徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ペーパーバード 幸せは翼にのって」―かけがえのない絆の物語―

2011-09-22 15:35:00 | 映画


     厳しい時代の波が押し寄せる中、明日への希望を夢見て、強く生きる。
     そうだ。
     愛と勇気の信じられる、未来があるはずだ。

     エミリオ・アラゴン監督スペイン映画だ。
     
生きていることの懐かしさと、涙と、そして笑顔をもたらしてくれる、ほんのりと温
     かな感動作だ。













1930年代のスペイン・マドリード・・・。
内戦で、妻と息子を失った喜劇役者ホルヘ(イマノル・アリアス)は、悲しみに暮れていた。
芝居の相手エンリケ(ルイス・オマール)と再会した彼は、孤児のミルゲ(ロジェール・プリンセプ)とともに、3人で暮らすことになる。
しかし、亡くした自分の息子と同じ年のミルゲに、悲しみのあまり、つい冷たくあたってしまうホルヘであった。

そんな中、軍からホルヘに反体制派の容疑がかかった。
監視の目におびえながらも、ホルヘとエンリケは仲間たちと、一緒に舞台に立ち、歌や踊り、そして笑いで、観客たちの心に灯をともしていく。
やがて、自分を父親のように慕い、必死になって芸を覚えようとするミルゲに、「いつか2人のネタを作ろう」とホルヘは励ますのだった。
ミルゲの存在が、生も希望も失くした彼の心の傷を癒やしていったのだった。

そんなある日、軍の命令で、ホルヘたちの劇団は、独裁者フランコ総統の前で公演を行うことになった。
そして、いよいよ本番という時、ホルヘを巻き込んだ陰謀が明らかになったのだ。
それを知ったホルヘは、ミルゲとエンリケとともに、スペインを出てブエノスアイレスへ脱出することをついに決意した・・・。

・・・家族のように過ごしてきた彼らに、どんな
将来が待ち受けているのか。
スペイン内戦からフランコ独裁政権へと、20世紀のスペインが迎えた、悲しみの時代だ。
この時代、画家のピカソが怒りを込めて「ゲルニカ」を描き、この時代を代表する詩人ロルカが右派党員によって銃殺されるなど、全てはスペイン内戦のもたらしたものであった。

ドラマの中で、エンリケが腹話術で笑わせるシーンもなかなかユニークで面白い。
映画のラストで、年老いたミゲルに扮して画面に登場し、製作過程の随所で作品の原動力となったのは、監督の父ミリキ・アラゴンその人で、独特の余韻を残している。

フランコ独裁政権は、思想統制や言論統制に厳しく、多くの芸術家たちが、国外へ脱出したといわれる。
スペイン映画「ペーパーバード 幸せは翼にのって」は、そうした激動の時代を背景に描かれる、喜劇役者と少年の物語だ。
エミリオ・アラゴン監督は、代々続くサーカス・アーティストの家系らしく、当時の祖父や父を取り巻く仲間たちの逸話をもとに、時代に翻弄されながらも、強く生き抜こうとする人々の姿を生き生きと描き切った。。
希望と勇気を感じさせる、一作である。