徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「PARIS パリ」―誰もが寂しくて、哀しくて―

2009-02-01 17:30:00 | 映画

世界中の人々を魅了する街、パリ・・・。
この街が持つ様々な姿が写し出され、まるでパリの住民になったような気にさせられる。
作品に登場する高級住宅地、ソルボンヌ大学、エッフェル塔、サン・クール寺院、パレ・ロワイヤルの中庭、アパルトマンでの生活やマルシェでの買い物、街角のパン屋・・・など、そこには必ず人がいて、いろいろな想いを伝えている。

パリという街を、ありのままに描き出した、この「街」そのものが主役と言える作品だ。
ドラマのかたちをとってはいても、ドキュメンタリーを観ているようである。

みんなどこか寂しくて、哀しくて、それでも誰かを愛したい、誰かとつながっていたい・・・。
セドリック・クラビッシュ監督の描く、フランス映画だ。

病に冒されたピエール(ロマン・デュリス) 、弟を案じて同居を始めるシングルマザーのエリーズ(ジュリエット・ビノシュ)・・・。
彼らのアパルトマンの、ベランダから見えるパリの風景はいつもと変わらない。
人々は、日々をけんめいに生きている。

ピエールの向かいには、ソルボンヌに通う美しい女子学生が住んでいる。
彼女と関係を持つ歴史学者、彼の弟で建築家の男、エリーズと恋におちるマルシェの八百屋、いつも文句ばかり言っているパン屋の女主人、日々を刹那的に楽しむファッション業界の女たち、カメルーンからの不法移民・・・、それらのデテールをカメラは巧みにとらえ、綴っていく。

そうなのだ。
バッチワークのように紡がれ、そしてクロスしてゆく、何気ないパリの男と女たちの日々である。
そうした彼らのありふれた日常も、忘れられない出来事も、喜びも悲しみも、すべてを包み込みながら、この街は片時も休むことなく、今日も時を刻んでいる。

フランス映画「PARIS パリは、パリに生きる人々の寓話なのだ。
そして、それはまた、現代に生きる人たちの物語でもある。
シャンソンの歌声が聞こえてきそうだ.。
出演者が、皆自然体で、本当にドキュメンタリーのようだ。
生き生きとしている。だけど、どこか哀しい。
そういう感じって、何となくとてもよく分かるような気がしませんか。

「いまのパリは、死んだ街だ」という風評もある。
そうした見方への反論として、セドリック・クラビッシュ監督は今のパリを描きたかったのだと言う。
何気ない日常の中にある喜びを、やさしい視点で描いて、抵抗なくときめきの「パリ」を楽しめる映画といえるだろう。
映像で綴った生活詩であり、群像劇だ。
午後のコーヒーでも飲みながら、たまにはゆっくりと、ひと休みというのも悪くはない。