山へ行く(登る・歩く)場合、色々と準備が必要となる。一般的に初心者は、必要以上の準備をする傾向があるようです。これは、山の経験がないために、「山に対する不安」から「あれもこれもが必要なのではないのか」と考えることに起因すると考えられる。また、山の案内書・ガイドブックなどに書かれていること(装備)を鵜呑みにしていることもある。
私も、山を初めた頃は、服装から履き物・靴は勿論のこと、山の案内書に従って様々な装備をあれもこれもとザックに詰めて出かけたものです。最近、山慣れをしたせいか、年をとったせいかわからないが、山行きの装備について自分なりに考え、選択することが出来るようになってきた。以下に、山の装備についていくつか記してみたい。
山の装備(その1) 靴
山へは、何を履いて行くか?この場合、対象となる山やその時の季節・天候等によっても大きく異なる。 山へ行く以上は、その山にあった靴を履いて行きたいものだが、その山へ行ったことのない者にとってはどんな靴がいいのかよくわからない。富士山なのか穂高岳なのか?あるいは、大山なのか三瓶山なのか。はたまた、我が家の裏山なのか。
山行の形態にもよるだろうし、季節のこともある。しかし、山へ行く大方の人たちは、一旦山靴を購入すると、いつでもどこでも、どんな山でもその靴一足で済ませてしまうようになる。最近では、初めに購入する靴はスリーシーズン用が多いかな?雪山とか、冬に山へ向かわない人はそれで良い。また、最初からオールシーズン用を購入する人もいるかもしれない。以前は、山靴の種類が今ほど豊富ではなかったから、山靴といえばこのオールシーズン用だった。この靴で、春夏秋冬と歩き、登り攀じた。私など、最近まではそうだった。
しかし、あちこちの山を歩き、登っているうちにいろいろと気づいたことがある。それは、「我々の生活の中で日頃使っているものでも利用できるということ」です。良いい例が「ゴムの長グツ」。一般にいう「ゴム長」で、何処の店でも売っているやつだ。ただし、ゴム長にも各種ある。長さも色々、底の作りも色々、スパイクの打ってあるゴム長もある。最近これらが、日本の山でよく使われていることに気づいた。 「長グツを履いて山登り?」と思われるかもしれないが、これが意外にいい。つまり、日本の山に合っているということ。
また、「トレールランニング用の靴やいわゆる運動靴等」もちょっとした山登りにはいい。とくに、トレールランニング用の靴は、軽くて頑丈。底は滑らないような作りとなっている。冬期をのぞけば、日本のほとんどの山は、この靴でいいような気もする。実際、トレールランニングの連中は、この靴でアルプスの山々を疾走している。最近よく見かける「山ガールズ」たちが履いている靴は軽くて使いやすそうだが、どんな作りになっているのだろう。
現在、私が山用に使っている(持っている)靴を参考のために記してみます。
冬期用・・・・2足 皮革と合皮(極寒用) オールシーズン用としても使える。
兼用靴・・・・1足 山スキーの兼用靴
スリーシーズン用・・・・1足 合皮
トレールランニング用・・・・2足
沢 用・・・・1足
長グツ・・・・5足
*長ぐつの内訳・・・・ 極寒用 1足 観察用 1足 スパイク 1足 ゴム長 2足(長・短)
これらの靴のなかで、冬場は除いての話だが特に使用頻度の高いのが、ゴム長(短)とトレラン用のシューズ。たまに、岩場など多い山では底のしっかりしているスリーシーズン用を履くことがある。山の様相によって使い分けをしています。(観察用とは、一部の国立公園などに入る時に使用するもの。スパイクは、スパイクつきの長靴のことで、積雪期の山で意外と重宝する。釣り師がよく使っている。)
最近、ゴム長(短)を履いて大山に登りました。頂上付近のキャラボクには樹氷の林。木道には、部分的にですがうっすらと雪(霜?)が。登りは問題は無かったけど、木道の下りで少々難儀しました。ダブルのストックを持ってきていたのでこれが大いに威力を発揮してくれました。ただし、登山靴でもいやらしい感じでしたが・・・。
トレールランニング用の靴は、もともとが山用に作られている。これで平地を歩くのはもったいない気がする。一方、ゴム長の使用範囲についてはよくわからないことがある。小さい頃、雨や雪が降ったときに使用した覚えがあるが、大きくなってからは、ゴム長を履くことはなかった。「格好が悪い」ということもあったし、街場の生活では、通勤用の革靴があればそれでほとんどがカバーできた。
私が、ゴム長に関心を持つようになったのにはそれなりの理由がある。多くの山を登ったり、歩いたりして行く過程の中から、自然に考えるようになり、いつの間にか使用頻度も高まってきた。
登山靴は他の靴に比べてリスクが少ない。だから登山靴なのだが、オールシーズン用の靴なら、面倒くささ、重量、固さを等気にしなければ確かにオールマイティです。晴れでも雨(条件付き)でも雪でも、岩でも重荷を担ぐ時でもいい。捻挫もしにくい。
しかし、欠点もある。
その1は、「面倒くささ」。
登山靴を履いたり、脱いだりする時のあの面倒くささ。そんなことを言うと横着者といわれそうですが・・・。
その2は、重くて固いこと(オールシーズン用の靴で)
岩場などの山道を歩くときは、これが安全の確保につながるのだが、岩場もなく、山道がよく整備されているような道ではあまり利点はなく逆に足が疲れる。登山口までの長が~い林道歩きなど登山靴では大変だ。
その3は、雨に弱い。
馬鹿をいうなとしかられるかもしれないが、これは事実。登山靴なら雨でも大丈夫と思っている人が多い。ただ、それにはいくつかの条件がある。その条件とは、「真新しいこと」と「日頃のメンテナンス」。これさえクリアーされていればまず水は浸みてこない。(この条件は、雨具についてもいえるのだが、雨具については別の項で述べてみたい)
新しい靴なら、少々の雨でも水がしみ込むことはない(安めの靴はわからない)。スパッツを着ければさらにいい。しかし、使用頻度が高いと老化現象も早い。水はジワジワとしみ込みはじめ、一旦しみ込みが始まった靴は、乾燥させてももう以前のような防水力は戻らない。こうなった靴の防水力を高めるには、防水スプレーの助けを借りるしかない。つまり、「日頃のメンテナンス」が必要となる。最近の靴の防水はいいと思っておられる人も多いと思うが、水がしみ込む時期は、意外と早くやってくる。 これは、私の経験の中からのことですが・・・。(雨のザアーザアー降る日、2~3時間ほど歩いてみればわかる) 靴の防水に関しては、 防水用のスパッツを着ければ良いという人がおられるかもしれません。確かにそうですが、私もあれこれ防水用のスパッツを探してみました。しかし、靴をうまくおおって防水をしてくれるような品物には出会いません。これは、おかしなことだと思います。靴の防水能力の高さを宣伝するあまり、こちらの開発がおろそかになっているのかもしれませんね。
以上は、ゴム長に関心が行くようになった理由の一つですが、他にもあります。
それは、各地の山でゴム長の靴で歩いておられる沢山の登山者に出会ったこと。以前、何かの雑誌(?)で、どこかの山小屋のご主人が、山ではこれ(ゴム長)が一番だと話しておられたことを覚えている。その時は、そうかな~と半信半疑。まあ、日頃から使い慣れているのでそういうことなのかなと思っていました。ところが、100名山を終え、200名山・300名山を登り始めた頃から、時折ゴム長の登山者に出会う機会が増えてきました。はっきり覚えているのは、300名山の「米山」でのこと。この山は、標高高くはないけど、頂上からの眺めはいい。頂上には、こぎれいな山小屋もあり、佐渡ヶ島や妙高山や燧岳を見渡せる。この山で、毎日のように登っているという地元の登山者に出合い、いろいろなお話を聞くことがありました。その折、登山靴ではなくゴム長を履いておられるのでその「効用」について伺うと、これで充分だといわれた。
また、東北の200名山、「焼石岳」に登った折り、多くの地元の登山者がやはりゴム長を履いておられたので、冗談半分で、「東北では登山靴は売ってないのか」と聞くと、笑いながら、この山はこれで登るものだとおしかりを受けた。確かに、じめじめした箇所も多くあって、その通りだなあと納得したことがある。概して、東北の方々は、ゴム長を履いて歩く人が多いようだ。
100名山登山の折には、さすがにゴム長を使用している登山者は見かけなかったように思うが、その頃は、このことにあまり関心がなかったから見落としていたのかもしれない。
私がゴム長に関心を持つようになったのはこのような理由による。そして、ゴム長を履いて初めて山に登ったのが、今年の正月で、登った山は、「武甲山」。雪はなかったが、寒い日でした。薄い靴底を通して寒さと共に伝わって来る「土」の感触が、とても新鮮だったのを今でも覚えています。意外に歩きやすくて、履いたり脱いだりがとても簡単。この時からゴム長を頻繁に使うようになりました。
ゴム長についてちょっと長くなりました。山で使える靴は、色々あるということで、山によっては普段の生活の中で使っているものでも結構利用できるということです。ゴム長は安価で便利です。一足準備しておくといいですよ。何だか、「ゴム長」の宣伝みたいになりました。ご勘弁を。
上段左より スキー兼用靴 極寒用(冬)用 オールシーズン用(皮靴) スリーシーズン用
中 段 極寒用ブーツ スパイク ゴム長靴(中) ゴム長(短) 観察用
下 段 散歩用 トレラン用(1) トレラン用(2) 沢用
山行きの装備 靴 (fin)