南半球のブラジルで、５月３日、遠いギリシャから渡ってきた聖火が到着し、首都ブラジリアから国内に向け、走り始めた。もちろん、順調ではない。各所で、その聖火がきえるという事故も起こっているようである。どうも、最近、夢をかなえるはずのオリンピックがどろどろとした様相を帯び始めている。オリンピックは金もかかるが、それ以上の効果を生み、大変なイベントなのである。特に、アマチアリズムから商業主義へと移行して以来、大金が動くようになった。日本の組織委員会がアフリカ票を金で買ったのではないかという疑惑さえ報じられているのである。そんなオリンピック大会に、警鐘を鳴らしているのだろうか、ブラジル大会が不安だ。カナダ・オタワ大のアミール・アタラン教授はジカ熱の脅威が増しており、延期か移転を提唱している。サッカーのブラジル元代表ＦＷのリバウドさんは最近起こったリオデジャネイロでの１７歳少女の殺人事件に言及し、ブラジルはますます醜悪になっていると言い切り、アスリートはブラジルに来るなと訴えた。そのほか、テロへの懸念とか、競技施設の工事の遅れとか、不安材料が山積しているのである。そんな中で、ルセフ大統領の弾劾裁判の開始が決まった。反ルセフ派とルセフ支持者との抗争が深まり、政治は混迷する。彼らにとってはオリンピックどころではない。ブラジル経済の好調時に決まったオリンピックが、今や、ブラジルにとって、お荷物化しているのかもしれない。(2016.5.13)
