羽生君が最初の4回転で転んだ時、「やったあ」と思いました。それは中継するテレビ局に対してだし、世界最高更新を期待する全員に対してです。おまえらどこまで追い詰めれば、気が済むんだ。羽生君は、そんなことでは自分を追い込むタイプではないが、既に神の領域まで到達している選手に対してそこまで望むとは。
だからあの1発目のジャンプで、ああこれであのセリフは封殺した、と喜んだのです。あのセリフとは、言うまでもなく「世界最高得点更新」のことです。
それに引きかえ、宇野君のスケートは凄いと思います。97.94点ですよ。しかも満足していない。前回のグランプリファイナルでも、満足していませんでした。それはどこかと言うと、表現力なのです。多分、テクニックに集中するあまり、手足の動きが曲と一体になっている感覚がないのだと思います。わしらシロウトには分かりませんが、しかし技と技のつなぎの部分だとか、ジャンプを単純に踏み切っていないところだとか、目を離すと見逃してしまいそうな細かい所まで魅せるスケートなんだと思います。4回転の着地をこらえた部分、足首の柔らかさが出たのでしょう。ああいう天性のものが、彼は持っているように思います。羽生君は、血がにじむような努力をしてきたと、自分で言うくらいですから、天才ではありません。一方で宇野君は、もしかすると羽生を上回る才能を持っているのかも知れないと思っています。
どこまで伸びるんだ、のセリフは宇野君にこそ使うべき言葉だと思います。
しかし宇野君は、公式の場でも「羽生君」「真央ちゃん」と友達のように言います。幼い頃から一緒に滑ってきたお兄ちゃん、お姉ちゃんなのに。うっかり出るほど、慕っているのでしょう。
きょうの真央ちゃんには、一切期待していません。むしろバッタリ転ぶところを見たいです。何のためのブランクだったのか。彼女は競技向きの性格ではないと思います。これだけぼろくそ言っておけば、案外いい点数が出るかも。