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エルガー 「エニグマ変奏曲」聴き比べ

2009年04月02日 20時49分49秒 | クラシック(20世紀~)
 昨夜、バルビローリとフィルハーモニアの演奏した「エニグマ変奏曲」を聴いて、なんだか久しぶりのこの曲の良さを堪能させてもらったもので、ものはついでとエルガーのCDをあちこち探したところ、数枚出てきた。私はCD期に入ってエルガーはほとんど聴いていなかったので、こんな沢山出てきたこと自体意外だったのだが、お得意の「いつか聴くこともあるだろう」みたいな感じで、昔購入してあったのだろう。幸いにも「エニグマ変奏曲」も2種類ほどあったので、ちょっと聴き比べをしてみることにした。

・バレンボイム指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
 1976年、若き日のバレンボイムの演奏である。たしかこの時期の彼は2つの交響曲や同時まだ存命中だったデュプレとチェロ協奏曲など、シリーズのようにエルガー作品を録音していたが、これもそのひとつだと思う。
 演奏はフルトヴェングラーばりに主情的なテンポのうねり、カラヤン的な細部の磨き上げが共存した、いかにも新ロマン派の時代に録音した演奏という感じである。そうした特色が「エニグマ変奏曲」と実によくマッチしていて聴き応え十分の演奏となっている。もっとも、気高く荘厳な美しさという点では、昨日聴いたバルビローリに敵わないが、それでもこの曲の持つ「大英帝国の落日」みたいな情緒はよく出ているし、バルビローリでは多少おっとりしていた速い変奏部分は、当時のバレンボイムの若さなのだろう、実にフレッシュでメリハリがあって、この点ではバルビローリに勝っている。

・ショルティ指揮シカゴ交響楽団
 74年の収録で、当時黄金時代を迎えていたゴールデン・コンビの演奏だ。良くも悪しくも「ショルティとシカゴ」という刻印が至る所に張り付いたパフォーマンスだと思う。したがって、この曲の英国的ムードや情緒といったものは前2種の演奏に比べるといささか希薄で、特別テンポが遅い訳でもないだろうが、「テーマ」を筆頭に叙情的なパートでは総じてインテンポであっさり流れていく。「ニムロッド」は他の演奏とはちょいと違うアポロ的な美しさを描出しているあたりはさすがだが、他の演奏にあったような「この曲への思い入れ」みたいなものはあまり感じさせないのは、少々好き嫌いを分けるところかあるかもしれない。
 一方、速い変奏ではこのコンビの高性能っぷりをアピールするかの如く、例によって切れ味の鋭い、実にダイナミックな演奏になっている。第7,11,15変奏あたりの突進するような勢い、一糸乱れぬ精緻なアンサンブルなどは実に聴き物である。ちなみに録音もいかにもこの時期のデッカ調で、音の細部が隅々まで見渡せるようなブリリアントな仕上がりだ。

・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団
 こちらは47年のモノラル録音で、昨夜聴いたフィルハーモニアとの演奏からさかのぼること約20年前の録音。この時点でバルビローリは未だ48歳だから、その年齢がものをいっているのだろう、フィルハーモニアとの演奏に比べて、全編に覇気がみなぎり、早めのテンポでぐいぐい進んでいく演奏になっている。なにしろフィルハーモニアの演奏に比べて4分も速く、約26分で最後まで駆け抜けていくのだ。情緒たっぷりのテーマの歌い込み、「大英帝国の落日」的ムード、荒場でのダイナミズムなどなど、どこをとっても素晴らしい演奏なのだが、47年録音ということもあり、いかんせん音が貧弱なのが残念だ(全く聴けないというレベルではない-念のため)。同じモノラルでもせめてこの5年後に録音していれば、演奏の素晴らしさが、よりビビッドに伝わってきたろうと、この時ばかりは己のオーディオバカぶりが恨めしくなってしまう。
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