて、間髪を入れずに猛烈なテーマ吹奏が始まるという、恐るべきアレンジです。
もちろんアドリブパートは激烈! 暴風警報のフィル・ウッズに対し、ジョージ大塚がドタンバタン、ガチ~ンと喰らわせる独自のキメには、本当に熱いものを感じます。もちろん、そんなことに怯むフィル・ウッズではありませんからねぇ~♪ 完全にジコチュウでブリブリとブッ飛ばしています!
すると市川秀男が変幻自在の実力を存分に発揮したフルスピード・ピアノです! 背後のドラムス&ベースなんか、知ったこっちゃ無い雰囲気です。特に烈しいストライドからフリーになる瞬間なんか、もう最高でした!
そして最後にはジョージ大塚の爆裂ドラムソロが、お約束です。対峙するフィル・ウッズも、これには困った顔でニンマリしていましたねぇ~♪ 当日の私の席は2階でしたけど、はっきり分かる良い雰囲気でした。
B-3 Doxy
ソニー・ロリンズのオリジナル曲ですが、フィル・ウッズは1950年代から終演テーマに使っていたという、短いながら、お楽しみの演奏です。
そしてこれが出た時には、会場は大盛り上がりでした。ちなみに最後の挨拶もフィル・ウッズがやっています、「ど~も」なんてねっ♪
オーラスのフリージャズもどきが、なんとも楽しい瞬間です。
ということで、実際に現場にいた私だから、これが好きなのかもしれません。実際、冷静に聴くと、リズム隊が如何にも日本人丸出しのバタバタ感覚ですし、ちょっと纏まりの良すぎるというか、もう少しフリーっぽい演奏も聞きたかったのが本音です。
とは言え、現在CDで復刻されているのは貴重です。紙ジャケット仕様の限定盤なので、気になる皆様は早めにゲットして下さいませ。