OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

エジソン・ライトハウスの悠久

2011-10-28 15:58:21 | Pops

恋のほのお / Edison Lighthoues (Bell / CBSソニー)

ラジオが未だ大きな力を持っていた1970年代には、とにかくストレートに聴覚へ訴える素敵な歌や演奏が必要とされていましたから、必然的に良いメロディや歌詞を書ける職業作家、そしてイヤミの無い個性を持った歌手や演奏家の大きな需要がありました。

つまり所謂「バブルガムサウンド」の類似として、サッと覚えて、スゥゥ~と忘れられながら、実は何時までも心に残るシングルヒットが求められ、それを狙った業界の動きも現代と比較すれば、特に活発化していた時期だったと思います。

このあたりの事情は、以前にホワイト・プレインズの「恋に恋して / My Baby Loves Lovin'」でも書いたとおりなんですが、他にもそうした歌の代表格として、永遠の傑作シングル曲となっているのが、我国でも昭和45(1970)年に驚異的に大ヒットした本日ご紹介の「恋のほのお / Love Grows」です。

とにかくイントロから低音弾きのギターによるビート効いたシンプルなフレーズが次の瞬間、グッと重心の低いドラムスとベース、さらには重層的なストリングによって増幅されるという、憎らしいほどキャッチーな仕掛に耳を奪われてしまいますし、曲メロの嬉しい予感の展開にはウキウキ感を抑えきれません♪♪~♪

しかもサビでは、これ以上無いという高揚感が煽られるんですから、これがヒットしなかったら世の中は終りですよねぇ~~♪

そして実際、ラジオ各局の洋楽チャート番組ではトップを独走し、これは欧米でも同じ状況の中、レコードの売り上げも抜群の実績を残した事は言うまでもありません。

こうして演じているエジソン・ライトハウスというイギリスのバンドは忽ち注目されたわけですが、結論から言えば、このデビューヒット「恋のほのお / Love Grows」が制作された時点では、所謂「実態の無いバンド」であった事が、今日では堂々の真実です。

それは有能なソングライターであり、また敏腕プロデューサーでもあったトニー・マコウレイが業界の需要を満たすべく企画したプロジェクトであり、セッションプレイヤーを動員して作った演奏パートをバックに歌っているのは、トニー・マコウレイとは因縁浅からぬトニー・バロウズ!

というか、当時のトニー・バロウズはちょうど前述したホワイト・ブレインズ名義の「恋に恋して / My Baby Loves Lovin'」を歌い、その「声」と「節回しの上手さ」が広く世界に知られた頃ですから、セッションボーカリストとしてもノリにノッていた時期だったと思います。

ですから、同系のスタジオの仕事として、トニー・マコウレイからの誘いにも躊躇が無かったんじゃないでしょうか。

そして狙いどおりの大ヒットを成し遂げた後、いよいよ実体化したエジソン・ライトハウスのメンバーはトニー・バロウズ(vo)、スチュアート・エドワーズ(g)、レイ・ドーレイ(g,vo)、デヴィッド・テイラー(b)、ジョージ・ウェイマン(ds) と公表され、掲載したピクチャースリーヴに写るのが、その5人と思われますが、既に日本盤裏ジャケの解説にはトニー・バロウズに関して、「エジソン・ライトハウスへの参加も単にセッション・マンとして、と発表しています」なぁ~んていう記述があるほどです。

つまり最初っからトニー・バロウズという優れたボーカリストの「声の魅力」で、この「恋のほのお / Love Grows」が大ヒットしたという現実を否定していないんですねぇ~~!?

さらに当時は日本ばかりか、世界中のポップスマーケットで、エジソン・ライトハウスとトニー・バロウズのソロ名義のシングル盤が乱立して発売されるという異常事態!

当然ながらプロデュースは両方共、ほとんどがトニー・マコウレイの担当でした。

ちなみに手持ちのレコードを漁ってみると、トニー・バロウズが参加したエジソン・ライトハウスのシングル曲としては、同バンドの第二弾「恋のテクニック / She Works In A Woman's Way」やホワイト・ブレインズの大ヒットをカパーした「恋に恋して / My Baby Loves Lovin'」があったんですが、リアルタイムでのエジソン・ライトハウスはトニー・バロウズ抜きの4人組として活動を続行! 翌年には「恋するペテューラ / It's Up To You Petula」を出していますが、制作からはトニー・マコウレイも撤退し、実質的に歌っているのはレイ・ドーレイだと言われています。

ただし、このあたりの逸話は、あくまでもレコードに付属の解説によるものであり、後にいろいろと出された復刻盤には、他のボーカリストの名前も出てきます。

というように、結局はエジソン・ライトハウスもバンドしての結束した集合体というよりも、メンバーが常に流動的な企画グループとしての本質が継続されていたのでしょう。

なんとっ! 日本でも昭和46(1971)年に流行った「涙のハプニング / What's Happening」でリードを歌っているのは、後に「秋はひとりぼっち / Forever Autumn」のヒットで有名になるヴィグラスとオズボーンのポール・ヴィグラスというのが定説です。

そしてエジソン・ライトハウスとしての日本盤ベストアルバムが出たのも、ちょうどこの頃だったんですが、その私有盤を確認したところ、収録曲は必ずしもエジソン・ライトハウス名義のトラックばかりではなく、トニー・バロウズがソロ名義でヒットさせた「いとしのメラニー / Melanie Makes Me Smile」や「僕のアイドル / Every Little Move She Makes」、そしておそらくは未発表となっていた楽曲も含まれた内容は意味深だと思います。

実は同時期、「エジソン・ライトハウス」は「エジソン」と改名し、レイ・ドーレイ(vo,g)、ジョン・リー(g)、デヴィッド・テイラー(b)、ジョージ・ウェイマン(ds) の4人組でシングル盤を出しているのですから!?

このあたりの経緯の複雑さは、マネージメント絡みであろう事は容易に推察出来ると思います。

と言うのも、今では我国も同様ではありますが、欧米では古くから芸名やバンド名は契約マネージメント側の権利も大きく、それゆえに同じグループ名の別バンドが各地に存在していたり、レコードの発売や興業にしても、堂々とそれが通用していたのも合法的な不思議のひとつという、なにか非常に割り切れないものがありますよねぇ。

そこでエジソン・ライトハウスのメンバー変遷につして、前述「涙のハプニング / What's Happening」の日本盤シングル裏ジャケ解説から引用すると、そこまでに三期のメンバー編成があったとされています。

 ※第一期
  トニー・バロウズ(vo)、スチュアート・エドワーズ(g)、レイ・ドーレイ(g)
  デヴィッド・テイラー(b)、ジョージ・ウェイマン(ds)
    「恋のほのお」「恋のテクニック」等々。

 ※第二期
  ポール・ヴィグラス(vo)、スチュアート・エドワーズ(g)、レイ・ドーレイ(g)
  デヴィッド・テイラー(b)、ジョージ・ウェイマン(ds)
    「恋するペテューラ」等々。

 ※第三期:エジソン
  レイ・ドーレイ(g,vo)、ジョン・リー(g)
  デヴィッド・テイラー(b)、ジョージ・ウェイマン(ds)

 ※第三期:エジソン・ライトハウス No.3
  ポール・ヴィグラス(vo)、アンディ・ロック(g)、ワーリー・スコット(g)
  デヴィッド・クリームソン(b)、エディ・リチャード(ds)
     「涙のハプニング」等々。

という事らしいんですが、第三期で分裂した時、「エジソン・ライトハウス No.3」はトニー・マコウレイから許可をもらったという記述もありますから、このあたりは「暖簾分け」の本家争いみたいな気もしていますし、実際、エジソンはレコード会社も新たにフィリップスと契約していたようです。

以上、エジソン・ライトハウスについて、サイケおやじが知りうるところを書いてみましたが、このプロジェクトが成功したのはトニー・マコウレイの他にもクリス・アーノルドやゲオフ・マーロウ、さらにはロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイといったソングライター達が縁の下の力持ち以上の働きをしていた事実を無視出来ません。

ただし一方、今日ではそうした要点ばかりが重要視されるのも個人的には納得出来ないところで、やはり実際に歌っていたボーカリストの「声」や「節回し」を素直に楽しむ事も大切なんでしょうねぇ。

特に最初の一撃となった「恋のほのお / Love Grows」は、曲やアレンジの素晴らしさと共にボーカリストとしてのトニー・バロウズを堪能出来るわけですからっ!

出会った瞬間のトキメキが何時までも続く永遠のスタンダードヒットとして、決して忘れられることは無いと信じているのでした。

コメント (9)
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