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バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ/ムローヴァ

2009年04月18日 23時50分50秒 | クラシック(一般)
 バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」だが、すっかり気に入ってしまい....などという感覚とはちと違うが、とりあえず興味はあれこれ感じで加藤知子の全曲版に続いて、ヤッシャ・ハイフェッツが50年代に入れた研ぎ澄まされたような緊張感が漂う演奏だとか、それより更に古いジョルジェ・エネスク(エネスコって今は書かないのか)のなんともロマンチックな情緒連綿たる演奏などもかじっているところだが、今週の後半に近くのショップで購入してきたのがこれである。

 ヴィクトリア・ムローヴァといえば、私の同世代の人だけあって、先日聴いたショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲では、今時の若手の演奏に比べ、一回り大きな風格があり、また成熟した女性らしい情感を感じさせたりもしたけれど、この演奏ではバロック時代の弓を使いピリオド奏法を採用、古い楽器にガット弦、低いピッチと、今流行(?)のピリオド・スタイルをとりいれての演奏らしく、ここではけっこうモダンなスタイルでバッハに挑戦といったところだろうか。

 なるほど、その前に聴いたものとは一聴して趣の異なる演奏である。ピッチが低いため総体的に音色は落ち着いているし、ヴィブラートが極端に少いピリオド奏法のせいか、表情はいかにもさらりとしている。全体に早めテンポですいすい進んでいく感じで、往年の演奏にあったようなシリアスで重厚な迫力だとか、曲が曲なだけにそういう思いを込めるのは当然だったんだろうが、「ヴァイオリンの聖典に挑む」的なものものしさがあまり感じられない演奏になっていると思う。あえて言えば、「普段着のバッハ」みたいな、親しみやすい印象といったところである。

 そういう演奏なので、いずれも長調で作られた3番のソナタとパルティータあたりはクリーンで流麗な歌い回と開放感などから、とても楽しめるものになっている。一方、先行する短調でつくられた各々2つのソナタとパルティータは、タブルストップ時の重厚感も控えめだし(ピリオド奏法と関係なるのかな?)、例えば「シャコンヌ」なども壮絶なドラマを期待すると、ちょいとはがらかされたような感じになるかもしれない(これを聴くと先日聴いた加藤知子の演奏がいかにシリアスで研ぎ澄まされたような緊張感に満ち満ちていたかよくわかる)。

 ともあれ、前回も書いたとおり、今の気分としてはあまり重厚でシリアス、かつ教義主義的なバッハというのはどうも遠慮したいので、こういうモダンでクリーン、緻密で緊張感もあるが独特の軽みを帯びた演奏というは歓迎だ。当分これをリファレンスとして聴こうと思う。
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