現在、紙ジャケット仕様でCD復刻されているアトランティックレペール諸作の音の良さには、ちょっと衝撃を受けています。
失礼ながらアトランティックというレーベルは、企画・製作は良いのに、アナログ盤時代から音がイマイチという印象しかありませんでしたからねぇ……。
それがっ!
本日の1枚も、そうした楽しみがビッシリ楽しめる、これです――
■Clarke - Boland Big Band (Atlantic)
ビバップ=モダンジャズを創成した偉大なミュージシャンのひとりであるケニー・クラーク(ds) が渡欧して後、ベルギー生まれのピアニスト=フランシス・ボーランと一緒に結成したビックバンドには、欧州で活躍する精鋭が集結し、1960年代から1970年代前半に物凄い名演・名盤を多数残していて、今日までも評価が高い存在です。
もちろん、オールスタアのバンドですから臨編体制なんですが、実はイタリアの有力興行師=ジジ・カンピが影の立役者として巡業やメンバー集めに関係していたことが、常に優れた演奏を残した秘密だと言われています。
さて、このアルバムは、そんなバンドの結成直後の演奏が収められた、多分2作目でしょうが、溌剌盤です。
録音は1963年1月25&26日、メンバーはフランシス・ボーラン(p,arr)、ジミー・ウッド(b)、ケニー・クラーク(ds) をリズム隊にして、ベニー・ベイリー(tp)、ジミー・デューカー(tp)、アイドレース・シュリーマン(tp)、オキ・ペルソン(tb)、ナット・ペック(tb)、デレク・ハンブル(as)、カール・ドレボ(ts)、ビリー・ミッチェル(ts)、ロニー・スコット(ts)、サヒブ・シハブ(bs,fl) ……等々、もう書ききれないほどの豪華絢爛さ♪ フランシス・ボーランのアレンジもジャズのキモを大切して晴らしく、もちろん、一糸乱れぬ強烈なアンサンブルと濃密なアドリブソロがたっぷりです――
A-1 Long Note Blues
いきなり強烈なティンパニーの連打にドキモを抜かれますが、今回復刻されたCDはリマスターが素晴らしいので、尚一層、ガッツ~ンときます。
そしてフランシス・ボーランの擬似ファンキーなピアノを中心としたリズム隊のペース設定、さらにタイトルどおりにロングノートを積み重ねていくホーンセクションが、気持ち良い限りです。
アドリブパートでは、まずサヒブ・シハプが唸りを加えたフルートで大熱演すれば、ビリー・ミッチェルは黒いグルーヴを炸裂させて抵抗し、アイドリース・シュリーマンがクールなカッコ良さを披露するという、アメリカ勢が底力を発揮しています。
しかし本当に凄いのは背後から襲い掛かってくるブラス&リードのアンサンブルで、シンプルなアレンジながらジャズの真髄を鋭く突いた強烈さがあります。
もちろんリズム隊のシャープなノリは言わずもがな♪ 本当に興奮させられる演奏です。
A-2 Get Out Of The Town
コール・ポーター作曲の有名スタンダードが軽快に演奏されています。もちろんフランシス・ボーランのアレンジは冴えていますが、アドリブパートでの各人の奮闘も聞き逃せません。
まずオキ・ペルソンの伸びやかなトロンボーンが素晴らしく、続くデレク・ハンブルは押えた情熱で嫌味がありません。そしてジミー・デューカーが基本に忠実な歌心を披露すれば、アイドリース・シュリーマンはツッコミ鋭く迫ってきます。
しかしここでもバンドアンサンブルが最高の聴きものでしょうか、素晴らしくワクワクさせられますねぇ~♪
A-3 Sonor
ケニー・クラークが書いた快適なハードバップ曲ですが、フランシス・ボーランのアレンジによって豊かな彩りが添えられたテーマが素敵♪
しかし負けずに炸裂する名手達のアドリブソロは、短いながらも大充実です!
また当然ながらケニー・クラークのドラムソロもありますし、ここまでの各曲で活躍しているティンパニーはジョー・ハリスが担当しています。
B-1 Speedy Reeds
痛快なハードバップがビックバンドで演奏されるという醍醐味が、存分に楽しめます! しかもアドリブパートではカール・ドレボ、ロニー・スコット、ビリー・ミッチェルという三竦みのテナーバトルが炸裂しますから、たまりません!
もちろんフランシス・ボーランがアレンジしたシャープなリフが背後から襲い掛かってきますし、煽りまくるリズム隊の強烈なビートが爽快です♪
気になるテナーバトルの勝敗は、着くはずがありません。本当にタフな演奏なんですが、疲れませんので、本当に何時までも聴いていたいのが本音です。必ず、ノリますよ♪
B-2 Old Stuff
これがまた、グルーヴィでハードボイルドな曲&演奏です。
ミディアムテンポで初っ端から飛び出すアイドリース・シュリーマンとベニー・ベイリーのサスペンスいっぱいのトランペット合戦に、まずシビレます♪ 続くデレク・ハンブルとビリー・ミッチェルのサックス対決も熱く、バンドアンサンブルも最高としか言えません! あぁ、こんな豪快なバンドがあるでしょうか!? シンプルな良さというか、本当に良いです!
B-3 Om Mani Padme Hum
タイトルからも連想出来るように、エキゾチック系の曲であり、ファッツ・サディのパーカッションが大フィーチュアのスタートから、分厚く入り組んだホーンセクションとポリリズムのビートが完全融合した名演となります。
しかしアドリブパートではクールな4ビートに転換し、まずサヒブ・シハブのフルートが疾走します。もちろん唸り入りですが、バックのボンゴも快適ですねぇ♪
またベニー・ベイリーが畢生の大熱演です! けっこう前衛派のフレーズも混ぜ込んでいますが、ちゃんと構成された雰囲気なので、素直に熱くなれますねぇ~♪ 背後のアンサンブルも言う事なしの豪快さです。
ということで、とにかく素晴らしい演奏集なんで、カーオーディだと、ついアクセル踏み過ぎになりそうなほど! スカッとします。
ちなみに彼等の勇姿が拝めるDVDも出ていますので、ぜひとも、ご堪能下さいませ。