めったにないことだが、日本酒で晩酌をした。例の「津月」だ。あの日、帰る早々まず四合瓶を二つ準備し、空気の入る隙間のないほど一杯に詰めてフタをしておいた。これでひとまず、この2本は封切の味を楽しめるだろう。そして残った底の1合ほどを頂いた。もうあの時ほどの感激を味わうことはできなかった。それは酸化による影響もあるし、あの場の雰囲気と違うこともあるだろう。そうやって、いつもより長くなった夕食が幸いして、ニュースで人事異動を知った。「あれ、トシちゃんじゃない?」と妻が言った。それは市内の進学校の校長だった。若くして赴任したエリートの彼氏に、最南端の学校で私より先に出会っていたのだ。妻は臨時職員の産休補助として、そこに勤めていた。数か月後、私が赴任して、今のような状況に至っていることになるのだが、トシちゃんは背も高くハンサムで、皆に可愛がられていた。今になって共通の知人のことで盛り上がれるとは思わなかった。もう一つの伝統校には、やはり南の方で官舎に入る際立ち合って、その後何かと世話になった有能な先生がご栄転された。あらゆる酒の中で、日本酒の酔い方が一番気持ちがいい。現場を離れて、客観的に見る人事異動は正直楽しかった。「えーっ、こんな、なったの?」あのね、向こうもあんたを見たらビックリするわ。これでも映りのいい写真を登録されているはずだ。自分を棚に上げて、若い頃のイメージを重ねる、身勝手な妻に代わりお詫び申し上げます。トシちゃん、ごめんなさい。
第1話、第2話、と追って、ここまで来たんだけど。
だいぶ掬って取ったんだけど、、しょっぱいかなあ~~?