吉行和子さんと夏木マリさん
NHKの連続テレビ小説『カーネーション』はコシノ三姉妹を育てた母親のものがたりも最終章に入った。
三姉妹がデザイナーとして成功し、孫も登場する年代となった、
それに伴って、女優は尾野真千子から夏木マリに交代した。
70代となっても自分のブランドを立ち上出る元気さを持ちながら、孫たちを気遣うお祖母ちゃん役を、夏木マリが渋く演じている。
1990年3月22日に水戸芸術館は美術館・コンサートホール・劇場からなる現代芸術の複合施設として開館した。
各部門は芸術監督が責任を持って運営に当たり、自前の楽団や劇団の公演を主とし、自主企画の演奏や展示をする基本方針は、22年を経過した今も守られている。地方自治体が運営する文化施設として稀有な例だ。
発足当時の演劇部門の芸術監督は「SCOT」の鈴木 忠志。
唐十郎、寺山修司らとともに、1960年代に起こった演劇運動の代表的な担い手の一人。
開館記念公演は
ウリピデス原作『ディオニュソス―おさらば教の誕生―喪失の様式をめぐって1』次年度はシェイクスピア原作『マクベス―おさらば教の隆盛―喪失の様式をめぐって2』が演じられた。
その時、客演したのが吉行和子さんと夏木マリさん。
お二人は「SCOT」の団員と同様に稽古の時から水戸に滞在していた。
吉行さんは「劇団・民芸」の出身だか夏木さんは歌手としては有名であったが役者としてのキャリアはこの頃に始まる。
多くの劇団員はアパートなどに合宿の状態だったが、吉行さんと夏木さんは別格で、水戸京成ホテルに滞在されていた。
当時の水戸京成ホテルの9階は水戸市を見渡すレストランとラウンジバーが在り、水戸では一番お洒落なところだった。
たまたま、バーでお二人にお目にかかり、ずうずうしくも一緒に写真に納まって頂き、お話までしていただいた。
僕は「水戸芸術館に協力していただき有難う」感謝の言葉を述べたかった。
その後、NHK連続テレビ小説『あぐり』が1997年に放送された。
小説家・吉行淳之介、女優・吉行和子、詩人・吉行理恵の実母の実話エッセイをモチーフに展開されたドラマ。
ヒロイン・あぐり(田中美里)の美容師にかける情熱と、それを取り巻く人間模様。ヒロインの夫・エイスケを演じた野村萬斎は強烈な存在感を示し、只者でないと思ったが、野村万作の長男と知り納得した。
90歳を過ぎても、馴染みの客に限定して美容師として仕事を続た話は今回の「カーネーション」にも共通する。
さらに言えば、子供達が、それぞれの才能を発揮している。
教育ママより己の仕事に打ち込む後姿が真の教育なのかもしれない。
吉行和子さんはエッセイストとしても知られている。
「どこまで演れば気がすむの 」(潮出版社、1983年11月/潮文庫、1985年)
「 気分は夕焼け色」 (潮出版社、1986年4月)
「男はみんなハムレット」 (文藝春秋、1989年6月)
「兄・淳之介と私」 (潮出版社、1995年7月)
「楽園幻想」 (堀文子画、講談社、1997年5月)
「老嬢は今日も上機嫌」 (新潮社、2008年6月)
「ひとり語り 女優というものは」 (文藝春秋、2010年5月)
これまた、ずうずうしい話だが拙著〈一つの象徴の造型〉「後藤清一」を贈呈したら、出版されたばかりの「男はみんなハムレット」を署名入りで戴いた。