さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【100分de名著】ソラリス/スタニスワフ・レム

2017-12-29 23:00:19 | 読書録

100分de名著シリーズ・・・ずっとお堅い話が続いていたのだが、12月はなんとSF。

SFって、子供のころは好きだったけれど、大人になってからは「もっともらしく言ってるけど、どうせ嘘だろう」と思うようになり、そんなものを読んだり見たりするのは時間の無駄だとまで考えるようになった。同じフィクションなら、知ったかぶり科学の域を最初から超えているファンタジーの方がまだ好ましいとか思っていた。

だが、この「ソラリス」のシリーズを1回見たら、もう次が見たくてたまらなくて、2回目の放映前にテキストを全部読み終えていた。

この「ソラリス」1961年の作品・・つまり私が生まれる前の作品である。その頃に知られていた科学の知識を前提に作られていると、今の我々の目で見るとおかしいところがいっぱいあるのではないか・・・そんな先入観を持って、この作品に対峙したわけであるが、いやいやそんなおかしさは微塵も感じられず、むしろAIが人間を超える超えないが話題になる現代にも通じるような新しさを感じる。それはこの本があくまでも「人間」を書こうとしているからだ。惑星ソラリスの観測ステーションで起こるさまざまな事件・・・ソラリスが実在するしないは、読み手側にとってはあまり関係なく、そこで人間が人間以外の理性と接触した場合に、どのような行動を取るのか・・・読者の興味は人間そのものに吸い寄せられていく。こういうSFなら時代を超えて残るだろう・・・古典落語でも人間が描かれているものは残る・・という話を聞いた。社会や科学技術の常識が変わっても、人間の本質は変わらないから。

ソラリスの海は何らかの生き物であり、観測ステーションの中にいる人間が思い出したくない過去を読み取って、それに関与した人間の姿をした幽体を送り込んでくる。それがショックで自殺してしまうメンバーも出て来る。主人公の場合は、彼のせいで自殺した恋人の姿をした女性が出現する。最初主人公は彼女をロケットに詰めて宇宙に葬り去った。でも翌日、何食わぬ顔で彼女は戻ってくる。彼女は彼の思考から出来ているものであるが、少しずつ学んでくる様子がまるでAIのようである。

彼女のたどたどしく、ストレートなものの言い方は、もし人間のセリフだったら青臭すぎて共感性を感じられないかもしれないが、人間ではないからこそ許せる部分がある。それはSFという形を取っているがゆえのメリットかなとも思う。恋愛感情さえ抱き始めた彼女と主人公はその後どうなってしまうんだ・・・そんな興味に突き動かされて、ついつい読んでしまうのである。

ということで、時代を超えるSFっていうのは存在するんだなぁ~ということを実感。そういう作品があるこということが分かっただけでも非常に大きな収穫だと思った。
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3 コメント

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確かに! (みのした)
2017-12-31 08:27:06
私も録画して食い入るように観てしまいました。原作は読んでいなかったのですが、タルコフスキーの映画を観て、底しれぬ恐怖と混乱をたたき付けられていました。また、つい最近、地球の海も一個の生物と見做す学説を知ったのもあり、考えが180度変わるというか、自分の中にも何か、他者に対する恐怖のようなものがある事を突きつけられているような気がしました。
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連投すみません (みのした)
2017-12-31 08:35:44
そして意識しないうちに差別は起こるというTEDのプレゼンも観ていたので、自分の中で対立する他者に対する寛容性の乏しさが問題だと思い当たって。

これからの時代は、亡命、移民問題に個人としてもかかわってきそうですので、わたしの内部にある危険な感覚のバランスをどうやってとっていけるかが来年からの課題かなと個人的に思いました。

日本人同士、職場の仲間同士でも対立する事がある昨今、自分の中の訳のわからない得体のしれない「敵」とどう折り合いを付けるかが課題かなと思いました。

5000字まで大丈夫なら分けなくても良かったのですね。夢中でコメントしてたら長くなりそうだったので。すみません。
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ありがとうございます。 (さぶりん)
2017-12-31 09:14:54
みのしたさん、コメントありがとうございます。
—-Quote—-
これからの時代は、亡命、移民問題に個人としてもかかわってきそうですので、わたしの内部にある危険な感覚のバランスをどうやってとっていけるかが来年からの課題かなと個人的に思いました。

日本人同士、職場の仲間同士でも対立する事がある昨今、自分の中の訳のわからない得体のしれない「敵」とどう折り合いを付けるかが課題かなと思いました。
—-Unquote—-

これ、私も同感です。古くて新しい問題ですね。この作品に接すると、自分の周りの課題に置き換えて考えたくなる…そういう意味でも素晴らしい作品だと思います。
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