OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ニッポンの秋にオサリバン

2011-10-31 15:13:04 | Singer Song Writer

Alone Again / Gilbert O'sullivan (MAM / キング)

深まりゆく秋になると妙に聴きたくなるのが、所謂センチメンタルな歌でしょう。

例えば本日ご紹介の「Alone Again」は、まさにジャストミートの1曲じゃないでしょうか。

歌ってるギルバート・オサリバンは掲載ジャケ写からも一目瞭然、なんとも古風なズレ男風のルックス&ファッションが強い印象を残してしまうとおり、この「Alone Again」にしても当時の流行だったハードロックやグラムロック、あるいはシンガーソングライターが好んで使っていたカントリーロックや元祖AORなサウンドとは完全に異なる、言ってみればポール・マッカトニーが十八番にしていたアイルランド風美メロ主義を拡大解釈したような胸キュン志向で、そのゆったりと黄昏が滲んでいくような曲の流れや落ち着いたリズム、また内省的な歌唱法が見事に融合した名曲名演だと思います。

そして実際、1972年には世界中で大ヒット! 今では誰もが一度は聴いたことのある有名曲になっているのですが……。

サイケおやじが特に気になっていたのは、その早口言葉みたいな歌い回しが個人的にはほとんど聞き取れないのに、哀切感滲み過ぎの曲メロに浸っているだけで、せつない気分が増幅されてしまう雰囲気の作り方でした。

もちろんご存じのとおり、この「Alone Again」はなかなか哲学的(?)な歌詞が難解で、自殺とか、神様に見捨てられたとか、世界の不条理を嘆くとか、マザコンとか、そうした様々な人生の悩みを綴った内容らしく、それゆえに「また、ひとりぼっち……」というオチも分かりきっているはずなんですが、それをギルバート・オサリバンという、丸っきり時代にアクセス出来ないような風貌の男が書いて、自らが歌うという「演出」は侮れません。

実はギルバート・オサリバンは、ここで大ブレイクする以前から別人名義でレコードを出していた下積みが長く、またいろんなバンドでドラマーをやっていたとか、かなりの苦労人として過ごした時期から、既に自らのセールスポイントを模索していたと言われています。

で、その中でも一番ウケたのがチャップリンの物真似風ファッションだったそうで、もちろん芸風も影響されたのでしょうか、1970年頃にはノスタルジックな味わいと持ち前の美メロ主義が確立されたところで、イギリスの敏腕プロデューサーとして有名なゴードン・ミルズに認められ、ギルバート・オサリバンとしてデビューした履歴は、その音楽性との関連も無視出来ないと思います。

つまり温故知新のイメージがキワモノ寸前に演出されたのと同じく、ギルバート・オサリバンとしての歌には、当時の人々が忘れかけていた「ぬくもり」ようなものが感じられるんですよねぇ~♪

もちろん、それはイギリスだとか日本だとか、そういう風土風習に左右されない人間味に裏打ちされていると思います。

しかし結果的にアメリカでは、この「Alone Again」だけが突出してヒットした後、ある種のギミック歌手としての受け取られ方が大きいのは、これ如何に!?

ポール・マッカートニーやエルトン・ジョンが本国イギリス以上にアメリカでウケしていた同時期の成果を知るにつけ、やはりギルバート・オサリバンの「演出」はイヤミだったのでしょうか……。

それでも我国では根強い人気が今も継続していますし、その裏側でイギリス国内におけるマネージメントとの確執から裁判沙汰が長引き、音楽活動が儘ならなかった現実は哀しいですねぇ。

なにしろオリジナルアルバムの復刻にしても、これがきっちり上手く進まず、まあ、これは英米日のリアルタイムで発売されたLPの選曲が異なっていた所為もあるかもしれませんが、「Alone Again」以外にも多いヒット曲、そして琴線にふれまくる名曲がどっさりあるのですから、今に至るも納得出来るアンソロジーすら編まれていないのは酷い仕打ちだと思います。

ただしギルバート・オサリバン本人は日本贔屓らしく、CMへの楽曲使用や来日公演にも好意的ですから、その決定版が出せるのは我国だけじゃないでしょうか!?

これまた熱望してやみません。

コメント
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