OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ここ一番のブライアン・オーガー

2009-09-04 11:08:57 | Rock Jazz

Second Wind / Brian Auger's Oblivion Express (Ghost Town / Polydor)

ジャズロックとロックジャズが、どう違うのか?

その議論からはひとまず逃げながらも、私は初期イエス、初期スティーリー・ダン、ジョン・マクラフリン、ジェフ・ペック……等々と並んで、いや、もしかしたら中でも一番好きなミュージシャンがブライアン・オーガーかもしれません。

キャリアのスタートはR&Bやモダンジャズというオルガン&ピアノ奏者ですが、イギリスという土地柄ゆえでしょうか、次第にブルースロックからソウルジャズに傾倒! ついに1967年になって自己のバンドを結成し、そのトリニティ名義で「オープン」という隠れ名盤を出しています。

しかし、この人は愚直なまでに頑固な生き様というか、決して世渡りは上手くないようですねぇ……。

イギリスや欧州では相当な力を持っていたマネージメントのジョルジオ・ゴメルスキーとの関係も上手くいかず、それは自分の道か、お金への執着かという二者択一とはいえ、その一途な情熱が、残された作品群に顕著に感じられるのは確かです。

つまり売れなくとも、好きな人には、たまらなく好きになるしかない! そんな演奏ばっかりなんですよ。

さて、本日ご紹介のアルバムは、ブライアン・オーガーが前述したジョルジオ・ゴメルスキーと別れ、独力で結成したオプリヴィオン・エクスプレスという新バンド名義の3作目ですが、発売された1972年当時としては最高にハードでカッコ良すぎるロックジャズが満載♪♪~♪ 前2作にあった迷いが見事に払拭された名盤だと思います。

メンバーはブライアン・オーガー(p,el-p,org) 以下、アレックス・リジャーウッド(vo,per)、ジム・ミュレン(g)、バリー・ディーン(b)、ロビー・マッキントッシ(ds) という、今でもちょいと無名に近い面々ですが、その腕前は強靭無比!

A-1 Truth
 重いビートとキメまくりのリフ、随所に仕掛けられた罠を潜り抜けて披露される演奏は、強靭なグルーヴとロックだけが持つ爽快感に満ちています。作者の強みを活かしたアレックス・リジャーウッドのボーカルも、実に熱いですよ。
 う~ん、しかしこれは、最初に聴いた時から唸ってしまったんですが、曲の構成やキメが、前年に発売されたジェフ・ペックのリーダー盤「ラフ・アンド・レディ(Epic)」に収録の「Situation」に、丸っきりのそのまんま!?! もちろん歌詞は変えてあるんですが、実はアレックス・リジャーウッドは、そのジェフ・ペックのアルバムセッションに最初は参加しながら、ソリが合わずに追い出されたと言われています。そうした経緯から、「Situation」はジェフ・ペックが書いた曲ということになっていますが、ご存じのように、ジェフ・ペックは曲が作れない有名ロックスタアの筆頭ですからねぇ……。何となく裏事情が読めてきそうな感じですし、曲タイトルも意味深!?!
 まあ、それはそれとして、とにかくここでの熱気溢れる演奏は圧巻!
 言ってはならないとは思いますが、ジェフ・ペックの「Situation」と比較しても、こちらが好きな皆様も多いんじゃないでしょうか。
 ジム・ミュレンの白熱のギター、ブライアン・オーガーのエキセントリックなオルガンとモード節が出まくったピアノのアドリブ! ヘヴィなビートを提供するベースとドラムスのコンビネーションも最高ですが、中でもハードロックがど真ん中の大嵐から、ブライアン・オーガーがピアノで見事なモダンジャズへと場面転換を演じる瞬間は、ゾクゾクして感涙悶絶♪♪~♪ ロックジャズを聴く喜びに満ちていると思います。 

A-2 Don't Look Away
 ファンキーフュージョンのブリティッシュロック的な展開とでも申しましょうか、歯切れの良いファンクビートに抑揚の無い曲メロ、さらに怖いキメを多用したブライアン・オーガーのエレピが、極めてジャズっぽいアドリブを披露しています。
 このあたりの無機質なグルーヴは、完全に同時代ではクロスオーバーと呼ばれたフュージョン前期のモデルケースのひとつだと思います。何よりもバンドとしての一体感が最高ですね♪♪~♪
 ちょっと聴きには馴染めない演奏かもしれませんが、中毒症状は必至でしょう。

A-3 Somebody Help Us
 これは初期スティーリー・ダンを更にハードした雰囲気が濃厚!
 アップテンポで痛快なリズムギターを聞かせてくれるジム・ミュレンは、井上バンドの「太陽にほえろ!」ですよっ。思わずニヤリとする皆様が、きっといるはずです。
 そしてアレックス・リジャーウッドは、この曲調では、当然ながらドナルド・フェイゲン風になるのですが、ここぞっ、での熱血シャウトは、やはり一味違います。
 また、それに追い撃ちをかけるのが、ブライアン・オーガーの激走するオルガンアドリブ♪♪~♪ このスピード感、実にたまらんですねぇ~♪

B-1 Freedom Jazz Dance
 さてさて、これはタイトルからしてもご推察のとおり、エディ・ハリスが畢生の名曲に独自の歌詞が付けられた人気演奏♪♪~♪ モダンジャズではフィル・ウッズやマイルス・デイビス……等々、有名なバージョンが数多残されていますが、ロックジャズではブライアン・オーガーを外すわけにはいきません。
 実際、ハードロックなボーカルとファンクビート主体の演奏パートが、ジワジワとリスナーを興奮させてくれる、その高揚感がクセになります。ミディアムテンポで深みのあるリズム、またビートのヘヴィな躍動感は、決して一筋縄ではいきませんが、安直な快楽主義に走らないブライアン・オーガーの頑固な姿勢が、そのまんまの凄みになっているようです。

B-2 Just You Just Me
 これまたアップテンポのファンキーロックで、いきなり緊張感を撒き散らすギター、刹那的なボーカルが曲メロを愚直に歌う背後からは、バンドの陰湿な思惑が滲んできます。しかし、これが実に心地良いですねぇ~♪
 そのフィール・ソー・グッドな時間を提供してくれるのが、ブライアン・オーガーのエレピという仕掛けがニクイばかり♪♪~♪ ただし、それとて快楽主義を優先させているわけではありません。あくまでもハードなグルーヴを追及しつつ、人生「苦」もありゃ、なんとやら♪♪~♪
 こういう、そこはかとないロックジャズのソウル風味こそが、このバンドの特異体質かもしれませんね。私は好きです。

B-3 Second Wind
 アルバムタイトル曲はプログレ風味も強いゴスペルフュージョンのヘヴィロック!
 と、例によって回りくどい表現しか出来ませんが、勿体ぷった中にもジワジワと表出してくるストレートな熱気が良い感じです。ただし一抹の重苦しさが、賛否両論でしょうねぇ……。

ということで、当時のブライアン・オーガーは経済的に相当に苦しかったと言われています。なにしろ巡業移動の交通費にも事欠き、レコーディングでは借金だらけ……。このあたりは弱小のプロレス団体のようですが、しかし何時だって手抜きをしない姿勢は、ようやくこの頃になって認められ、このアルバムも真っ当な売れ行きを示したそうです。

実際、私はこのアルバムによって、ますますブライアン・オーガーのロックジャズ天国へと導かれ、コンプリート収集の道を模索し始めたのです。

しかし現実はやはり厳しく、ようやく売れかけたバンドからはジム・ミュレンとロビー・マッキントッシが去ってしまい、ここで聞かれた熱血のロックジャズは、二度と再現されることがありませんでした……。

ちなみにロビー・マッキントッシは直後にアベレージ・ホワイト・バンドの結成に参加しているとおり、もっとソウルファンク的な演奏がやりたかったのかもしれません。

その意味ではブライアン・オーガーも、続くレコーディングでは黒人系のグルーヴを旗幟鮮明に追及していくのですが、個人的にはそれも好きとはいえ、だんだんと普通のフュージョンになっていたったのは残念……。

やはりロックジャズを演じているブライアン・オーガーが、一番好きなのでした。

近年はCD化もされておりますので、ぜひともお楽しみ下さいませ。特にA面ド頭の「Truth」は必聴ですよ。

コメント (4)
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