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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

素敵なシェリフ

2007-01-23 18:18:50 | Weblog

ジャズはアドリブか、曲か?

そのどっちに重きをなすのか、特にモダンジャズでは論争になったりすることがありますね。こんな事に悩んでいるのは、まあ、日本だけかもしれませんが……。

で、私はやっぱり曲重視派でして、特に知らないレコードを買う時は、メンツ以上に演目に拘ったものでした。これは今でも、そうです。

ところが、つまらないというか、自分の好みではない曲なのに、アドリブがやたらに良いという演奏も、確かに存在しています。

例えば、このアルバムが――

■The Sheriff / The Modern Jazz Qrartet (Atlantic)

モダン・ジャズ・カルテット=MJQが1963~1964年にかけて行ったセッションから作られたアルバムです。

当時のバンドはすっかり人気が安定していたようで、ライブでは定番レパートリー、一方新作スタジオ盤では新曲録音という、ちょうどマイルス・デイビスと同じよう活動になっていたようです。

ただしその新作が、決して面白い出来ばかりではありません。同時期ならば、どうしてもライブ、あるいはライブ盤が楽しいのは、万人の認めるところでしょう。このあたりは、どうしてライブで積極的に新曲を演奏しないのか、ちょっと不思議ではありますが、結局、ウケないと判断していたのでしょうか……? なんか勿体無い贅沢だと思います。

さて、このアルバムは、そうした新曲盤のひとつですが、今となっては有名ボサノバ曲「黒いオルフェ」が入っているというお楽しみがあります。

録音は前述のように幾度かのセッションに分かれていますが、それもまた、確証が得られないのが実状です。そしてメンバーはもちろん、ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds) という不動の面々ですが――

A-1 The Sheriff (1963年5月17日録音)
 ジョン・ルイスが書いたアップテンポのオリジナル曲で、テーマ部分の「間」の取り方が如何にも、という仕掛けになっています。
 ところがアドリブパートが物凄く、猛烈な勢いで疾走するミトル・ジャクソンとシャープに絡んでくるジョン・ルイスが見事です。このあたりは厳しいリハーサルの痕跡も覗えますが、これぞMJQという纏まりは流石だと思います。
 そして最後はテンポを落としてジャズそのものを演じるという、サービス精神も良いですねっ♪

A-2 In A Crowd (1964年録音?)
 これもジョン・ルイスのオリジナル曲ですが、やや、メロディにヒネリが足りない感じです。
 しかしアドリブパートでは、まずジョン・ルイスが大健闘! 起伏の無い展開ながら妙に魅了されます。またミルト・ジャクソンは早いテンポながら独自の歌心を全開させ、テーマメロディより素敵なアドリブメロディを出しています。

A-3 Bachianas Brasileiras (1963年5月16日録音)
 バロックとボサノバの楽しい融合とでも申しましょうか、作曲はブラジル人のエイトル・ヴィラ・ロボスですが、アレンジはジョン・ルイスでしょう。ちなみに曲名は「ブラジル風バッハ」です!
 そしてこれは名演ですねっ♪ 一部のスキも無いところに疲れてしまいますが、ミルト・ジャクソンのアドリブは本当にアドリブかどうか、疑わしいほどに完成されています。
 もちろん他の3人のパートも完璧ですからねぇ~♪ 名演としか言えません。もちん名曲でもあります。本当に何度聴いても飽きませんよ♪

A-4 Mean To Me (1963年5月16日録音)
 これは有名スタンダードなんで、テーマが流れた瞬間から和みます。
 もちろんミルト・ジャクソン主導による歌心優先モードで演奏が進行し、緩やかなテーマの提示から小気味良いアドリブパートまで、当にMJQここに有り! という仕上がりです。分かっちゃいるけど止められませんねっ♪

B-1 Natural Affection (1963年5月16日録音)
 録音当時流行していたボサノバを意識して書いたと思われるジョン・ルイスのオリジナル曲で、演奏も涼しいボサビートで展開されていますが、肝心のテーマメロディが物足りません。
 しかしミルト・ジャクソンがアドリブを始めると状況は一変! ソフトな情感が満ち溢れ、さらに情熱的な展開にまでなるのですから、ジャズは素晴らしいです。もちろんテーマメロディよりも素敵なアドリブメロディが、たっぷり出てくるんですから、たまりませんねぇ♪

B-2 Donnie's Theme (1963年5月16日録音)
 パーシー・ヒースのベースが巧みなリードを聞かせる、これもジョン・ルイスのオリジナル曲ですが、これといったテーマメロディが無く、バンド全体の絡みで展開される演奏です。
 となれば、ミルト・ジャクソンが俺に任せろ! という大活躍です。美メロアドリブがビンビン飛び出し、合の手を入れるリズム隊も楽しそう♪
 さらにジョン・ルイスが「間合いの芸術」とまでは行かないものの、それらしいノリで迫ってきますので、憎めません。ある意味、このアルバムでは出色でしょうか。

B-3 Carnival / 黒いオルフェ (1963年録音?)
 そしてお待ちかね、哀愁漂う名曲のメロディを余韻を大切にしながら聞かせるミルト・ジャクソンは、本当の自然体で好感が持てます。コニー・ケイのドラムスも良い感じ♪ アドリブパートでも余計な手出しはしないので、演奏はクールに熱くなり、この曲にして、この演奏有りという決定版になっています。
 ジョン・ルイスの予想外の良さにも目覚めます。

ということで、何故かジョン・ルイスのオリジナル曲が面白くないんですが、演奏は成熟した濃厚なもので、しかもスマートでお洒落です。

そのあたりが物足りないというファンも確かに存在するでしょうが、これはMJQというバンドが持つ宿命でしょう。つまりアドリブも演奏の纏まりも出来すぎなんです。それゆえに安心感もあるんですが……。

ちなみに私が今、聴いてるのは、最近紙ジャケット仕様で発売された日本盤CDですが、これがリマスター最高! アトランティックは必ずしも音の良いレーベルではありませんが、それはアナログレコードの世界だけであって、マスターテープはきちんと作られていたことが分かりますので、オススメです。

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