照ノ富士は、インテリだった。数学頭で飛び級もした。それでも格闘技が好きで、この道を選んだ。
飛ぶ鳥を落とす勢いで上がってきた頃は、ホジナシだった。とにかく早く天辺まで上がりたかった。モンゴルは概してそうだ。卑怯な手も使う。
それが下に居る間に「ホジ」を身に着けた。ホジとは本地。仏教でいう本来の姿。
おのれの感情のままに、態度に出す、体が反応する。そうなる前に一度、引き出しにしまい込み、振り返る。
インタビューでの意外なほどの冷静さは、そういう悟りの境地に達したことを示していた。
勝った直後のインタビューでは、表情に出そうな場面があった。多分、つらい日々の事が一瞬、頭をよぎったのだろう。しかし言葉は別の事を言ったし、涙にもならなかった。
上位と当たるまでは、用心深く膝を意識して、前に出る相撲を磨くんだろう。だがすばしこい力士と小型・軽量の力士が、うじゃうじゃいるから、注意した方がいい。
彼らをうまく料理するところを、これからは楽しみに見ていきたいと思う。
ガントルガ・ガンエルデネ。やるでねが。