映画「トロイ」を見る上で、忘れてはならないのが「ギリシア神話」です。
「神話」というにはあまりにも人間くさい個性あふれる神々の波瀾万丈の物語。その原型は、英雄叙事詩と同じようにミケーネ時代に形成されたとされていますが、ホメロスをはじめとする詩人や哲学者たちの手でさらに物語に肉付けが施され、一筋縄ではいかない複雑な構成となりました。
この映画のテーマであるトロイ戦争にしても、ギリシア神話では、神々の王ゼウスが増えすぎた人間たちを減らすために遠大な計画を立てたことに発端があるとされています。そもそも、トロイ戦争時のトロイ王プリアモスでさえ、ゼウスの六代下の子孫ということになっているのです。そのプリアモス王、映画で彼を演じるピーター・オトゥールからは想像もつきませんが、なかなかの精力の持ち主だったらしく、子どもの数なんと100人。そんなんだから、ゼウスの怒りを招くのですよ!もっとも、100人の中には、ヘクトルやパリスのような英雄も含まれてはいましたが。
さて、発端は、海の女神テティスの結婚式に始まります。すべての神々が招かれる中、争いの神エリスだけは招かれなかった。これに怒ったエリスは、「最も美しい女神へ」と書かれたリンゴを祝宴の中に投げ込むのです。それを争ったのが、ゼウスの妻ヘラ、知恵と戦争の神アテナ、そして愛と美の女神アフロディテの3人の女神でした。3人は判定をゼウスに委ねようとしますが、さすがのゼウスも困り果て、判定を一人の羊飼いの少年に託します。彼は、実はトロイの王子パリスで、生まれた時に「この子はやがて父親の国を破滅させるであろう」という予言を受けたため、イデ山の山中に捨てられてしまったのでした。
3人の女神たちは、それぞれ自分を選んでくれた時の交換条件を出します。ヘラは「全アジアの支配者」、アテナは「あらゆる戦いの勝利と無類の知恵」、そしてアフロディテは「世界でもっとも美しい女性との結婚」。権力と知恵と女。パリスが選んだのは、アフロディテでした。その理由を、阿刀田高の『ギリシア神話を知っていますか』では、こんなふうに説明しています。
「途方もない未来の賄賂を前にしてパリスは、さらに困惑したことだろう。
しかし、今にして想像すれば、やはり三人の中ではアフロディテが一番美しかったにちがいない。彼女は愛の女神であると同時に美の女神のほうも兼務していた。美の女神が美しさにおいて他の女神に劣っていたのでは、仕事がやりにくい。説得力にとぼしい」
「説得力にとぼしい」というところがなんともギリシア神話っぽくていいと思うのですが、当のパリスにしてみれば、そんなことよりもやっぱり一番現実感のある交換条件に惹かれたと言っていいのではないでしょうか。権力よりも、知恵よりも、美女。この映画でも、そんなパリスの性格をオーランド・ブルームが好演していたと思うのですが…。
選ばれなかったヘラとアテナは、烈火のように怒り、トロイへの復讐を誓って去っていきます。選ばれたアフロディテも、いっこうに約束を果たしてくれる気配はなく、パリスは仕方なく?十人並みの器量の娘を妻に迎え、相変わらずしがない羊飼い暮らし。
さて、プリアモス王が主催する競技会の賞品として、パリスがかわいがっていた牡牛が徴収されてしまいます。パリスは牡牛を取り戻すために自ら競技会に参加することにします。最後に残ったのはプリアモス王の長男ヘクトルとパリスでした。王もヘクトルもまさか羊飼いのパリスが自分の息子であり、弟であろうとは知る由もありません。二人の戦いのさなか、妹のカッサンドラがいきなり叫びます。「この人は私たちの兄弟よ!」 驚いた王が身元を調べてみると、確かに第二子のパリスにまちがいない。一同、あの予言も忘れて再会を喜び合います。
パリスは、父王の命令を受けてスパルタに向かいます。かつて略奪された父の姉(つまり自分の伯母)を取り戻せという命令でした。スパルタに到着した時、スパルタ王メネオラスは留守。そして、その妃である絶世の美女ヘレンと運命の出会いをするのです。「ああ、この人こそアフロディテが自分に約束した女性だ…」 ≫
To be continued....
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「神話」というにはあまりにも人間くさい個性あふれる神々の波瀾万丈の物語。その原型は、英雄叙事詩と同じようにミケーネ時代に形成されたとされていますが、ホメロスをはじめとする詩人や哲学者たちの手でさらに物語に肉付けが施され、一筋縄ではいかない複雑な構成となりました。
この映画のテーマであるトロイ戦争にしても、ギリシア神話では、神々の王ゼウスが増えすぎた人間たちを減らすために遠大な計画を立てたことに発端があるとされています。そもそも、トロイ戦争時のトロイ王プリアモスでさえ、ゼウスの六代下の子孫ということになっているのです。そのプリアモス王、映画で彼を演じるピーター・オトゥールからは想像もつきませんが、なかなかの精力の持ち主だったらしく、子どもの数なんと100人。そんなんだから、ゼウスの怒りを招くのですよ!もっとも、100人の中には、ヘクトルやパリスのような英雄も含まれてはいましたが。
さて、発端は、海の女神テティスの結婚式に始まります。すべての神々が招かれる中、争いの神エリスだけは招かれなかった。これに怒ったエリスは、「最も美しい女神へ」と書かれたリンゴを祝宴の中に投げ込むのです。それを争ったのが、ゼウスの妻ヘラ、知恵と戦争の神アテナ、そして愛と美の女神アフロディテの3人の女神でした。3人は判定をゼウスに委ねようとしますが、さすがのゼウスも困り果て、判定を一人の羊飼いの少年に託します。彼は、実はトロイの王子パリスで、生まれた時に「この子はやがて父親の国を破滅させるであろう」という予言を受けたため、イデ山の山中に捨てられてしまったのでした。
3人の女神たちは、それぞれ自分を選んでくれた時の交換条件を出します。ヘラは「全アジアの支配者」、アテナは「あらゆる戦いの勝利と無類の知恵」、そしてアフロディテは「世界でもっとも美しい女性との結婚」。権力と知恵と女。パリスが選んだのは、アフロディテでした。その理由を、阿刀田高の『ギリシア神話を知っていますか』では、こんなふうに説明しています。
「途方もない未来の賄賂を前にしてパリスは、さらに困惑したことだろう。
しかし、今にして想像すれば、やはり三人の中ではアフロディテが一番美しかったにちがいない。彼女は愛の女神であると同時に美の女神のほうも兼務していた。美の女神が美しさにおいて他の女神に劣っていたのでは、仕事がやりにくい。説得力にとぼしい」
「説得力にとぼしい」というところがなんともギリシア神話っぽくていいと思うのですが、当のパリスにしてみれば、そんなことよりもやっぱり一番現実感のある交換条件に惹かれたと言っていいのではないでしょうか。権力よりも、知恵よりも、美女。この映画でも、そんなパリスの性格をオーランド・ブルームが好演していたと思うのですが…。
選ばれなかったヘラとアテナは、烈火のように怒り、トロイへの復讐を誓って去っていきます。選ばれたアフロディテも、いっこうに約束を果たしてくれる気配はなく、パリスは仕方なく?十人並みの器量の娘を妻に迎え、相変わらずしがない羊飼い暮らし。
さて、プリアモス王が主催する競技会の賞品として、パリスがかわいがっていた牡牛が徴収されてしまいます。パリスは牡牛を取り戻すために自ら競技会に参加することにします。最後に残ったのはプリアモス王の長男ヘクトルとパリスでした。王もヘクトルもまさか羊飼いのパリスが自分の息子であり、弟であろうとは知る由もありません。二人の戦いのさなか、妹のカッサンドラがいきなり叫びます。「この人は私たちの兄弟よ!」 驚いた王が身元を調べてみると、確かに第二子のパリスにまちがいない。一同、あの予言も忘れて再会を喜び合います。
パリスは、父王の命令を受けてスパルタに向かいます。かつて略奪された父の姉(つまり自分の伯母)を取り戻せという命令でした。スパルタに到着した時、スパルタ王メネオラスは留守。そして、その妃である絶世の美女ヘレンと運命の出会いをするのです。「ああ、この人こそアフロディテが自分に約束した女性だ…」 ≫
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神話ブログではないので、神話ネタは控えようと思いつつ、ついつい増える神話ネタ。
突っ込むと書きたいことはいろいろあり、
我慢するのが大変です(笑)。
ではまた。