湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

春一番あれこれ

2007年02月14日 | 日常生活
 昔知り合いと飲んでいるときに「春一番って知ってる?」と訊ねたら、う~ん・・・と少し考えたあとに真顔で「風でしょ」とこたえられて絶句したことがある。ちょうどその頃は芸人・春一番が結構頻繁にテレビに登場していた時期だったので、僕は当然そちらの春一番について訊ねたつもりだったのだ。た、たしかに風で間違いないんだけれども、風のほうの春一番をわざわざ「知ってる?」って訊ねたりはしないと思うんですが・・・とそのとき思ったのをすごくよく覚えている。

 芸人・春一番が吹き荒れたなら、それはそれで面白かったと思うのだけれども、そんな風のほうの春一番が吹き荒れたこの日。普段はほとんど乗り降りしないとある駅のホームに僕はいた。そして、そこでディパックから読みかけの本を取り出そうとしたところ、折り曲がらないように本と本のあいだにはさんでいた食事券がホームにひらひらと落ちてしまった。幸いその線路はホームの風下になっていたので、強い風にとばされることなく、落ちた食事券は僕のすぐしたの線路の砂利の上でとどまっていてくれた。そこで悩んだのがその食事券を拾うかどうかということ。

 電車がやってくるまでの時間は約2分。おそらくその場所であればぴょんとホームから飛び降りてほんの10秒もあれば拾うことができたと思う。ただ駅員に断りもなくそんなことをすれば注意を受けるだろうことは目に見えていたし、いい歳をして食事券のためにそんなことをしていいものかとも迷った。ただ、もし駅員を呼んできたとしたら時間的に列車到着前にホームに降りるのは無理だろうとも思った。そして列車が入ってきてしまったならば、その風圧によって食事券は空に舞い、そのまま春一番の風にのってどこかに飛んでいってしまうだろう・・・

 とそんなことを、砂利の上から見事に動かない食事券をじっと眺めながらあれこれ考えていたら、結局死を覚悟しないと線路に飛び降りられないというタイミングになってしまった。すごく残念ではあったけれども、そうなってしまえば諦めるしかない。いくら僕でもさすがに500円×2枚分の食事券のために命は投げ出せない。電車が入ってくると同時に、その食事券は列車の下で不規則に旋回し、やがて僕の視界から去っていった。春一番の風のなかを舞う姿を見ることができなかったのが少し残念だった。せっかくだったらどこまでも飛んでいく紙飛行機を眺めるように、その食事券が飛んでいく姿を見ていたかったのだけれども。

 ところで僕は毎年春一番が吹くと、「掃除しなくちゃなぁ」と後ろめたい気持ちで思ったりする。これはやはりキャンディーズの

 ♪春一番が~ 掃除したてのサッシの窓に~♪

 という歌詞を条件反射的に思い出してしまうだろうからだと思う。窓掃除なんて全然やってないものなぁ。僕のところなんか逆に春一番のせいでたまった埃がきれいに吹き飛ばされたりしてね。

 まっ、何はともあれ春一番。もうすぐ春ですね。そしたらもっと走りやすくなりますね!

 ♪1、2、3~ 3つ数えて イチ、ニ、サン~♪ 行くぞぉ! 
 ♪わたしたち~ 走って ゆくんですね~♪ ダッー! 

 ・・・春が近づいて暖かくなってくると少し頭のおかしい人間があらわれてくるものですが、そんなときは顔をしかめずにそっと微笑みがえししてくれると結構嬉しかったりするのだと僕は思う。