OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

チヨの奴隷

2009-09-15 11:52:53 | 歌謡曲

恋の奴隷 / 奥村チヨ (東芝)

今も昔もフェロモン歌謡の最高峰と言えば、奥村チヨに決まっています!

皆様もご存じのとおり、彼女の代表作といえば「ごめんネジロー」「北国の青い空」、そして本日ご紹介の「恋の奴隷」の3大ヒットに加えて、「終着駅」というのが当然の帰結ですが、他に隠れ名曲や名唱がどっさりあって、それはカパー曲だったり、LPに収録のオリジナルだったり、本当に熱に浮かされたように蒐集する楽しみが尽きません。

しかし、やはり基本は「恋の奴隷」でしょうねぇ~♪

発売は昭和44(1969)年5月、その甘くてネチネチとした「チヨ節」によって、忽ちの大ヒットになりましたが、それ以前の彼女の芸歴を振り返れば、やはりターニングポイントの1曲だったと思います。

というのは、奥村チヨはデビュー当時、「和製シルビー・バルタン」のウリで、セクシー系清純派という、些か曖昧模糊とした存在だったようです。それが昭和40(1965)年にデビューした頃のイメージでしょう。実際、サイケおやじがテレビで接した彼女は、カパーポップスを歌っていたと、当時の日記に書いてあるほどです。

しかしそれから間もなく発売した「ごめんネジロー」が、もうネチネチとした女のいやらしさを寸止めの魅力で巧みに歌いこなした奥村チヨの初ヒット♪♪~♪

ところが再び清純派とお色気路線を往復しながら、次の大ヒットとなった「北国の青い空」まで、2年ほどの回り道をするのです……。

これはあくまでも私の勝手な推察ですが、前述の「ごめんネジロー」は当時のテレビやラジオで披露されるには、あまりにもお茶の間が気まずい雰囲気でしたから、もう少し正統派に拘るのも無理からんところかもしれません。

しかし彼女のボーカルスタイルは決して変わったわけではなく、何を歌っても粘っこいセクシーさが滲み出る芸風は唯一無二♪♪~♪ 所謂ベンチャーズ歌謡の名曲「北国の青い空」にしても、哀愁とせつない女心を歌っていながら、決して清純派とは言い難い刹那の魅力があってこその、大ヒットでしょう。他の女性歌手では、ここまでストレートに表現出来ない味わいが、大いに好ましいのです。

そして真打ともいえる「恋の奴隷」は、悪い時は、どうぞ、ぶってね、あなた好みの女になりたい、だなんて、ここまで言われて、その気にならない男はどうかしている! それほどモロな歌詞を真っ向から歌ってしまう奥村チヨは偉大です。たとえそこに女の執拗な計算が働いていたとしても、自分から足をからませてくるが如き歌いっぷりは、拒否も否定も出来ない魅力があるのです。

まあ、リアルタイムでは彼女の衣装やアクションから、少年でも感じるほどに大袈裟なフェロモンが溢れていましたから、それでお茶の間が気まずかったのは確かなんですが、それは別の話でしょう。SM歌謡なんていう評価も、同列じゃないでしょうか。確かに彼女のような奴隷がいれば、最高なんですけどねぇ~♪

な~んて、断言してしまいましたが、小悪魔とかコケティッシュとか形容される彼女の魅力は、どんな歌を演じても、既に述べた「チヨ節」が打ち消せるものではありません。

以降、堂々と「チヨ節」を全開させた彼女はヒットを連発し、そのひとつの頂点が「終着駅」のアンニュイな世界だったというのは、とても奥深いと思います。

ちなみに曲メロは正統派歌謡曲なんですが、アレンジはブラス&ホーンが当時流行のバカラック調ですし、隙間の多いリズムギターと軽快なドラムスに重いビートのエレキベースという、この頃の東芝サウンドがジャストミート♪♪~♪

近年は国家的な問題とさえ言われるセックスレス現象も、男の責任回避と「その気」にさせない女の態度が半々とはいえ、この歌に表現される願望の魅惑的な瞬間があってこそ、人の世の幸せを実感出来るのかもしれません。

思わず目を逸らしながら、実は凝視したくなるジャケットも最高ですし、これはやっぱり昭和歌謡曲のひとつの姿を象徴した名唱名演だと思います。

コメント (2)
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