日銀の植田和男総裁は19日(日本時間20日)、米ワシントンで講演し、一時的な要因を除いて基調的に物価が上昇し続ければ「(追加で)金利を引き上げる可能性が非常に高い」との考えを改めて強調した。植田総裁については一部に、大胆な利上げに踏み切らない同総裁の優柔不断なやり方を批判する向きもあるのだが、私のまわりの経済通の間では彼は評判が良い。そのやり方はあいまい戦略である。難しい黒田前日銀総裁の異次元緩和緩和策からの出口戦略を推し進めているのだが、知らぬ間に利上げが進んでいるというである。これまでの日銀の政策は
1.量的・質的金融緩和の目的は2%の物価上昇によるデフレ脱却することである。
2.長短金利操作の目的は日銀によるマイナス金利導入後、大手銀行や地方銀行が軒並み収益圧迫に陥った問題を解決することである。
この二つの目標に日銀はイールドカーブ・コントロールの運用で、対処しよとしてきた。だが、黒田総裁時代にはなかなか、物価上昇目標が達成できなかった。2022年の後半になって、やっと2%~3%台になったものの、2023年になると再び、1%台に落ち込んだ。しかし、直近は4%台にもなる物価上昇が起こり始めている。しかし、植田総裁は慎重である。これまでのフラットなイールドカーブからよりスティープ化を目指しているのだが、表現が微妙である。2023年7月の日銀発表資料では10年債の金利を「上下0.5%程度」から「上下0.5%程度を目途」と変えるにとどめ、さらに、同年10月の資料では「上限キャップ1%」から「1%目途」に変えた。大方は何が変わったのだとの印象を持ったのだが、実質は大きく変わって、1%という枠で10年金利を厳格に抑制していたものが、そのわくを外したのである。そして、多くの人が日銀の利上げは進んでいたことに気が付いたのである。(くちなし亭、2024.04.21)
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(注)イールドカーブとは縦軸に金利、横軸に債権期間したグラフで、通常は期間が長くなるほど、金利は高くなる。日本は長く、そのカーブがフラット化していたのである。