山の記憶 (百名山・二百名山・三百名山)

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知床半島先端部 トレッキング 知床岬 (その3)

2016年08月03日 | ぶらり

 今日は、知床岬に立つ日だ。5時に出発する。昨日調べておいた念仏岩を高巻きして反対側に下りる。ここは、20~30m位の高度の崖をトラバースし、最後はほぼ垂直な壁を下る事になるのだが、頑丈なロープがセットされているのでなんにも心配はなかった。スタンスをよく確かめて足を置きロープをしっかり握りながら確実に下りる。ただ、握力を使うから、手袋がしっかりしていないといけない。私は、イボイボ付きの軍手を使つていたがこれで充分だった。ルサフィールドでは、2束ぐらい用意しておいた方が良いといわれていたけど1束で間に合った。

                               念仏岩から見るカブト岩

                 

 念仏岩を巻いて反対側の海岸に下りる。ここもちょっとした湾で小さな港になっている。船が3艘ほど浮かんでいて、テトラポットで海からの波を防でいる。建物があるが人影は見えないかった。そして、最後の難所といわれるカブト岩の高巻きが始まる。取り付き点がはっきりしないのですこし迷ったが、イタドリの生い茂った中に踏み跡を見つける。ロープもあった。ここの高巻きは今までよりちょっと長いが今日は荷物は軽いので特に問題は無い。尾根まで上がり、今度は下降点をさがす。説明書には、ここの下降点にはロープ張られていないとあった。確かにロープは見当たらないが、よく見ると踏み跡というより、水のながれる泥の溝が下の方に向かっている。帰りに気がついたが、このような道(溝)は2本あって、カブト岩に近い方が下り易いし、登り易いようだ。

                          この辺りから下りる。知床岬の先端が見える。

 

                     

 慎重に下りる。道の両脇には巨大なフキが生えているので時々それをつかんでバランスをとる。いよいよ知床岬地帯に入ることになったが、最先端は何処なのかまだ分からなかった。今見えている岬がそうなのか、まだあの向こうがあるのか・・・。

 すこし様子が変わってきたように感じがした。海辺には、さきの尖った岩塔が立ち並び、青い海をバックにちょっとした景色が広がる。突然、犬の吠え声がした。番屋で飼われている犬が私を見つけて吠えだしたらしい。その内の1匹が尾を振りながら近寄ってきた。人なっつこい犬なので頭をな出てやる。他に2匹いたが、これらは遠巻きに吠えるだけで近寄らない。単独行だと、犬でも相手をしてくれるとうれしいものだ。この海岸には、3軒の番屋があり、1軒目は人影がない。2軒目に犬がいて、3軒目でやっと人に出会うことが出来た。

                     知床半島(羅臼側)最後の番屋が見える。右手の建物は廃屋。

                   

 番屋から一人の男性が出てきて「知床岬まで自分も一緒に行く」というので冗談かと思ったがどうも本気らしい。さらに女性が出てきて「一緒に行ってきなさいと」けしかける。私も、連れが出来れば心強いので一緒に行く事にする。歩きながら、いろいろお話を聞いて納得。男性は、毎年この時期に九州からコンブ漁の手伝いに来ていて、今年でもう10年近くになるということだった。九州ではボランテアのガイドをやっているので歩くのは慣れているといいながら急な坂道を先に歩く。76歳にしては元気だ。おかげで知床岬のガイドをしてもらえてすごく助かった。今年ははまだ灯台まで行っていないので連れが現れるのを待っていた。一人では危険(怖い)なのだそうです。

                                     知床灯台

                            

 海岸線を歩き、しばらくすると台地への登りになる。登り切るとそこが知床岬の突端だった。一面の草むらで奥の方に灯台が見える。知床岬灯台だ。「ついに来た」と思った。本当は、ここまで来れるかどうか自信はなかったのだが・・・。

 岬は海に突き出たちょっとした台地のようで、もうしばらくするとお花畑になると説明を受けた。ただし、その頃になると草の背丈も伸びて向こうが見えないらしい。クマがいても分からないから危険だともいわれた。「灯台まで行ってみよう」と男性は歩き始める。こちらはここまでで充分な気もしていたけど行くことにした。草むらの中にわずかだけれど踏み跡らしきものが見える。クマ避けの笛を吹いたり、声を出したりしながら灯台下の階段に到着。「何段あるか数えながら登ろう」と言って登り始めたが、200段近くまで数えた覚えはあるが、途中から分からなくなってしまった。

                               灯台より                            向こうに煙るのがカブト岩あたり

 

                             

 灯台で一休みしてから番屋まで帰る。番屋の女性(ここの奥方らしい。旦那さんは漁なのかな・・・。)から、ジュースやバナナそれにパンを頂いた。16日からコンブ漁が始まるらしい。

 「今朝ほど、家の近くにクマが出ていました。大きなクマが2頭ほどこの近くに棲みついているようです。しかし、お互いあまり干渉しないことにしています。知床のクマは大変おとなしいですね。お互いの存在が事前に分かれば問題ありません。」と言っておられたが、漁師さん達はやはり気になるらしい。

                                     番屋前にて

                  

 漁が始まっていれば、すこし手伝っても良いと思った。しかし、長居は無用なので早々に失礼する。隣の番屋の前では、またあの犬が出てきて寄ってきたが、「もう帰るから、お前の相手は出来ないよ」と言ったら、何か分かったような顔をしていた・・・。

 カブト岩を越え、念仏岩を巻いてテントに帰る。時間的に早かったので、テントをたたんでこのまま帰ろうかと思ったが自信がなかったのでここでもう1泊する。

                       

                                テントがかすかに見えるが・・・。

          

 夜、波の音に混じって石ころが転がってぶつかる音が聞こえる。波にもてあそばれているのだろう。

                         知床の岬にハマナスの咲く頃・・・・・。

     これは、知床旅情の出だし。

                          最果ての番屋に いのちの火ちろちろ

                          トドの鳴く夜は いとし娘(こ)がまぶたに               

                          誰に語らん この寂しさ

                          ランプの火影に 海鳴りばかり

     これは、オホーツクの舟唄(知床旅情の元歌)。いずれも、森繁久彌作詞・作曲。

                                                                   知床岬 その3