OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジミヘン・ファンキーなアイズリー

2009-09-06 12:32:51 | Soul

The Isleys Live (T-Neck)

最初にアイズリー・ブラザーズを知ったのは何時頃だったのか、ちょっと明確ではありません。ただ、ビートルズで有名な「Twist & Shout」のオリジナルバージョンを演じていたのが、この黒人兄弟グループだったという事は知っていました。

それを教えてくれたのは、他ならぬジミ・ヘンドリックスのレコード付属解説書だったんですが、それというのも、ジミヘンは下積み時代にアイズリー・ブラザーズのバックバンドのメンバーとして、巡業はもちろんの事、普段から彼等の家に下宿していたほどの間柄だったとか!

そしてジミヘンが大スタアになった後には、その頃の録音を集めたアイズリー・ブラザーズ名義のアルバムまでが、ジミヘンをウリにして発売されたほどです。

しかし我国でアイズリー・ブラザーズがリアルタイムで人気があったかと言えば、それは疑問です。少なくとも、私がアイズリー・ブラザーズを強く意識したのは、昭和49(1974)年以降の事です。

以前にも書きましたが、私は幸運にもこの年、3ヵ月ほどアメリカへ行くことが出来ました。そこでは後の私の趣味嗜好に多大な影響を受けた様々な事象に出会ったのですが、本日の主役たるアイズリー・ブラザーズとの出会いも、そのひとつでした。

それはラジオから流れてきたアイズリー・ブラザーズのライプ演奏で、これは途中から聴いたので、最初はアイズリー・ブラザーズと知る由もなかったのですが、そこで大暴れするギターが非常にジミヘンしていました。

で、途中から、これはアイズリー・ブラザーズの演奏だとラジオのDJから告知されるのですが、その瞬間、これは絶対ジミヘンがバックをやっていた頃の音源!?! と直感したのです。

しかし、それは大間違いでした。

と言うよりも、演じられている音楽そのものが、明らかにジミヘンが存命中の大衆音楽とは違っています。R&Bでも無し、ロックでも無し、まあ、それはジミヘンがやっていたことではありますが……。

正解はアイズリー・ブラザーズが当時の最先端を行くファンキーソウルを披露した、本日ご紹介のライプ盤だったのです。

 A-1 Work To Do
 A-2 It's Too Late
 B-1 It's Your Thing
 B-2 Pop That Thang
 B-3 Love The One You're With
 C-1 Lay Lady Lay
 C-2 Lay Away
 D-1 Ohio
 D-2 Machine Gun

まず特筆されるのは、演奏そのものがR&Bやソウルミュージックには「お約束」のホーンセクションを使っていないということです。しかも大胆にロックのグルーヴを取り入れ、それはサイケデリックとかニューロック、あるいはハードロックという範疇で語ることも可能な、極端に言えば白人音楽に近いものがあるのです。

そして演目も、キャロル・キングの「It's Too Late」やボブ・ディランの「Lay Lady Lay」、さらにCSN&Yの「Love The One You're With」や「Ohio」という、如何にもの選曲になっていますから、演奏は推して知るべし!

録音と発売は1973年、当時のアイズリー・ブラザーズはオーケリー、ルドルフ、ロナルドの3人がフロントのボーカル担当で、もちろん1950年代から活動を継続してきた実の兄弟ですが、ここではさらにアーニー(g) とマーヴィン(b) という弟2人、そして従兄弟のクリス・ジャスパー(p,key) を加えてファミリーの絆を強め、他にカール・ポッター(per,ds)、ネイル・バース(ds,per) をサポートに迎え入れてのファンキーロック大会が披露されています。

そして言うまでもなく、アニー・アイズリーのギターが完全にジミヘンしているんですねぇ。

ちなみにアイズリー・ブラザーズは既に述べたように、1950年代から活動しているわけですが、その時代の流れの中で、正統派R&Bの「Shout」や「Twist & Shout」といった大ヒットを出しつつ、様々な弱小レーベルを渡り歩き、1960年代中頃にはモータウンに在籍し、ロッド・スチュワートにカパーされた「This Old Heart Of Mine」を出しているのは一際有名でしょう。

しかし、それで潔しとしないのが、アイズリー・ブラザーズのしぶとさ! 自らが設立していた制作会社のTネックをフルに稼働させ始めたのが1969年で、いきなりファンキーど真ん中の「It's Your Thing」という特大ヒットを放ちますが、もちろん我国では知る人ぞ知る……。

反面、アメリカ本国では大変な人気を呼び、この頃から前述の弟&従兄弟を加えた6人組+サポートメンバーというレギュラーバンド形態が確立したようです。

その音楽性は、ジェームス・ブラウンを開祖とするR&Bファンクを更にハードロックで色付けしたものと言っては極端でしょうが、このロック色というのが、実は大きな魅力です。実際、我国で意味不明のブームとして広まった「フリーソウル」なんていう分野では、この当時に残されたアイズリー・ブラザーズのスタジオ録音盤が人気を集めたわけですが……。

そこで本日ご紹介のライプ盤は、その極みつきが堪能出来るとうわけです。

まずド頭の「Work To Do」はピアノのイントロからして山下達郎状態! というよりも、実は逆なんですが、このライプ盤が大好きだった山下達郎が自らのライプを作る時にお手本としたのが、このアルバムだったというのは有名なエピソードらしいですね。もちろんアイズリー・ブラザーズの熱気に満ちた歌と演奏は最高なんですが、これとて、実は露払いにすぎません。

続く「It's Too Late」はお馴染みのキャロル・キングのメロディを粘っこく、スローファンクに仕立上げていくバンドのグルーヴが心地良く、甘いコーラスと情熱のボーカルに加えて、コンガが絶妙のアクセントを提供しています。そしてお待たせしました! アーニーのジミヘン系ギターが強烈に炸裂する展開には歓喜悶絶♪♪~♪ 独得の間合いで蠢くエレキベースもシンプルに良い感じですし、ピアノがこれまた味わい深いですよ。実は私が最初に聴いたのが、このパートでした。

さらにB面に入ってはファンキーロックの火花が飛び散る「It's Your Thing」と「Pop That Thang」の同系演奏2連発! ヘヴィで粘っこいロックビートが単なるファンクを超越せんとする勢いが全く熱いのですが、それを爽快な気分に転換させてくれるのが、スティーブン・スティルスでお馴染みの「Love The One You're With」ですから、たまりません。もちろん、あの楽しく弾むようなリズムとラテンビートの融合が、ここでは熱血ファンクへと結実していますし、一緒に歌えるコーラスは「お約束」の楽しさでしょう。

そしてC面は、そうしたロック味を引き継ぎながら、メロウソウル仕立の「Lay Lady Lay」が、なかなかに和みますよ。ただし続く「Lay Away」は正統派すぎて、些か暑苦しいというご意見もございますが、しかしアーニーのギターは、もう最高♪♪~♪

こうして迎えるD面は、文句無しの大団円!

ニール・ヤングの「Ohio」にジミヘンの「Machine Gun」という、ベトナム戦争所縁の名曲メドレー! 大胆なソウルフィーリングでフェイクしまくったボーカルが熱すぎる前半、そこに炸裂するアーニーの爆発的なジミヘンギター!

あぁ、何度聴いても興奮します!

おまけに後半では、ジミヘンもどきの真骨頂となる「Machine Gun」がゴッタ煮されますからねぇ~♪ 当然ながらエレキギターで作り出される機銃掃射の擬音は、ドラムスやベースと激しく呼応し、さらに熱いボーカル&コーラスを煽るのです。また最後の最後では、ジミヘンに捧げる独白の如きギターパートも用意されていますよ。

ちなみにアーニーが、どうしてこうもまたジミヘンなのか!?

これは私の勝手な妄想なんですが、おそらくは子供の頃から自宅に下宿していたジミヘンに、それこそ間近に接していた影響が必ずあると思います。

ということで、これもサイケおやじの愛聴盤のひとつです。ただしちょいと録音がモコモコというか、おそらく狭い会場での録音だったのでしょう。音が回りきった状態なのが、昔っから賛否両論でした。

しかしそれゆえに尚更の熱気が充満した雰囲気というか、前述したように、あえてそれを大切してしまう山下達郎のような追従者もいるわけで、このあたりは聴いてからの十人十色でしょうね。

現在ではCD化もされているようですから、ぜひっ!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする