いよいよこの山に向かうことになった。北海道にはもう何度も渡ったが敬遠し続けていた山だ。理由は、一つだけズバリ「熊」。あの惨劇の記録や手記を読んだため、トラウマのようになっていた。北海道の他の山々ではさほど気にはならないのが不思議。しかし、もう恐れているわけにはいかない。今度こそ必ず登るぞと言う気持ちで松江を出発した。
7月27日 敦賀発01:15分発苫小牧行きに乗船。到着は同日20時30分。退屈な時間が続く。この日海はしけていた。明るくなるまでベッドの中で過ごす。
朝食はバイキング。控えめな食事にしました。
夕刻、北海道に近づく。津軽海峡を横切り苫小牧港へ。途中、船は大揺れだった。ぶらぶらしていたら酔いそうになったのであわててベッドに帰り横になる。
港で船から出ると外は暗い。この港(苫小牧東港)の近くには何もない。人も、車も下船と同時に散って行くのでとり残されそうな気分になる。知らない土地の夕暮れ時は特にそうだ。
自分は、近くの道の駅で車中泊と決めているのでとりあえずそこへ向かうことにする。「むかわ」という道の駅だが、ここで泊まるのももう何度目だろうか。温泉があり、朝風呂もあるので利用客は多い。
翌28日、日高自動車道、国道237と走り中札内へと向かう。
途中通過する新冠は名馬ハイセイコーがでた町。サラブレッドロードとか、天馬街道等の標識が目に付く。
途中寄り道をして馬を見る。本当にいい風景です。何か癒される感じがする。
そして、カムエクの駐車場ともいえるヒュッテ前に到着。まだ陽は高い。
ここに駐車する人は、山へ登る人の他に釣り師も多い。犬を連れた男性がいたので話すと、犬連れでカムエクに登り、頂上でテント泊をするという。星空を見たいとのこと。犬がいれば熊も近づかないですねと聞いたら、いつか熊を見かけたとき、この犬は固まってしまい吠えることはおろか動けなくなってしまったといわれた。熊に吠えかかるのは、アイヌ犬とか特別に訓練された犬らしい。
しばらくして、若い男性がやって来た。非常に興奮していた。カムエクの帰りかと思ったがコイカクシュサツナイ岳方面から引き返してきたそうで、昨夜の豪雨でほとんど遭難状態だったとのこと。ものすごい雨に見舞われテントをたたんで引き返したけど、途中沢にながされた。さいわい緩い斜面だったそうで必死で這い上がり、ツエルトをかぶって夜を明かし、今日28日、水が引いたので下りて来たと興奮気味に話した。手から腕、足には赤黒くなった傷跡だらけ。大事な装備も流されたけど、リュックだけは必死で持ち上げて帰ってきたそうです。とにかく生々しくて凄い話でした。まあ、生きて帰れたからよかったようなもの。さらに、カムエクから5名のパーティが帰ってきた。彼らもさんざんな目に遭ったらしい。増水した川の恐ろしさを口々に語っていた。 27日は、日高連峰は集中的に降ったらしい。それにしても、今日28日は素晴らしく晴れている。川の水も引いて明日は絶好の登山日和になりそうだ。車から自転車を下ろして、7の沢出合いまでいってみる。歩けば2時間位かかるが40分ほどで着いた。犬を連れた男性は、ここでテントを張るとのこと。
7月29日(火)
今日の予定は、8の沢出合いにテント等をおいて頂上に登り、又ここまで引き返してテント泊。長丁場になるので自転車を用意し朝早くにスタートすることにした。3時過ぎに起きて4時にスタート。自転車での登りはきついので押して歩く。7の沢へは5時前に着いた。犬連れの男性がテントをたたんでいた。朝の挨拶を交わして札内川に入る。犬連れの男性とはこの後前後して歩くことになった。カムエクには以前登っておられるのでこちらとしては心強い限りだ。
流れがきつくて深いところはだっこして
犬の歳は、12~13歳くらいだそうです。老犬だろうがいたって元気で常にご主人の先を歩く。川の流れがきつくなると渡るのをいやがって山手に逃げ込んだりしたが、ご主人がだっこのポーズをとると素直に抱きかかえられた。 何ともほほえましい。この犬、薬で病状をおさえていて今度発病すれば終わりだろうと言っておられた。そのため、犬と最後の山登りを計画されたようです。
そうこうするうちに8の沢出合いに着く。7時でした。テント等を置いて頂上へ。
8の沢を詰めると残雪の向こうに滝が現れる。3股と呼ばれる意味がよくわからず写真右手の滝の基部まで行くがどうもおかしいので左手に移動する。
これが左手の写真。よく見ると3本の滝が流れ落ちている。但し、真ん中は水量が少ない。
ルートは、写真右手の滝の右側を行くことになる。山と渓谷社の「日本200名山登山ガイド」と「日本300名山登山ガイド」の説明が曖昧ではないかと思う。
「日本300名山登山ガイド」には、「3段に分かれている滝の左岸の巻道を選ぶ。」 とある。 そして、「日本200名山登山ガイド」には、「三股は、真ん中の沢左岸の巻道に取り付く。」とある。
右岸、左岸は、上流から下流を見ての表現で地図的な表現なので問題はないが、「3段に分かれている滝」の表現がわかりにくかった。3股の意味と3段の意味が混同する。今でもよくわからないが、写真右手の滝は、3段に分かれているらしい。 そして、「真ん中の沢の左岸・・・」の表現は絶対おかしい。そんなところを登れば遭難間違いなしだろう。
これを読まれた方は、一度確かめてみてください。
そして、11時丁度に8の沢カールに出る。右手に遭難碑。この日は、水も流れていてキャンプには最適な日和でした。熊の気配など全くなかった。丁度、4名のパーティーが下りて来て水場で休んでいた。彼らは、8の沢出合いを朝4時30分位にスタートしたそうです。
カールからひとがんばりで稜線に出るが、ここからハイマツの道、岩場と登りお花畑を過ぎると頂上だった。
ピラミッド峰
真ん中のピークがカムエク
頂上直下のお花畑
頂上にて
天気にも恵まれ念願のカムエクに立つ。感無量といった感じでした。なにかもう300名山が終わったような気分になりました。12時50分。14時25分、8の沢カール。15時50分、雪渓に降り立つ。8の沢出合いが18時でした。
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