朝、外へ出ると、この態勢で我が家を見る彼女が居た。たまたま今日はカメラをぶら下げていたので、「おう、おはよう」と言って1枚撮った。名字だけは聞いたが、それ以外のことは分からない。どこに行っているかも聞かないし、何をしているかも知らない。ただ、朝乗って来る電車の時間と、帰りの時間は知っている。
もう5年になると思う。新築したばかりのお向かいさんの駐車場で、長い事ネコと遊んでいるのが最初の印象だった。その日はいつ出て行ってもそこに居るのだった。座り込んで、慈しみを込めてネコを抱いている。半日かそれ以上、そこに居たと思う。
今思えば、仕事場に行くのが苦痛で、職場まで行けなかったのだろうと想像する。多分、精神的に障害のある人を復帰させるための事業所に、通っているんだと思う。そういう事業所は金足農業の方向にあるし、そういう人たちが通っていく時間帯がある。
で、彼女はネコが好きだから、必然的にうちのネコにも反応して、通りすがりに見つけると可愛がっていくようになった。朝は時間が気になって、ゆっくりできないが、帰りは時間に余裕があればサスケと戯れていく。
オレのことは眼中にないかもしれないが、丁寧な挨拶は欠かさない。礼儀正しい。ぺこんとお辞儀する。遠くから手を振ると、手を振って返す。金曜日は「おう、終わったか」と声を掛ける。すると軽くうなづく。「また、来週だね」と言うと、「はい」と言って去る。
いつもの時間になっても現れないと、気になって道路に出て、駅の方まで覗いてみる。彼女は見えないが、同僚らしき人物はバラバラと通っていく。その中にもう一人、若い女性がいる。この方はやはり、頭を下げると、頭を下げて返す。そういう雰囲気まで回復した。この前までは、不審の目で見られていた。
というのは、最初に見たその子は、笑顔でルンルンで職場に向かう子だった。あまり楽しそうに歩くので、なんて不思議な子だろうと思っていた。何年もして、思い切って「おはよう」と声を掛けた。すると態度が一変、一気に警戒されて、あの雰囲気が無くなってしまった。うえ~ん、悪気は無かったのに~。その子にも悪いことをした。せっかく楽しい通勤路を警戒区域にしちまった。
今は、分かってくれたみたい。「あ、また彼女のこと気にしてる」とか思っているかもな。そう思われてもいいさ。これを公開するのも、そのためさ。これで間違いは、起こらないだろう。
今は、分かってくれたみたい。「あ、また彼女のこと気にしてる」とか思っているかもな。そう思われてもいいさ。これを公開するのも、そのためさ。これで間違いは、起こらないだろう。