山の記憶 (百名山・二百名山・三百名山)

山スキー、その他の山行もあります。

百名山の記録 十勝岳

2014年11月13日 | 日本百名山

2008年7月1日 十勝岳 
  今日は朝から気持ちよく晴れた。昨日の幌尻岳の天気が嘘のよう。ここ十勝岳へは、美瑛町の白金温泉の奧、望岳台から登ることにする。十勝岳、美瑛岳を正面に見晴るかすこの望岳台には、整備された駐車場とトイレがあり車泊をする我々に取っては大変有り難い。 昨夜から、数台の車が夜明けを待っていた。早立ちの登山者も多く、明るくなると同時に出発してもいつも先行者はいる。
 4時40分、望岳台をスタートする。ガラガラ石の体積の中に付けられた道を、頂上へと歩く。望岳台から始まる登山道には、植物の姿はあまり見られない。この辺り一帯がお花畑に変わるのは、後何世紀が必要なのだろう。

              

               

 不毛の地を行くようだ。最近使い出したダブルストックで黙々と登る。ストック利用の功罪はあるが、使い慣れると手放せなくなる。「転ばぬ先の杖」ではないが、登り下りで何かと重宝する。特に、下りにおける膝の保護には良いようだ。
 ジグザグの登りを繰り返しながら歩く。先行していたご夫婦が一息入れておられた。女性の方は元気そうで、男性の方は苦しそう。よく見かける光景だ。

                   

 一登りすると、十勝岳の頂上らしきピークが現れ、その頂きに向かって延びる登山道がハッキリと見えてくる。広がる砂礫と残雪。他の山ではあまり見かけなかったが、「月の砂漠」を行くような不思議な光景だ。砂礫地帯を過ぎると、溶岩が冷えてできた赤茶けた岩の急登となり、間もなく稜線に達する。視界は開け、雲海に沈む富良野の町を背に頂上までは一頑張りだ。

 8時45分、2077mの十勝岳頂上に立つ。

 雲海は富良野方面に発達しているもの、素晴らしい天気だ。今日はいうこともないほどの眺望に恵まれて十勝連峰はもとより、日高、大雪の山々は手に取るようだ。先ほど、息を切らして歩いた登山道に数名の登山者の姿が見える。彼らも間もなくこの頂きに立つことになるだろう。
 この度のコースからはずした富良野岳は、すぐ後ろ南西方向に、反対方向の北東には美瑛岳、美瑛富士、トムラウシ山と続き、それら山々の遙か彼方に、今なお白き雪を残す大雪山が大きな山裾を広げてドッシリとそびえ立つ。いつか近い将来、この遙かな山脈の連なりを、果てから果てまで歩こうと思う。 
  山頂もにぎやかになってきた。美瑛岳に登って望岳台へ下ろうと頂上を後にする。登りと同じような岩の道をしばらく下ると、砂礫地帯に入る。鋸岳を回り込み、砂礫帯を滑るようにして駆け下る。右手斜面に残雪が光る。おもしろいように高度を下げ、一息ついて後ろを振り返ると、男性が追いかけるようにしてやってくる。先ほど、頂上で話を交わした方だが、まさかすぐ後ろに付いておられるとは知らなかった。それにしても早い足取りだ。どうも十勝岳のパトロールの方らしく、慣れた足取りで追い越して行かれた。

                                 美瑛岳から見る十勝岳

                  

 「後から追っかけられるのは、何か落ち着かないから先に行ってもらうにこしたことはない」などと思っていたら、なんとまた一人新手が現れる。これも早い。どんどんと近づいて来て、サッサと追い越して行かれる。まるでマラソン大会の様だ。
 美瑛岳の少し手前辺りから、高山植物が顔を出す。パトロールの方が、「花は美瑛岳の反対側を下った辺りがよい」と教えてくれていたので取りあえず頂上を目指す。
 砂礫帯から岩場に移り、ちょっとした岩場を回り込むと頂上へつながる登山道へ出る。この辺りで、美瑛富士を経てトムラウシ岳方面へと続く道と分かれる。汗を拭きながら9時40分、2052m美瑛岳頂上。

         

 先ほど追い越していった2名の方が休んでおられた。 一人はこの地域のパトロールの方、もう一人は、今日中にもう一山登るとのこと。狭い岩の頂上だが、見晴らしは抜群だ。先ほど登った十勝岳とそのすぐ後ろには富良野岳。反対方向に目をやれば、美瑛富士は手に取る程近くに。縦走路が豊かなアップダウンを繰り返し、その先にはトムラウシへ岳がそびえ立つ。大雪山は心持ち近づいたようだ。

           

 写真を撮り、早々に下山にかかる。最近、ダブルストックを多用することが多くなって来た。特に、下りでの使用は膝への負荷が少なくなるのでよい。2足歩行から、4足歩行への逆進化だ。
 雪解け水が流れる、ちょっとした流れで一休みする。緑の木陰に吹く風が、爽やかに心地よい。若者が二人やって来て、今から美瑛岳に登り十勝岳へと縦走するとのこと。
 河原を過ぎると、エゾコザクラの群落に出会う。青空を背景として斜面一帯に咲き誇る様に感動する。この辺りを「雲の平」と呼ぶらしい。

                       エゾコザクラ

       

                       イワヒゲ

       

 美瑛岳分岐から、朝来た道に戻り望岳台へと帰り着く。近くにある白金温泉の湯に浸り、今日の一日を反芻してみる。雄大な十勝岳、秀麗な美瑛岳。脳裏には、遙かトムラウシと大雪の山々が見え隠れする。
  思えば、シリベシ山に始まった百名山「北海道版」も残すところトムラウシ山一つとなった。机上でのプランが実行に移され、その一歩を踏み出すときに感ずる不安と期待。未知の山々に対座する自分というものの存在を確認する張りつめた緊張感。これらは、山登りが我々に与える喜びなのだろう。

コメント
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