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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ANA CARAM / BOSSA NOVA

2005年08月12日 19時24分32秒 | Jobim+Bossa
 引き続いてアナ・カラン。こちらは昨夜の「アヴィオン」から5年後に出したボサ・ノヴァ集です。タイトルからして「ボサ・ノヴァ」ですから、これをみつけた時はうれしくなりましたね。昨日も書いたとおり、この人美声だし、歌にムードや色気はあるんだけど、いかんせん初期の作品はシリアス・フォークというか、どうも生真面目なところが鼻についちゃって、いつも「もう少し肩の力抜けばいいのに」とか思ってましたから....。

 さて、このアルバムなにせタイトルが「ボサ・ノヴァ」と付いているくらいですから、内容はフュージョンに色気を見せたり、妙な現代性を追求したりせず、直球ストレートな、アコギ、ベース、ドラム、パーカス、ピアノ&シンセ、サックス&フルートというシンプルな編成による、まさに潔いとしかいえないボサ・ノヴァ集です。収録曲はジョビンのボサ・ノヴァ・スタンダードが中心。他も「サマー・サンバ」とか「リオ」とかお馴染みのものばかり、アナ・カランも母国の大スタンダードをあまりこねくり回さず、リラックスしてストレートに歌っていて、彼女の美声を素直に楽しめるのもいいです。

 曲としては、「ノー・モア・ブルース」「オ・パト」といったアップ・テンポの曲が之伸び伸びしたところがよく出ていてとても快適です。あと最後の「ジェットの歌」のゆったりとしたサウンドもいかにも夏向きな感じでが良かったなぁ。録音は例によってスタジオで演奏を直に聴いているかのようなチェスキー・サウンド。ミックスで磨き上げたサウンドに慣れてしまうと、このダイナミック・レンジはおそらく異様に聴こえるかも....、そういう音です。
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アナ・カラン/アヴィオン

2005年08月11日 23時47分04秒 | Jobim+Bossa
 ニュー・ヨークにあるチェスキーというジャズ系ソースをHiFi録音が売りなレーベルがあるんだけど、そこの看板ヴォーカリストがこのアナ・カランという人。彼女はアメリカにデビュウしたブラジル人なので、ボサ・ノヴァ関係の作品がとても多いんですけど、初期の頃は純正ボサ・ノヴァというよりは、もう少しモダンな弾き語りスタイルをベースにしたブラジル路線のようなことをやっていたんですね。このアルバムが彼女の第2作なので、当然その路線の音楽。僕のようなまっとうなボサ・ノヴァ好きからすると、音楽そのものがより、「音楽にのせて訴えたいこと」がありすぎるという感じで、ちょいとばかり積極臭く感じてしまうのが少々愛聴盤から遠くしているという感じ....。

 ただし、このアルバム「一夏に一回くらい必ず聴きたくなる曲」が1曲だけ入っていて、それが故に夏になると、必ずひっぱり出してくるんで妙に忘れられないアルバムではあります。その曲とは2曲目の「アントニオの歌」。ご存じのとおりマイケル・フランクスがジョビンにインスパイアされて作った有名な曲なんですけど、前述のとおり、演奏はあくまでも弾き語りをベースにしていて、ピアノ、ベース、ドラム、シンセ、フルートはうっすらとバックをとっている程度で、非常に静的なたたずまいと淡い雰囲気で演奏しているんですが、これが実にいいムードなんですね。彼女のヴォーカルはもともと透き通った美声なんですが、この曲ではブラジル伝統の物憂げな柔らかいトーンで歌っていて、実に正統派ボサ・ノヴァしていて、その意味でもグー。

 ついでに書けば、録音も極上で、それなりの装置で聴くと、アナ・カランがそこで歌っているように感じるほどです。スタジオの広さから、各プレイヤーがスタジオのどこに陣取って演奏しているか、まるで見えてくるような分かるリアルさはけだし絶品ですね。
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Symphinic Bossa Nova / E.Stratta & RPO

2005年08月05日 21時07分01秒 | Jobim+Bossa
 ここ10年くらい、私の夏の定番となっている一枚。一応名義上はエットーレ・ストラッタ(?)指揮によるシンフォニー・オーケストラ(ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団)によるボサ・ノヴァ集ですが、内容はタイトルから想像されるようなBGM風なイージー・リスニング色はあまりなく、割とタイトなコンボ演奏をベースに、曲毎にアル・ジャロウ、ドリ・カイミ、ゲイリー・バートン、トム・スコット、ヒューバート・ロウズ、オスカー・カストロ・ネヴィスといったゲストが参加したサマー・フュージョンといってもいいような仕上がりです。オケはあくまでも伴奏程度で後方で控えめに鳴っているというバランスの曲が多いですが、ボサ・ノヴァという音楽の性格上、あんまりオケが轟々と鳴るようなものは勘弁してもらいので、このくらいのバランスはむしろ丁度よいくらいだと思います。

 演奏は、トム・スコットの歌いまくるしサックスをフィーチャーした「ワン・ノート・サンバ~イパネマの娘」から快調にスタート。これなどオケはほとんどキーボードの白玉風にしか出てこず、ボサ・ノヴァというにはかなりインターナショナルな感触ですが、そのあたりオスカー・カストロ・ネヴィスのアコギが隠し味的にブラジル風味を出しているのはなかなかニクいセンスです。ネヴィスのアコギは一応、ゲスト扱いですが、ほぼ全曲に参加していることもあって、このアルバムに本場物の雰囲気を添えているという感じです。
 一方、ゲイリー・バートンのヴァイブが登場する「Curumin」はバロック風なリズムとフュージョンの合体という感じ、はねたリズムが楽しいでなかなかおもしろい仕上がり。「Island/ Daquilo Que Eu Sei」では、お懐かしやヒューバート・ロウズのフルートがフィチャーされてちょっとCTIを思わす仕上がりになってます。あと、オケをフィーチャーした曲としては、「Wave」「How」 「Insensitive」「黒いオルフェ」あたりが、なだらかな美しい旋律をややトロピカルなムードでなだらかに演奏していて、極上のBGMになってます。

 指揮に当たったエットーレ・ストラッタはよく知らない人なのですが、どうもポップス・オーケストラ畑の人にようで、先ほど調べてみたらこれと同じシンフォニック路線で「タンゴ」とか「アンドリュウ・リロイド・ウェーバー」とかも出しているようですし、その他にガーシュウィンとかボレロとかいろいろ出ているようです。他のアルバムもこうしたフュージュンっぽい音作りをしているのかどうか分かりませんが、イタリア人?らしく、弦をよく謡わせたアレンジがなかなか気持ちいいし、センスも悪くないので、これを機に他のアルバムにも触手伸ばしてみようかなどと考えてます。
 ちなみに編曲とベーシック・バンドのキーボードを担当したのは、ジョルジュ・カランドレリという人、初めて聞く人ですが、キーボードはエレピとデジタル系シンセを主体とした典型的なフュージョン・スタイルで、編曲は前述のとおりバンドやヴォーカルとオケの絡みなどなかなか巧みで洗練されてます。おそらく、このアルバムはエットーレ・ストラッタではなく、この人が仕切ったんでしょうね。なかなか「良い仕事」してます。
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ツイスト・オブ・ジョビン/various artists

2005年08月04日 23時08分35秒 | Jobim+Bossa
 こちらは昨夜の「レッド・ホット・アンド・リオ」の翌年に出されたリー・リトナーが主体になって作られたジョビンの曲のカバーを集めたコンピレーション。リー・リトナーはこの時期、ソロはGRP、フォー・プレイはワーナーで出したいた訳ですけど、このアルバムを出したヴァーブ傘下のieレーベルではプロデューサー的なスタンスで参画と、四面楚歌の活躍していたということになります。結局、この多忙さに追いつかず、フォー・プレイは抜けてしまい、このレーベルからは同じような企画物でその後、「ボブ・マリー」だとか「モータウン」なんかも出していたような気もしますが、そっちの方は未聴です。やっぱこの手の音をだしているんでしょうか?。

 さて、このアルバムですが、一応コンピレーションといいましたが、基本的にはリー・リトナーがベーシックなアレンジやバンドを仕切り全体のサウンドを決め、そこにデイブ・グルーシン、ハービー・ハンコック、イェロー・ジャケッツ、アル・ジャロウ、オリータ・アダムス、エル・デバージといったゲストが花を添えているという感じですから、全体の感触としては「リー・リトナーのアルバム」といってしまっていいような仕上がりです。ちなみに制作は1997年ですから、ややこれみよかしなハウスっぽい打ち込みが気になるところもありますが、今聴いて時代的な誤差のない、極上のフュージョン....、いやスムース・ジャズです。その極上さ、スムースぶりはさすがに自らの在籍したフォー・プレイと同等とまではいかないけれど、まぁ、かなり迫る上質なものとっていいでしょう。実際、車なんかで流すとホントに良い感じなんですよね。

 演奏として、冒頭の「おいしい水」はハウスっぽい打ち込みリズムにリトナーとグルーシンがのっかったこのアルバムを象徴するようなサウンド。フュージョンの人がハウスのリズムを使うとこうなる的な非常に気持ちよいグルーブだし、リズム以外はひたすらアコスティックなインストでまとめるあたりもセンスいいで、実に快適。
 一方、ジャズ的な演奏の最右翼としてはハービー・ハンコックをフィーチャーした「ストーン・フラワー」が印象的。ワールド・ミュージックなリズム・アレンジになっているのも当然ハンコックを意識してのことでしょうが、徐々に音楽が熱くなっていくあたりにジャズ的な感興があります。
 あとヴォーカル物としては、アル・ジャロウとオリータ・アダムスのデュエットをフィーチャーした「3月の雨」と「イパネマの娘」がやはりおいしいところ。後者はジョアン・ジルベルトのオリジナル版のスキャットがサンプリングされて使われてますが、これを出したのがヴァーブだからこそ可能になった「遊び」ですかね。個人的にはエル・デバージをフィーチャーした「ジンジ」がロマンチックで良かったです。
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BLUE BRAZIIL / various artsists

2005年08月02日 22時21分17秒 | Jobim+Bossa
昨夜に続いてのブルーノートのコンピレーション・アルバム。ただし、こちらはブルーノート的な保守本流ジャズではなくて、ブラジルのミュージシャンの曲ばかりを集めたもの。どうしてブルー・ノートにこうした作品の版権があるのか、不勉強な私にはよく分からないのですが、ともかく参加ミュージシャンはミルトン・バナナを筆頭に、多分ブラジル勢ばかり、スタイルもピアノ・トリオからヴォーカル物、アコギをフィーチャーしたBGM風といろいろで、おおよそ1965年から80年くらいの作品を集めています。

 1965年といえばアメリカでボサ・ノヴァが大ブームになっていた頃であり、それからほぼ15年間のブラジル音楽変遷をランダムにかつピンポイント的に聴くという趣向ですが、昨夜も書いたとおり、こうした通俗的なB級作品って、90年代に聴いた時は妙にオシャレに感じたりしたものですが、今聴くとあの当時の「埋もれていた音楽を再発見」みたいな新鮮はさすがにありませんが、まだまだ十分にオシャレに聴こえてくるのは音楽の妙としかいいよがありません。こういうのって80年代くらいまでは最高にダサイ音楽だったはずなんですけどね(笑)。

 収録曲では、アイアート・モレイラをフィーチャーしたニュー・カルテットのテクニカルさとトロピカルな野性味が妙に一緒くたになった2曲と、ミルトン・バナナ・トリオの疾走感が溢れるサンバ風なリズムがすばらしいピアノ・トリオ・スタイルの2曲が楽しめました。また、アライジ・コスタとジョイスのスキャット・ヴォーカルをフィーチャーした2はいかにもボサ・ノヴァしていて、夏向きな定番の気持ち良さですし、デオダードのブラジル時代の作品やルイス・アルーダ・パエスのラウンジ風なサウンドは、前述のオシャレ系な音楽でそれぞれ楽しめます。

 という訳で、このアルバム久しぶりに聴いたのですが、なかなかのコンピレーションです。わたし的には知らないミュージシャンばかりのアルバムですが、それ故に匿名性が高く感じられ、夏向きのサウンドという機能性のみを楽しめたというところです。書き方がちと理屈っぽいかなぁ?。要するに誰がやってるなんてことをくだくだ考えずに、BGMとして楽しく聴けたということなんですが(笑)。
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BLUE BOSSA /various artist

2005年08月01日 21時39分27秒 | Jobim+Bossa
 1990年代の初頭の頃に印象的だった出来事といえば、60年代後半あたりにブルーノート・レーベルから出た8ビート系ジャズ・ロック作品群が異常なもてはやされ方をしていたことでしょうか。おそらく、ハウス系のインコグニートとかガリアーノなどが、これらの作品の様々な部分がフレーズ・サンプリングしたことになって注目されたということなんでしょうが、リアルタイマーには「通俗に堕したブルーノート末期のとるにたらない作品群」と認識されているに違いない代物が、こういう形で再評価されたというか、息を吹き返したのは、1990年という「なんでもありの時代」特有の現象かもしれないとか思ったものです。また、硬直化したスクウェアなジャズ評価への反動といった側面もあったかもしれません。

 ともあれ、ブルーノート・レーベルはこうした「ネタ元」をあつめたアルバムを「ブレイク・ビーツ・シリーズ」などいって連打しましたが、これもそんな時で出た一枚。ただし、ここに収録されているのはタイトルからも分かるとおり、8ビート系ジャズ・ロックではなくて、ボサ・ノヴァ系列の作品ばかりです。
 古いものでは1955年、その後60年代後半くらいまでがフォロウされています(イリアーヌは除く)。1955年といえば、まだボサ・ノヴァは誕生していませんので、そのあたりはアフロ・キューバンを含めた南米系ということでアバウトに扱っているんでしょう。参加アーティストはドナルド・バード、ルー・ドナルドソン、ビッグ・ジョン・パットン、グラント・グリーンといった前述のブーム?で浮上したアーティストの他、キャノンボール、ケニー・ドーハム、ハンク・モブレイ、デューク・ピアソン、ホレス・シルバーといった一流どころも登場しますから、色とりどりという感じで楽しめます。

 で、このアルバム、一通り聴いて感じることは、スタン・ゲッツの「ジャズ・サンバ」は当時、やはり相当な影響力があったんだなぁということ。実際、チャーリー・ローズやアイク・ケベック、グラント・グリーンはおろか、キャノンボールの作品まで「ジャズ・サンバ」のパターンで演奏されているのには少々びっくりしました。当時のボサノヴァ・ブームがいかにいかに凄いものだったか実感できようというものです。
 その他、作品ではホレス・シルバーやケニー・ドーハムらによるあまりボサ・ノヴァとは関係ないアフロ・キューバン系の音楽では、その通俗的でB級なノリが何故だか不思議とオシャレに聴こえてしまうという、インコグ全盛の90年代ムードが甦ったりします。

 ただ、まぁ、ブルーノートの作品ということで、ヴァーブの作品群に比べるとやはりジャズの保守本流というムードも強いのも確か。身も心もボサ・ノヴァに売り渡してしまうというより、ちょいと色目を使ったという感じで、「ホントのオレは違うんだよ」って、音楽で語ってしまっているのはいかにもブルーノートではあります。あと、一曲だけイリアーヌの89年のジョビン集から収録されているのは、バランス面からいってやはり蛇足だったかな~とは思いました。
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イリアーヌ・エリアス/私家版ベスト <vol. 1 + vol.2>

2005年07月31日 21時56分17秒 | Jobim+Bossa

 7月以降、サマー・ミュージック関連ということで、イリアーヌ・エリアスのアルバムを多数紹介してきましたが、前から書いている通り、何年ぶりの彼女のベスト盤を作ろうということで、今一度この時期アルバムをさらっておこうとの意図からでした。こうしたベスト盤を作るのは、実はこれが初めてではなくて、かれこれ3ヴァージョン目くらいになりますが、ともあれ今回は彼女の2枚のフュージョン・アルバムを中心に、その間をピアノ・トリオ・スタイルの曲を挟み込むというシンプルな形で、作りました。ソング・リストは下記のとおりです。

 ちなみに「A Long Story」をフィーチャーしたvol.1が昼向き、「So Far So Close」のvol.2が夜向きということで、明確にムードを分けたのも我にながら気に入ってます。明日から8月に突入することですし、まさに夏真っ盛りの中という感じですが、このディスクの活躍する機会もきっと多いでしょう。


   [vol.1]
01 The Girl From Ipanema(Fantasia-`92)

02 A Long Story(A Long Story-`91)
03 Horizonte(A Long Story-`91)
04 Karamuru(A Long Story-`91)

05 Don't Ever Go Away(Plays Jobim- `90)
06 Desafinado(Plays Jobim- `90)
07 Dindi(Plays Jobim- `90)


08 The Nile(A Long Story-`91)
09 Get It(A Long Story-`91)
10 With you In MInd(So Far So Close-`89)
11 Life Goes On(A Long Story-`91)

12 Bahia(Fantasia-`92)

   [vol.2]
01 Brazil(Paulistana-`93)

02 Blue Stone(So Far So Close-`89)
03 Barefoo(So Far So Close-`89)
04 Through The Fire(Illusions)

05 Jet Samba(Paulistana-`93)
06 Angela(Plays Jobim- `90)
07 Paulistana(Paulistana-`93)

08 Barefoot(So Far So Close-`89)
09 Moments(Illusions-`87)
10 Still Hidden(So Far So Close-`89)
11 So Far So close(So Far So Close-`89)

12 Wildflower(Paulistana-`93)

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ELIANE ELIAS./ Paulistana

2005年07月18日 01時37分03秒 | Jobim+Bossa
引き続きイリアーヌ作品であります。彼女の作品って夏以外は全く聴くことがないんですが、そのかわり毎年夏ともなればやたらと聴く機会が多いもんで、ついつい露出度が高くなってしまいます。まして、今年はいい機会だから彼女の私家版ベスト盤をつくろう目論んでいる折でもありなおさらです。さて、この作品は「風はジョビンのように」、「私の中の風と海と空」に続く、ピアノ・トリオ・フォーマットによるサムシング・エルス・レーベル第3作で93年の作品となります。

 とりあげている曲は、ジョビンやカルロス・リラ、イヴァン・リンスなど新旧とりまぜたブラジリアン・ソングとオリジナル数曲。トリオ・フォーマットはこれまでのディショネット+ゴメスと、前作から登場したアースキン+ジョンソンのふたつのトリオがほぼ均等に配分されているのが注目されます。これが何を意味するかというと、早い話が彼女のもうひとつの路線であるフュージョン的なサウンドが、こちらのピアノ・トリオ路線に浸食してきたことを伺わせるということで、実際このアルバムではシンセサイザーも何曲かで使用されたり、コンテンポラリーなリズム・パターンが出てきたりします。前作でちらっとみせた音楽的な広がりが更に大きくなっているともいえるでしょう。ちなみにこうした要素はアースキン+ジョンソン組の曲で顕著であり、彼らがそもそも彼女のフュージョン・アルバムに参加してきたメンツであることも考えれば、このアルバムで彼女がふたつの路線をひとつに収束させようと目論んでいたことも想像に難くありません。

 とはいえ、昨日レビュウした「ロング・ストーリー」のようなひたすらスポーツ的快感を追求したフュージョンに比べれば、まだまだピアノ・トリオ然とした作品ではありますが、とりあえずふたつのトリオを使い分け、多彩な楽曲を収録しつつ、イリアーヌ・エリアス色に全体を染め抜いているのは見事。前作まで見られたちょっと秀才臭さが出たトリッキーなアレンジも姿を消し、女性らしくエレガントで控えめ、あくまでも自然体ながら、独特の流動感を感じさせるピアノも、このアルバムあたりでいよいよその個性を確立したような気もします。そのあたりは冒頭の「ブラジル」や「ジェット・サンバ」あたりに歴然としていますし、「黒いオルフェ」や「ソー・イン・ラブ」の歌い回しも前作より精妙さを増し、なおかつそこそこにかとない情緒を漂わせているあたりに、彼女の成長を感じさせるに充分の出来といえましょう。


 という訳で、個人的にはこの路線だとこれが一番好き。選曲としては第1作目がいいんですけどね....。このくらい熟成したピアノでもう1回ジョビン集やってくれないもんでしょうか。
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イリアーヌ・エリアス/ロング・ストーリー

2005年07月17日 01時13分31秒 | Jobim+Bossa
彼女のフュージョン路線のおそらく最高傑作はこれです。前作で掴んだブラジリアン・フレイバー漂うしなやかなフュージョン・サウンドを思う存分に開陳したといった趣の作品で、ゴージャスなメンツの中、彼女のピアノもヴォーカルも収まるべきところに収まり、隙のない完成度をみせています。フュージョン作品としては前作もかなり上出来でしたが、本作は文句なく前作を超える仕上がりとなりました。ではこれもそれぞれの曲をメモっておきたいと思います。

01 Back In Time
 スキャット・ヴォーカルとピアノが交互に現れる洒落た構成。ピアノ部分はギターとのユニゾンというのはなかなか知能犯的サウンド。サウンド的にはピアノ・トリオ+ギター+パーカスというシンプルなもの。
02 A Long Story
 どっかの航空会社のCMミュージックにでも使えそうな、スピーディーな快適フュージョン。すーすー流れているようで実は複雑なキメを満載しているあたりが、いかにもNYフュージョン的感覚。これを縦線でしっかりサポートするアースキンのドラムがまたサイコー!。
03 Horizonte
 なだらかな起伏をもったミディアム・テンポの作品。白玉が幻想的な情景をかもし出している。夏の夕暮れ時に似合いそうな、暑いけれど冷気がすこし漂い始めたようなサウンド。
04 Just Kidding
 これはマントラ風なお遊びといった感じのコーラスををフィーチャーした作品。
05v Life Goes On
スキャット・ヴォーカルをフィーチャーして、アルバム中もっともボサ・ノヴァ色が強い作品。もっとも中間部はフュージョン的展開になったりして、古典的なボサ・ノヴァというのはかなりモダンだけど....ともあれ、これはボサ・ノヴァとフュージョンの幸せな融合。2と並んでこのアルバムでもっとも好きな曲だ。
06 The Nile
03と似た感じのミディアム・テンポの作品で幻想味はこっちの方が濃い。イリアーヌのヴォーカルもイヴァン・リンスっぽい。後半はボブ・バーグのサックスをフィーチャー。
07 Get It
 02と同様にフュージョン的なダイナミズムを目一杯繰り広げた作品。ボブ・バーグのサックスでテーマを演奏すると、とたんにウェザー・リポート風に....。
08 Just for You
 70年代終盤頃のAORを思わせるバラード作品。ジョーメヘリントンのギターがいかにもそれ風。
09 Karamuru
 スティール・ドラムが入っているのが印象的だか、基本的にはボブ・バーグのソロをフィーチャー、07に続くウェザー・リポート風の作品という感じ。曲の自由度というか、インプロのアウト度ではアルバム随一。
10 Let Me Go
 ヴォーカル作品。きちんと歌詞を歌っている唯一の作品で、バックはピアノとシンセのみ。エンド・タイトル風に余韻を残す曲。
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ELIANE ELIAS / So Far So close

2005年07月14日 00時07分08秒 | Jobim+Bossa
 先のデンオンでのアルバムから2年後の作品。ブルーノートからワールドワイド・デビューということで気合いが入ったのか、フュージョン・アルバムとしてはいささか中途半端な出来となってしまったデンオン時代のそれと比べると、ブロダクション・ワーク、ポリュラリティ、そしてフュージョン的な快適さなどあるゆる面で非常に完成度の高い仕上がりの作品になってます。実はこの夏、イリアーヌ・エリアスの夏向きのベスト盤を作ろうと思っているんですが、それ用の控えとして収録曲をメモっておきます。

01. At First Sight
 その後の彼女のメルマールのひとつともなったスキャット・ヴォーカルをフィーチャーした、おそらく最初の作品。サンバのリズムにフュージョン風なキメ、現れては消えるスキャットと非常にメリハリのある快適な作品。
02. Blue Stone
 AOR風なリズムとブレッカーのサックスがいかにも夜のリゾートっぽいムードを演出。徐々に厚くなるサウンドもよく練られている。コーダでようやくきっちりとしたラテン・リズムが出てくるあたりアレンジは秀逸。
03. Barefoot
 これもスキャットをフィーチャーした、いかにもサマー・ミュージック風な清涼感がある作品。ストリングス、ブラス、ベル系の各種シンセとピアノを使い分けたキーボード・サウンドもカラフルそのもの。
04. Nightimer
 トロピカルなテーマを持ったウェザー・リポート風な作品。ソロは前半がブレッカー、後半がイリアーヌで、ここでのピアノ・ソロは短いが非常に美しい。ピーター・アースキンのセンシティブなシンバル・ワークも効いている。
05. Still Hidden
06.So Far So close
 アコピとシンセによるソロの05を露払いにして始まるタイトル曲は、ほぼ02風なAORサウンド。複雑なキメをすーすー流すように曲に織り込んでいくのは、この時期のNYフュージョンの常套手段。中間部でストトング・シンセを中心に空間的な広がりを見せるあたりは、なかなか聴かせます。
07.Straight Across
 04と似たような無国籍トロピカルというかウェザー・リポート風作品。ただし、こっちの方がより本家に近い。ジャコ風なベースを彼女がシンセ・ベースで弾いている。ソロにはブレッカーも登場。
08.With you In MInd
09.Two Way Street
 前者は05と同様なアコピとシンセのソロ。後者はスキャット・ヴォーカルと打ち込みのリズムの組み合わせ。ちょっとスクリッティ・ポリッティを思わせるファンキー・テクノみたいな趣もある。
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マンフレッド・フェスト/ジャングル・キャット

2005年07月13日 00時24分51秒 | Jobim+Bossa
ふと思い出して、久々に聴いてみた作品。購入したのはもう15年近く前ですが、その間、実に数回くらいしか聴いてないと思います。私はこういうアルバムがけっこう多いのですが、まぁ、購入後しばらくねかせておいて、久々に聴いたら、思いのほかよかった....なんて体験も数多くしているもんで、売り払わずにせっせとため込んでいるんですね。CDを収納するスペースは有限ですから、私の部屋にはCDがあふれかえってます。まったく、こまったもんですが(笑)。

 さて、マンフレッド・フェストはブラジルのピアニスト、ボサ・ノヴァ創世記の頃から活躍している人ですから、超ベテランです。このアルバムではピアノ・トリオ+パーカスのフォーマットで(一部、フリューゲル・フーン入り)、ジョビンのスタンダードやオリジナルを取り上げています。録音は89年ですが、モダンな要素は、フュージョンっぽいところはあまりなく、基本的には古式ゆかしいサンバ系のボサ・ノヴァ・ジャズといった感じで60年代初頭を彷彿とさせるようなムードで全編が仕上げられています。また、ジョージ・シアリング・サウンドを再現したようなところもあり、カクテル・ピアノ風なところも散見しているのは、おそらくこの世代のブラジルのピアニストの特徴なんでしょう。

 ジョビンの2曲は割とサンバを基調としたたオーソドックスなアレンジ。おもしろいのは「星影のステラ」でこれはカクテル風なムード満載の非常にシャレたソロに始まり、ラテンのリズムが導入されるとムードがかわり、やがてホーンが入ると徐々に賑々しいムードに発展するという感じで、これはなかなか楽しめました。オリジナル作品では、3曲目のタイトル曲と9,10曲目あたりが例外的にフュージョン的リズムを使ったモダンな曲調でけっこうおもしろい感じでしたけど、ちょっと浮いている感じ。ともあれ、久々に聴いてもう少し発見や新鮮なところがあるかと思ったんですが、あんまし印象はかわらなかったですね。全く個人的な印象なんですけど、この人のピアノって、リズムの切れはいいし、ブラジルらしいムードもあるんですけど、いまひとつカラフルさだとか、メロディックさみたいなものが稀薄、ドライで角張っているとこ、夏のドライブで聴こうとか、自宅にビール片手に....なんていう欲求がわかなくて、どうも私の心に響いてこない原因になっているようです。

 ちなみに制作はDMPだけあって、音質は今聴いても極めて優秀。今時の低音がドカスカなるようなタイプではなく、トランジェントのよい非常にフラットなキレのいい音質です。そっか、これ「音のDMP」ってことで購入したんだよな、きっと。
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The Best of ELIANE ELIAS On Denon

2005年07月12日 00時36分44秒 | Jobim+Bossa

 こちらは昨日にレビュウした2作に先立ち、80年代終盤頃、日本のデンオン・レーベルで制作した2枚のアルバムからのベスト盤です。先にも書いたとおり、基本的にはブラジル風味が見え隠れするNYフュージョンという感じですが、あまりエレクトリック色は強くなく、生ピアノをメインにしたアコスティックなサウンドです。また、今回、改めて聴いてみて、けっこうジャズ的色彩が濃厚な作品もあったことに気がつきました。

  ちなみに付属のブックレットが非常に簡素なものなので、参加しているメンバーの記載がなく、うる覚えのところもありますが、1曲目「Choro」では、レニー・ホワイトとゴメスによるトリオでタイトルとおりショーロをモダンにしたようなフュージョンを展開。2曲目の「Cross Current」と「Illusion」はピーター・アースキンとゴメスによるトリオのようで、複雑をキメを多用したやはりモダンな4ビート作品で、イリアーヌ自身のソロは前曲もそうでしたが、かなりアウトしまくるジャレット風、こういうパターンは後年あまり聴けなくなったスタイルで興味深いところですね。3曲目の「Through The Fire」はストリング・シンセの音がいかにもリゾードっぽい典型的サマー・フュージョン。ベースはスタンリー・クラークかな。これもリゾードっぽい5曲目の「Moments」はとゥーツ・シールマンのハーモニカをフィーチャー。6曲目「Beautiful Love」、8曲目「Falling In Love With Love」、10曲目「When You Wish Upon A Star」はスタンダード作品で、これはかなりまっとうな4ビート・アレンジで、最後の曲はディジョッネットのドラムが聞こえます。ラストの「Chan's Song」はハンコックとスティービー・ワンダーの共作で再びトゥーツ・シールマンのハーモニカをフィーチャーしてます。

  とまぁ、こんな感じで進んでいく訳ですが、いろいろなスタイルと器用こなしてはいるんですけど、あれやこれやとやりすぎて、全体としてはいまひとつ決めてに欠くという印象もなくはないです。この手のフュージョンにはドライブのBGMに使いたくなるような快適さだとか、ポップなキャッチーさなんかが重要なポイントだと思うんですが、どれもそのあたりが音楽主義的過ぎるというか、早い話が生真面目過ぎてつまんなくなっちゃったところがあるんですね。

 ※ ちなみに昨年購入し未聴覚だったアルバムに「Timeless」というのがありまして、サヴォイから出たということで、私の知らない以前の時代の作品かなとも思ってたんですが、さっき聴いてみたら見事にデンオン時代のベスト盤でした。曲はほとんどダブっているし、収録曲目も少ないのでほとんどメリットなし。デンオン時代のベストって他にもあるようですが、こんなの出すくらいなら、2枚とも出してしまえばいいのにとか思っちゃいますよね。

 

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イリアーヌ・エリアス/私の中の風と海と空

2005年07月10日 01時21分31秒 | Jobim+Bossa
 「風はジョビン」に続くサムシング・エルス・レーベルでの第2作です(1990年録音)。前作が全編ジョビンのカバーだったのに比べると、今回はジョビンの作品もとりあげていますが、他にミルトン・ナシメント、カネロス・リラ、そしてイヴァン・リンスといったよりコンテンポラリーなブラジルのアーティストな作品を取り上げているのが特徴です。また、メンバー的にはあくまでも前作ラインのゴメス&デジョネットによるトリオがベースになっているものの、一部、マーク・ジョンソンとピーター・アースキンと組んだフォーマットやパーカス、ヴォーカルが入ったトラックも収録されており、より音楽的な広がりを求めて制作されたことがわかります。

 主要な曲を拾っておきます。1曲目はジョビンの「イパネマの娘」からスタート。前作はジョビン集だったのにどうして入ってなかったのって疑問に思っていたんですが、ひょっとしてこのアルバムのためとっておいたかもしれません。前半はミディアム~スローのテンポで、ゆったりかつエレガントに美しく演奏され、終盤近くからサンバ風に賑やかなっていく構成。
 3曲目はナシメント・メドレーで、冒頭はイアーヌの娘アマンダのヴォーカルをフィーチャーして親バカぶりを発揮してますが、本編はマーク・ジョンソンとピーター・アースキンにパーカスをプラスした変則トリオでちょっとフュージョンっぽいリズム・パターンを使って演奏がおもしろい。
 4曲目カルロス・リラの「サービ・ヴォセ」は前作のバラード路線に準じた、キース・アラ・ブラジルみたいな演奏....なんていったら、イリアーヌに怒られるかな(笑)。続く「バイーア」はある意味で一番イリアーヌらしい演奏で、ブラジル的な躍動感とジャズ的なインプロを丸みを帯びた躍動感で表現。
 リンス自身のヴォーカルをフィーチャーしたラストのイヴァン・リンス・メドレーは、とりあえずこのアルバムのいいところを凝縮したといってもいい力作で、アルバム掉尾を飾るに相応しい仕上がりといえましょう。滔々とした流れの中、まるで楽器の如くリンスのスキャット風なヴォーカルがフィーチャーされ、その合間をイリアーヌのピアノが埋めていくといった感じですが、次第に高揚していく後半はなかなか聴き物です。
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イリアーヌ・エリアス/風はジョビンのように

2005年07月10日 00時00分02秒 | Jobim+Bossa
イリアーヌ・エリアスはブラジル出身のジャズ・ピアニスト。ステップス・アヘッド周辺のNYフュージョンの人脈から出て来た人ですから、どちらかといえばキーボード奏者というべきかもしれませんが、やはりこの人、ジャズ・ピアニストでしょう。このアルバムは1989年にサムシング・エルスというブルー・ノート傘下の日本のレーベルに録音された彼女のジョビン集です。彼女はこの前に自分名義の作品としては、同じく日本のデンオンから2枚のフュージョン・アルバムを出していますが、こちらはサムシング・エルスの意向でしょうが、エディ・ゴメスとジャック・デジョネットとのトリオによる、ジャズ・ピアニストとしての彼女を全面に出したアルバムになっています。

 内容は前述のとおりジョビン集。彼女の真面目な性格を反映してか、こうした企画物っぽい日本製舶来ジャズにありがちな、安易に企画に迎合したふやけた演奏ではなく、ジョビンという素材に非常に生真面目に対峙しつつ、自らのジャズ・ピアニストとしての技量を思う存分開陳しているという感じで、聴き応えは充分だし、音楽的感興にも不足しない、なかなかのアルバムになっていると思います。基本的なスタイルとしては、ゴメスとデジョネットを呼んでいることもあって、エヴァンス~ジャレット流儀のピアノ・トリオといってもいいでしょう。
 とりわけ「あなたのせいで」や「アンジェラ」、あと「ジンガロ」といったバラード演奏で、こうした雰囲気が濃厚で、キース・ジャレットがジョビンに挑戦したらこうなるんじゃないか....みたいな感じがするほどです。一方、「ディサフィナード」や「ワン・ノート・サンバ」のような大スタンダードは、ちょっと考え過ぎなというかトリッキーに過ぎたところはありますが、テーマを思い切って変形、込み入ったリズムにのっけて演奏するなどして、「ありきたりボサ・ノヴァにだけにはすまい」という彼女のブラジル人としてのプライドのようなものを感じさせるスリリングな演奏になっています。

 ついでに書くと、個人的にはこのアルバムで気に入っているのは、なんといっても「ジンジ」。アルバム中でも珍しくスレートに演奏していますが、とにかくメロディアスでノスタルジック、もうとろけてしまあそいうなほどロマンティックな演奏が絶品です。ついでに「サビア」はほとんどピアノ・ソロのようなトリオで、これもキース・ジャレット風ではあるんですけど、もう少し女性的なアンニュイな情緒があって、しっとりとした美しさが印象的。ジャズ的な演奏としては、「チルドレンズ・ゲーム」の変形4ビートにのって、お馴染みの旋律が見え隠れしつつ、ホットにインプロを展開させていくあたりの展開が見事で、聴き応え充分です....という訳で、コレ、いわゆるボサ・ノヴァ・アルバムという感じの音楽ではありませんが、夏になると聴きたくなるアルバムであります。
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ジョアン・ジルベルトの伝説

2005年07月05日 00時13分19秒 | Jobim+Bossa
 ボサ・ノヴァの誕生の記録としてつとに有名な作品です。このあたりの詳しい事情は寡聞にして知りませんが、要するにこのジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、そして詩人のヴィニシチウス・ヂ・モライスの3人を中心した当時のリオの若者達が、従来のブラジル音楽に飽きたらず、サンバにジャズ的要素を加え、都会的で洗練された新しいブラジル音楽を作った....というものが、ボサ・ノヴァの発端のようです。この作品はこうした1959年から61年にかけてのブラジル本国で録音された、ジョアン・ジルベルトの作品集。

 この時期のジョアン・ジルベルトが一体ブラジルのオデオン・レーベルに何曲くらい録音を残したのかは分かりませんが、ここに収録された38曲のほとんどがボサ・ノヴァ・スタンダードとして後生に残っているのは、ある意味驚きです。これまで何度も書いている通り、この後、ボサ・ノヴァはアメリカに渡って世界的なブームになる訳ですけど、そこで演奏される曲のほとんどがここで既に披露されているだけでなく、アレンジ・ネタもかなりのものがここにあるんですね。改めて聴いてみると、アメリカ人がやったことは単に洗練されたアレンジを施しただけ....という感すらするほどです。曲はどれも1分半から2分くらいの短く、アレンジもその後のものに比べれば簡素と言ってもいい素朴なアレンジですが、何の不足もないほど完成しています。ボサ・ノヴァって最初からこんなに「出来上がっていた音楽」だったんだなぁ....と思うことしきり。

 その中心となるのは、もちろんジョアン・ジルベルトのちょいと鄙びていて、気怠い憂鬱さを滲ませつつも、決して軽みと微笑みを失わないヴォーカル。その感触はまさにワン・アンド・オンリーな世界というしかなく、加えて歌っているのがジョビンの名曲の数々なのですから、今から思えば永遠の名作となるべく作られたとしか思えない訳ですが、きっと当時はやっている方も聴いている方も、単に一過性の流行音楽と思っていたんじゃないですかね。ところがこうして音楽史に残るような作品になってしまうあたりに、音楽のおもしろさがありますよね。

 あと、ここで聴ける音楽って、何年たっても古びないのと同時に、なんていうか1960年前後時代が見事に刻印されてます。高度成長期特有のオプティミズムとそれと裏腹な倦怠感みたいなものが、メビウスの帯のように表裏一体化しているというか、なんというか。とにかく、この音楽を聴くと決まって、フェリーニの「甘い生活」とかヌーベル・ヴァーグの諸作(特にシャブロルあたり)なんかを、思い出しちゃうんですよね。まっ、私だけかもしれないですけど....。
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