徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「暮れ逢い」―古風だが清廉な香気の漂う愛のドラマ―

2015-02-11 20:00:00 | 映画


 「髪結いの亭主」「仕立て屋の恋」パトリス・ルコント監督は、恋愛映画の名手だ。
 今回のルコント監督の新作は、クラシックな雰囲気の中に描かれる、ピュアな大人の恋愛だ。
 
 
 原作が、「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイクとは・・・。
 これが、池田理代子作の「ヴェルサイユのばら」のもとになったといわれる。
 全編にわたって、緩やかなテンポで語られる物語は、背景に激動の時代の歴史の大きなうねりがありながら、それを感じさせないほど静謐である。










1912年、第一次世界大戦に向かうドイツ・・・。

初老の実業家ホフマイスター(アラン・リックマン)の屋敷に、若き秀才ザイツ(リチャード・マッデン)が秘書としてやって来る。
ひとつ屋根の下で暮らすうちに、フリドリックは若い夫人シャーロット(レベッカ・ホール)に心を奪われる。
二人は惹かれあうのだが、それを口にすることができない。
もどかしい恋の行方だが・・・。

ザイツの南米への転勤が決まった時、お互いの胸にしまいこんだ気持ちが溢れだして・・・。
初めて想いを伝え、「二年後、戻ってくるまで、変わらぬ愛を誓おう」と約束を交わす二人であった。
だが、まもなく訪れた第一次世界大戦によって、運命は大きく揺れ動く・・・。

若妻ロットには、裕福で優しい夫と息子がいる。
でも、心の奥底にある孤独な哀切感は拭えない。
そして激しい想いに苦悩する、貧しくも知力ある青年フリドリックも・・・。
ドラマは、二人の8年間にわたる純愛を紡ぐ。
劇中で、ロットの奏でるベートーヴェンのピアノソナタ第8番ハ短調「悲愴」は、このドラマにぴったりで、その切なく甘美な旋律が余韻を残すのだ。

パトリス・ルコント監督フランス・ベルギー合作映画「暮れ逢い」は、‘現代’から観るとどうしてもやや古風な感じは否めないが、1900年代初頭の上流社会の雰囲気はよく伝わってくる。
ドラマの中、夫が亡くなるとき、何も知らないと思われていた夫が、すでに青年と妻の恋を密かに知っていて、それを嫉妬し、それでも、二人が一緒になればいいとも思っていたという告白のシーンは、ぐっと胸に来るものがある。
どこまでも清廉な物語である。
     [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点
次回は「さよなら歌舞伎町」を取り上げます。