さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

ルイ16世の隠れた功績

2012-11-12 23:10:36 | 読書録
(【読書録】歴史のミステリー17)

フランス革命において、ルイ16世が、ギロチンで処刑される前に立派な言葉を残したことは、ベルばらを読んだことがある人なら記憶にあるだろうと思う。2万人の市民に対して叫んだ最期の言葉は、「自分の流す血が、フランス人の幸福の固めとなることを切望する」という言葉であった。平和な世が続いていれば啓蒙主義の時代にふさわしい進歩的な善政をしいた国王であったろうと評する声もあるのもうなずける。

「歴史のミステリー17」は、ともすると埋もれてしまうルイ16世の功績をちゃんと拾い上げているのが気に入った。たとえばイギリスに比べて圧倒的に劣勢だった海軍の強化を図ったり、シェルブール軍港やツーロンなど国内4ヶ所に乾ドックを建設したり、プロテスタントやユダヤ教徒にも戸籍上の身分を与えたり、拷問を禁止したり・・・といったことが列挙されていた。

本巻には書かれていなかったが、同じデアゴスティーニ社の雑誌を読んだ時、国民の飢餓防止(小麦より収穫が安定)・健康維持・軍隊の強化(ビタミンB・Cが豊富)などのためにジャガイモの普及に力を入れるルイ16世とマリーアントワネットの様子が描かれていたのに感銘を受けたこともある。

また本巻には、パリ市民の生活が本格的に逼迫していくは、実は革命が始まって以降のことだ・・ということも書かれていた。革命の起こった2年後の1791年の記録によれば、当時のパリ市民は1日平均一人当たりパンを約450グラム、牛・豚・羊などの食肉を約180グラム、ブドウ酒を年間1人あたり約112リットル消費していたという。パンの消費量は現在のフランス人の2倍だとか。この田、ブドウ酒以外の蒸留酒、ビール、リンゴ酒、チーズ、コーヒー・カカオなどの嗜好品も相応に消費されていたようだ。

国民議会は、革命後、教会から没収した土地や財産を国有化し、それを担保とする債券「アッシニア」を発行したが、財政難を乗り切るための国債であった「アッシニア」を増発をくりかえしたことからインフレが起こり、アッシニアの実質価値はたちまち下落し、1793年の1月には額面の60%、7月には30%を割ってしまう。農民はアッシニアを信用せず、小麦などの農作物の売り渋りが始まり、小麦価格は急騰。パリのパン不足は深刻になったという。

私にとってはなじみやすいフランス革命の話も、いろんな角度から見ると、まだまだ気づいていなかったことが多そうだ。フランス革命は単に市民革命という側面だけではなく「貴族、ブルジョワ、都市民衆、農民が担った4つの革命の複合体」というさまざまな色彩を持っている革命だ。フランス国内でもルイ16世やマリーアントワネットの「功績」に対する歴史的な再評価の動きも進んでいるという。

冒頭に書いたように、ルイ16世の最期の言葉にかつて大変感激した思い出を持つ私にとって、こうした再評価の動きはなかなか好ましいものに思える。
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