今年の仕事始めも、つつながく終了、これから2つほど宴会に顔を出しに行きますが、なんか最近はジャズモードへ素直に入れるようになりました。
なにしろ本日は朝一発目から、こんなん聴きましたからねぇ~♪
■Know What I Mean ? / Cannonball Adderley With Bill Evans (Riverside)
ジャズガイド本にも必ず載っている名盤ですが、ジャズを聴き始めた頃の私には、どうしても手を出せないアルバムでした。
だって、ファンクの卸商人と呼ばれたキャノンボール・アダレイと耽美派のビル・エバンスの共演なんて、どこへ連れて行かれるか、ちょっと安心出来ないですし、ミスマッチの面白さなんて、LP1枚を買うにも命がけだった若い頃には踏み込めない領域でしたからねぇ……。
ジャケ写のシュールな感覚もアブナイ雰囲気で、香りが高いのは、ちょっと……。
でも、この2人がマイルス・デイビス(tp) のバンドで共演し、名演・名盤を残している事実は認めざるをえないですし……。
で、結論から言うと、やっぱり素敵な出来栄えです♪
録音は1961年1~3月、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ビル・エバンス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds) という奥深さです――
A-1 Waltz For Debby (1961年3月13日録音)
いきなりビル・エバンスの大ヒットをやっていますが、果たしてキャノンボール・アダレイは!?
ふっふっふっ、それは取り越し苦労というか、心配ご無用です♪
いきなりエバンス節が丸出しになったピアノソロで愛らしいテーマが奏でられ、ジワッと来たところで、リズム隊が入りワルツテンポが提示され、するとキャノンボール・アダレイが何の違和感も無く、スゥ~っとテーマを吹奏しますが、このアルトサックスが浮遊感満点でたまりません♪
そしてアドリブパートに入っても軽やかに、そして黒い感覚を失わずに歌っていくのです。う~ん、このライト感覚は完全に意表を突かれたと言うか、何度聴いてもグッときます。
特に3分目あたりからの泣き節、続く3分37秒目のスットコドッコイの十八番フレーズは、キャノンボール・アダレイでなければ出せない琴線の裏技!
するとビル・エバンスは正統派エバンスフレーズで対抗というか、別に対抗意識なんか無いんでしょうけど、自然体で楽しませてくれるのでした。
A-2 Goodbye (1961年1月27日録音)
またまた初っ端から耽美な展開ながら、キャノンボール・アダレイは、この哀切のスタンダードを真摯に吹奏してくれます。これが泣けるんですねぇ~♪ 本当に艶やかな音色とダークな心情吐露です。
もちろんビル・エバンスも伴奏では的確なコード付け、アドリブソロではじっくりと「間」を持ちながら、緊張感の途切れない素晴らしさで、自身の歌心を存分に発揮しています。
また目立たないながら、寄り添うパーシー・ヒースの上手さと余計な手出しをせずにサポートに撤するコニー・ケイも、流石だと思います。
ラストテーマ前に本性を現しそうなるキャノンボール・アダレイは、ご愛嬌でしょう。
A-3 Who Cares ? (1961年1月27日録音)
これもビル・エバンスが十八番にしているスタンダード曲ですが、ここではキャノンボール・アダレイがリードして、一層軽やかに、力強く演奏されています。
ただし暴走気味になると自重してしまうような遠慮が無きにしもあらずでしょうか、せっかくリズム隊がグイノリなんですから、もう少し、イッてもいいように思いますが、これで良いんでしょうねぇ。本当に楽しいモダンジャズになっています。
気になるビル・エバンスは何時ものペースですが、ドラムスとベースがMJQという完成されたユニットから出向している2人なんで、安心して身を任せている雰囲気です。
A-4 Venice (1961年3月13日録音)
そのMJQの定番レパートリーを取上げて、短いながら、なかなか素敵な演奏に仕立て上げています。
特にキャノンボール・アダレイのジェントルな吹奏は素晴らしく、テーマメロディしか吹いていないんですが、ビル・エバンスのソフトな情感との相性もバッチリです。
そしてもちろん、パーシー・ヒースとコニー・ケイは、バックでニンマリというところでしょうかねぇ♪ 実はこのアルバムでは、最高の演奏だと思います。
B-1 Toy (1961年2月21日録音)
このセッションの中では一番過激な雰囲気が漂った曲でしょう。
パーシー・ヒースのベースが不気味な音使いというテーマから、快適なキャノンボール・アダレイとは裏腹に、かなり緊張感が強いビル・エバンスが絶妙な色合になっているのです。
う~ん、それにしても、このトラックでのリズム隊は奥深いと思いますねぇ。キャノンボール・アダレイを自由に遊ばせておいて、要所を締める凄みがあり、キャノンボール・アダレイも、百も承知の弾けっぷりです。
B-2 Elsa (1961年2月21日録音)
最初から、当にビル・エバンスの世界が横溢したテーマが提示されるので、キャノンボール・アダレイが、どう出るか!?
聴いているうちに、またまたそんな取り越し苦労に苛まれる演奏なんですが、もちろん心配はご無用です。非常に柔らかな膨らみを持ったキャノンボール・アダレイのアルトサックスは、出てくる最初の1音、ワンフレーズで、見事にビル・エバンスの世界観を継承・発展させてしまいます。
ですからビル・エバンスも安心して自分のアドリブに戻って後は、素晴らしすぎる耽美の世界を追求していくのでした。もう最高です!
B-3 Nancy (1961年1月27日録音)
ジョン・コルトレーンのバラード作品でお馴染みの名曲ですが、このバージョンも負けていません。ズバリ、キャノンボール・アダレイが実力発揮の名演です♪
そこには秘められたファンキー感覚の裏打ちが感じられ、さらに素直な歌心があるのです。ビル・エバンスも、そのあたりを充分に理解した伴奏とアドリブソロで、嫌味がありません。
なんとも言えないダークな雰囲気が、本当に素敵です。
B-4 Know What I Mean ? (1961年3月13日録音)
オーラスはビル・エバンスが書いた、このアルバムのタイトル曲ですが、楽しくないテーマメロディは、個人的に減点です。
ただし一種異様な緊張感とリズム隊の変幻自在な変わり身の早さ、モードどっぷりの中間部のアドリブでは、キャノンボール・アダレイもビル・エバンスも、マイルス・デイビスのバンドで共演していた頃の夢よ、もう一度という快演になっています。
ということで、聴かず嫌いのアルバムでは代表格かもしれませんねぇ。
しかし冒頭の「Waltz For Debby」は、聴いたが最後、キャノンボール・アダレイの意外な一面を知って感涙の名演ですし、パーシー・ヒースとコニー・ケイという物分りの良い縁の下の力持ちがいるので、全体が引き締まった名盤だと思います。
ただし、それゆえに、こじんまりした印象が残るのも、また事実でしょう。
ジャズ喫茶よりは自宅でニンマリしながら聴くアルバムかもしれません。