正月2日目は、箱根駅伝をテレビ観戦したり、旨い物食って、ごろ寝という、何年かぶりに日本の正月どっぷりを満喫してしまいました。
来客もありましたが、気心の知れた仲間ばかりだったんで疲れませんし、むしろ楽しすぎて反動が恐いくらいです。
ということで、本日は、楽しさ究極のこれを――
■Easy To Love / Roland Hanna (Atco)
ローランド・ハナはハードバップというよりも、ハンク・ジョーンズ~オスカー・ピーターソンのラインに位置するピアニストだと思います。
けっこうクラシックの素養もある実力派ですが、同時に如何にも黒人らしいグルーヴィなノリや洒落たメロディフェイクも得意という、その演奏は一度聴いたら、ジャズ者にとっては、かなり気になる存在ではないでしょうか。
このアルバムはローランド・ハナの代表作とされるピアノトリオの人気作ですが、オリジナル盤はなかなか希少だと思います。というか、盤質やジャケットのコンディションが共にOKなブツに、私は曹禺したことがありません。
もちろん日本盤もアナログLP時代から出ていますが、個人的には、その音質に満足出来ず、手放していました。というのも、実は友人がピカピカのオリジナル盤を所有していて、それを聴かせてもらったが最後……、というのが真相です。
そんな高嶺の花というアルバムが、なんと紙ジャケット仕様のCDで再発されていました♪ しかもマスタリングもなかなか秀逸ということで♪♪~♪
録音は1959年9月25日、メンバーはローランド・ハナ(p)、ベン・タッカー(b)、ロイ・バーンズ(ds) という、シブイ面々です――
A-1 The Best Things In Life Are Free / 自由が一番
個人的にはハンク・モブレー(ts) の名演が印象深いスタンダード曲ですが、このローランド・ハナのピアノトリオ演奏も、なかなか素敵です。
いきなり爆発的なドラムスとベースに煽られ、ローランド・ハナの豪快かつ繊細なピアノがテーマを上手く膨らませていくテーマ部分で、その世界へ惹き込まれます。
もちろんアドリブパートもド迫力に展開され、しかも歌心が満点♪ ローランド・ハナはフィニアス・ニューボーン真っ青の両手弾きテクニックまで披露しますし、ベースとドラムスの黒くてハードな感覚も、たまりません!
そして散々暴れたあと、何事も無かったかのようにフワッとラストテーマに入っていく3者の上手さ♪ その後には、どうにも止まらなくなって、演奏がフェードアウト処理になるのが、唯一の減点です。
A-2 Next Time You See Me
これも初っ端から黒~いです♪
どうやら曲はベン・タッカーのオリジナルのようですが、ハードバップの隠れ名曲候補ですねぇ♪
ローランド・ハナも、そのツボをしっかりと押さえて、ファンキーなフレーズを弾きまくりですし、ブロック・コード弾きも最高です。そしてなによりも、トリオとして盛り上げていこうという、3者の思惑が完全に合致した楽しい名演になっています。
ベン・タッカーのベースソロも、当然、秀逸です。
A-3 From This Day On
一転して、しっとり系のバラード演奏で、ローランド・ハナは両手フル活用の華麗なテクニックを遺憾なく発揮していますが、嫌味になっていません。
原曲については良く知らないのですが、なかなか素敵なメロディラインが魅力的ですし、それをローランド・ハナが最高に上手く、素直に聴かせてくれるあたりは、一流ホテルのラウンジという趣ですが、寄添いながらも意想外に鋭いツッコミを入れてくるベン・タッカーのベースが、モダンジャズ志向から外れない要因だと思います。
A-4 Like Someone In Love
モダンジャズでは幾多の優れたバージョンが残されているスタンダード曲なので、聴いていて安心感があるんですが、このローランド・ハナ・トリオは、なかなかエグイ演奏に撤しています。
まずロイ・バーンズのブラシにはザラザラした感覚が有りますし、ベン・タッカーのベースはビンビンビン! このあたりの録音按配が、オリジナル盤以外だと、なかなか上手く再現されていないのが実状でしたが、このCDは、かなり良いセン、いっていると感じます。
肝心のローランド・ハナのピアノは、ゴスペルっぽいグイノリから叩きつけるようなハードバップ状況まで、ひたすらにモダンジャズの楽しさを追求していきます。
もちろん、原曲メロディの良さを損なうようなことはしていません♪ ズバリ、名演だと思います。
B-1 Yesterdays
独特の暗さを秘めたスタンダードの名曲を、ここでは通常よりもテンポを速め、力強いハードバップに仕立てています。
その要はベン・タッカーのグルーヴィなベースとメリハリの効いたロイ・バーンズのドラムスでしょうか、ローランド・ハナとの相性もバッチリで、演奏はひたすらに楽しく盛り上がっていくのでした。
B-2 Farouk Thelonious
これもベン・タッカーのオリジナルで、幾何学的に盛り上がっていくテーマメロディは、タイトルどおりセロニアス・モンクに因んだものでしょうか。
トリオ3者各々の存在感も見事ですし、このアルバム中では一番過激な演奏なんですが、難解さよりはグイノリの楽しさに心躍るあたりが、人気盤の証明だと思います。
B-3 It Never Entered My Mind
マイルス・デイビスの名演があまりにも有名なスタンダード曲です。
ここではローランド・ハナが最初から全くのピアノソロで実力発揮の一人舞台、後半にベースとドラムスが加わるという構成になっています。
もちろん演奏は、たまらなく秀逸なんですが、惜しむらくは、このCDでは音が良すぎるのが裏目に出たというか、ソロピアノ部分でマスターテープの劣化が顕著であり、ヒスノイズが浮き出ているのが、無念です……。
B-4 Easy To Love
アルバムタイトルに選ばれただけあって、最高に楽しい和みの名演になっています♪
あぁ、この、どこまでもスイングして止まらない良質のモダンジャズ感覚は、本当に得難い宝物! ローランド・ハナの特質が存分に発揮された決定的な瞬間でしょう。緩急自在というか、アッ愕くフレーズ展開も含めて、素直にジャズを聴く楽しみに溢れていると思います。
ロイ・バーンズのブラシも、本当に見事ですねぇ~♪
レッド・ガーランドあたりが好きな皆様にも、オススメです。
B-5 Night In Tunisia / チュニジアの夜
オーラスはビバップ時代から定番というモダンジャズの名曲なんで、ここでは特にハードバップ色が濃い演奏になっています。
アップテンポでのビートの砕き方も素晴らしく、ギトギトになりつつも、こなれた演奏は、随所に過激な仕掛けがあったりして、飽きません。演奏時間が短いのが本当に残念です。
ということで、ちょっと1曲あたりの演奏時間が短いテイクばっかりなんですが、密度の濃さは天下一品! 選曲も素晴らしく、アルバムの流れも上手く出来ています。
加えて美女ジャケットという決定的な魅力もあり、ますますオリジナル盤が欲しくなるという、罪作りな作品です。
ビアノトリオ好きの皆様には言わずもがなのマストでしょうねぇ♪