日本でも大ヒットした「最強の二人」(2011年)の、エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ両監督によるオリジナル新作コメディだ。
フランスの結婚式を題材に、そのプロデュースを担当する裏方や、新郎新婦の人間模様を描いている。
夕方から飲んで踊って騒いで、明け方まで続く披露宴の華やかさだ。
これは、フランス人の人生哲学に貫かれた、一種の人間讃歌である。
ドタバタ喜劇と言ってしまえばそれまでだが、移民、不法就労、といった近年フランスの抱える社会問題を取り上げてドラマに盛り込んでいる。
多国籍国家のフランスの内情も理解できる。
まあ、大いなる黒い笑いも満載の、群像コメディとして楽しめればよいではないか。
ウェディングプランナーのマックス(ジャン=ピエール・バクリ)は、30年間も結婚式のプロデュースをしてきたが、そろそろ自分の引退を考えているところだった。
そんなとき、17世紀に建てられた城を舞台にした、豪華な結婚式の披露宴の依頼が舞い込んできたのだ。
いつも通り、式を成功させようと準備を完璧なまでに整えたが、集まったスタッフたちは、何と経験皆無のウェーター、主義主張ばかりが強いバンドマン、招待客のスマホ撮影にきれるカメラマン、そんな彼らもつまみ食いにばかりうつつをぬかし、とんだ曲者揃いだった・・・。
そんなことで、食材が痛んでしまうトラブルが発生したり、想定外のピンチを何とか乗り切ろうとするが、さらなる惨事が待ち受けているのだった。
人生は思い通りにならないことの連続だ。
このことを、映画はいやというほど見せつける。
そこには、思いがけない喜びや幸せを手にする瞬間が訪れるものだ。
温かな感動が伝わってくることもある。
何だかんだで、にわか作りの多国籍チームの描くドタバタ劇は、どこか温かな感動をともなっていて、映画作りの手さばきの鮮やかさが目につく。
毒は毒でよし(?)、笑いは笑いでまたよしと、こんな映画も面白い。
脇を固める演技陣もジャン=ポール・ルーヴ、ジル・ルルーシュ、ヴァンサン・マケーニュといった結構な実力派が揃い、映画や演劇での活動ジャンルの異なる俳優たちが集まって、エスプリのきいた大きく愉快な物語を構成する。
式の余興で宙を舞うパフォーマンスが披露されるが、夜空に忽然と姿を消してしまうシーンは圧巻だ。
ピエールは巨大な風船に体をくくりつけて、中に浮かんでいて、スタッフは地上で必死になってその命綱をつかんでいるだが、突然停電があったりして、思わず命綱を手離してしまう場面など大きな見どころだ。
フランスでは近年テロが多発しており、国内に暗澹たるムードが漂っている中で、エリック、オリヴィエ両監督のこの映画に対する熱い思いは十分伝わってくる。
フランス映画「セラヴィ!」 (人生ってこんなものさ)は、風刺と皮肉の効いたセリフでにぎやかだが、笑いと涙を忘れさせない。
観客には心温かい効能をもたらす作品だ。
結婚式の群像劇は多々あるが、裏方に徹した人物を主役級に登場させたものは珍しいだろう。
ドタバタも笑いに包まれる。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
映画は横浜シネマジャック&ベティ(TEL045-243-9800)などで7月27日(金)まで上映中。
次回はフランス映画「グッバイ・ゴダール!」を取り上げます。