私たちは長く、各国の国境を尊重する世界に生きてきた。しかし、今は、その国境がぐにゃぐにゃになっている時代に代わったのかもしれない。これまでの世界は少なくとも、ウクライナ戦線のように、陰で、ロシア軍がいかに活動しようが、表面的には、ウクライナの政府軍対親露派部隊の争いであり、アフガニスタンに駐留していたアメリカ軍のように、その国の政府と条約を結んだ国に限られていた。しかし、イスラム国の出現で、その国境が無視されてきたような気がする。ヨルダン空軍のシリア領内の爆撃やエジプト軍のリビア領内爆撃など、本来、シリア政府軍やリビア政府軍の迎撃を受けるような事態に、なんらの躊躇もない。このような攻撃の先鞭をつけたのは、アメリカ軍のパキスタン領内にひそむアルカイダ攻撃だと思うが、イスラム国側も、それに共鳴する組織も国境を無視する。さらには、ナイジェリアを拠点とするボコ・ハラムのような組織がチャドなど隣国に進入するようになり、国境など関係が無いという１９世紀以前の時代に戻っていこうとしているようである。たぶん、リビアのイスラム国親派はこの空爆の報復に、エジプト侵入を試みるに違いない。(2015.2.16)
