YS Journal アメリカからの雑感

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明日は中間選挙

2010-11-02 05:32:17 | アメリカ政治
中間選挙の前に、ここ数年の大きなアメリカの政治の流れを勝手に考えてみた。

オバマ大統領の就任で、下院の過半数、上院の絶対過半数を持っていた民主党は基本的に好き勝手な事を出来る体制が整って、大きな法案としては、景気刺激策と ObamaCare を成立させた。下院では民主党議員全員が賛成したわけではない。また、上院では景気刺激策については共和党の賛成(確か1、2票)もあったが、ObamaCare については民主党のみでの可決となっている。

上院で、ObamaCare の可決が難航したのは、民主党の反対議員の懐柔(法案の中でこれら特定州への優遇措置が盛り込まれており、違憲裁判の焦点の1つになっている)に手間取った事が大きな要因である。また、このような事情で、上院は下院案を可決する事が困難だったので、上院で可決させた案を下院で可決するという大きな法案としては異例の手法で議会を通過してきている。(この上院案の可決で反対に回った民主党下院議員が多数いる)

民主党のリーダー層は、極端なリベラルが多く、オバマ就任以来これらの党首脳に引っ張られて、極端なリベラル法案を無理矢理通してきた。なぜこのような事になっているかというと、昔ながらの民主党は中道左寄りあり、共和党の中道右寄りと選挙の度に勝ったり負けたりをしてきた。しかし、ハードコア左寄りの民主党議員は、非常にリベラルな州(西海岸や東海岸)から選出されており、共和党の挑戦を受ける事無く、当選を繰り返し民主党の首脳部となってきたのである。また、これらのリベラルな州が、財政危機に陥っている事は、リベラル政策失敗の傍証として考えても良いと思う。

今回の中間選挙で民主党の大敗が予想されているが、これらのハードコアリベラルである民主党指導者はそれでも安泰であるのである。彼等は、ベトナム戦争で出現したヒッピーの残党である。但し、大学から反戦が拡大した様に、特に首謀者は頭の良い人達であった。その後、市民活動等に姿を変えて生き残り、周到に政府からお金をせしめる方法やリベラルの理論を構築してきているのである。実業経験のない人々が殆どで、お金は政府から、政府の一部となってからは税金でと、全くもって不届きな人々である。どちらかというと政治エリートと呼ばれる人々で、特権階級意識がプンプンする人々である。

1つの例は、下院議長である Nancy Pelosi が、もし民主党の過半数割れがおきると、自分が議長ではなくなるので、(当選したとしても)議員そのものを引退する可能性を示唆している事である。下院議長として大統領継承権第2位であったので、この4年はカリフォルニアからワシントンDCへの毎週の通勤は、軍用機をプライベートジェットの様に使っていたのであるが、議長でなくなると民間航空機の利用をせざるを得ないのがお気に召さないらしい。(坊主憎けりゃ的な分析の様な気もするが)

今回、落選しそうな民主党議員は、Blue Dog と呼ばれる中道左寄りの人々が多いのであるが、彼等は、反ブッシュ政権、反共和党勢力としてでてきた人々で、民主党リーダー達の様に昔からのハードコアリベラルではない。民主党が衰退したとしてもハードコアが生き残る以上、共和党が失敗する度に民主党首脳陣として活躍する機会が残るのである。

アメリカの保守回帰としてはレーガン革命が一番最近であるが、政治信念的には完全に保守であり、減税を行って経済的にも保守的だと考えられているが、実態は、軍事費を大幅に拡大して、所謂ケイジニアン的な政策でアメリカ経済を立ち直らせたのである。クリントン政権時代に何十年振りかの共和党過半数の下院と IT バブルで無借金という形で結実している。

では保守イコール共和党という事にはならない。共和党も基本的には民主党の共犯である。

クリントン、ブッシュ、オバマと政権を取っている政党が中間選挙で負ける事が続いているが、これは、基本的に二大政党のどちらもダメという烙印をアメリカ市民が押し続けているのだと思う。共和党の方がましであるが、今後、共和党の右傾化が強くなると思うが、分裂の危機は少ないと思われる。それは、保守回帰の流れが長期に及ぶ事が間違いないと考えるからである。

国の借金の規模が天文学的で、10年位ではとても無くならない財政状況があるからである。保守回帰のシンボルともいえる Tea Party の一番の理念は、小さい政府である事からも、アメリカ市民は本能的に問題を理解しているのだと思う。財政危機は連邦政府だけでなく、州や地方自治体に及んでいるので、常に財政規律がのしかかり、リベラル的な政策は厳しくなると思うからである。

2006年からの民主党議会、そしてオバマ就任以降のダメージは大きく、アメリカが活力を取り戻すのには時間がかかると思われる。但し、今回の中間選挙、2012年の大統領選挙で、方向性が固まったら政治方向の安心感から一気に良い方向に向かう希望的観測はある。

オバマ大統領の誕生も含めて、アメリカの政治は、本当にダイナミックである。そしてアメリカがアメリカであると言う事は、普通のアメリカ人が選挙を通して証明してくれる。(と思う)

明日は中間選挙。