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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

アストラッド・ジルベルト/いそしぎ

2005年07月04日 01時13分14秒 | Jobim+Bossa
 今回のアルバムは、前々回紹介した「ゲッツ/ジルベルト」でちょい役で登場して、またたくま大スターになったアストラッド・ジルベルトが、1965年に発表したセカンド・アルバムです。前回まで紹介してきた3枚は、アメリカのヴァーブ・レーベルから出た「ボサ・ノヴァ三大傑作」というに相応しい内容、評価を得た作品だと思いますが、このアルバムはそれらに匹敵する作品といえると思います。個人的にはこれにワルター・ワンダレーの「サマー・サンバ」を更に加えて、「5大傑作」といい替えたいくらいに、評価できるし、好きな作品なんですよね。

 さて、彼女のアルバムとしては、これに先立つデビュウ作が、ジョビンの作品を数多く歌い、さらにオーソドックスなアレンジを施した仕上がりだったので、正統派ボサ・ノヴァともいえる仕上がりだったですが、本作品はより普通のヴォーカル・アルバムに近いというか、非ボサ・ノヴァ曲をボサ・ノヴァ化して歌うなど、大向こう受けを狙った仕上がりの曲が多いのが特徴といえると思います。何しろ1曲目がジョニー・マンデルが作った映画音楽「いそしぎ」ですし、フランク・シナトラで有名な「フライ・ミー・トウ・ムーン」、大スタンダード「フー・キャン・アイ・ターン・トウ」といった曲が含まれていて、それらが瀟洒なオーケストラ・アレンジにのって見事にボサ・ノヴァ化されている訳ですから、このアルバムがどういうリスナーに向かって作られたかはいわずもがなでしょう。

 一方、ボサ・ノヴァ系の作品としては、「カーニバルの朝」を筆頭にルイス・ボンファの作品が多く収められていて、ジョビンの色彩感やモダンさとは違った淡彩なセンスの良さみたいなものが、前述のスタンダート作品などと絶妙の調和を見せています。5曲「ノン・ストップ・トゥ・ブラジル」の軽やかなトロピカル風味、6曲「オガンソ」のボサ・ノヴァ・スキャットなど実にいい感じでアルバムにとけ込んでます。ちなみにルイス・ボンファはジョビンより世代的にひとまわり上で、根っからのボサ・ノヴァ世代であるジョビンやジルベルトへ、旧来のブラジル音楽をボサ・ノヴァへ橋渡しをしたような存在です。

 最後に主役のアストラッド・ジルベルトですが、歌が下手とかいろいろ揶揄する向きもあるようですが、柔らかい感触でやや物憂げにボサ・ノヴァを歌うという、女性ボサ・ノヴァ・シンガーのひとつのパターンを作っただけでも、パイオニアのひとりとして評価すべきですが、やはりこれだけチャーミングにボサ・ノヴァっぽい雰囲気を醸し出せるのは希有というしかないでしょう。ちなみにアレンジはドン・セベスキー、クラウス・オガーマン、ジョアン・ドナートという豪華な布陣で、女性ヴォーカル物としては、ほぼ完璧な編曲となっています。実際、その部分を聴いているだけでもけっこう楽しめちゃうんですよね、このアルバム(笑)。

 ※ それにしてもこの作品、どうしてこんなに音悪いのかな、マスターでも紛失しているのだろうか。
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S.ゲッツ&C.バード/ジャズ・サンバ

2005年07月03日 03時01分24秒 | Jobim+Bossa
 前回の「ゲッツ/ジルベルト」の前哨戦にあたる62年の作品です。ここでスタン・ゲッツと共演しているのは、ギタリストのシャーリー・バード。私はこの人のことほとんど知らないのですが、オーソドックスなジャズ系のギタリストらしいのですが、なんでも文化使節とかでブラジルに行って、ボサ・ノヴァに魅了され、以降その路線に方向チェンジした人らしく、そのあたりのキャリアに白羽の矢がたったらしいです。ちなみにアルバム・タイトルは「ジャズ・サンバ」ですが、これは当時、アメリカではまだボサ・ノヴァという言葉が一般化していなかったことを伺わせるネーミングですよね。

 音楽的にはジョビンの曲を2曲ほどやっていはいるものの、リズムは基本的に昔流のサンバっぽいパターンが主体となっていて、ここにスタン・ゲッツとチャーリー・バードのソロがのっかかるという構成になってます。したがって、インプロビゼーションが始まってしまうと、ボサ・ノヴァっていうより、いわゆるラテン・ジャズみたいな感じになってしまうのは、このアルバムが録音された時代というものなんでしょう。

 演奏されている曲では、やはりジョビンの2曲、つまり1曲目の「ディサフィナード」と5曲目「ワン・ノート・サンバ」が良いです。前者はゲッツがジョビンの旋律をゲッツらしく良く歌うが決して熱くならない例の調子で快適にブロウしていますし、バードのギターは、ボサ・ノヴァというのには時にやや場違いなカリプソ風なフレーズを入れたするのがご愛敬ですが、これまた流麗なフレーズ応酬するあたりがいいです。前回の「ゲッツ/ジルベルト」はジャズというにはちょいと?なところもありましたが、こちらはこの絡みを聴いただけでもジャズを感じます。後者では「クール・ジャズのゲッツ」を感じさせる低い温度感がジョビンの曲にいかにもあっていて、これまた快適。

 この2曲に比べると、残りは前述のとおりボサ・ノヴァというより少々古くさいサンバのような感じではありますし、ゲッツとバードは人間関係は最悪だったようですが(ジルベルトの時と同様に-笑)、音楽的にはそんなことを感じさせない緊密さがあります。おそらくバードがそういうお膳立てをしたんでしょうが、常なるペースでブロウするゲッツのバックに回り、様々なギター・ヴァリエーションを抜群のテクニックで披露しつつ、音楽全体を盛り上げていくその流麗なプロセスは、精緻な美しさすら感じさせます。
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ゲッツ/ジルベルト

2005年07月02日 22時21分39秒 | Jobim+Bossa
 ジョアン・ジルベルトとスタン・ゲッツの共演による問答無用の名盤です。一応、歴史的な流れでいうと、50年代終盤にブラジルでボサ・ノヴァが生まれ、それがアメリカに渡って、62年にスタン・ゲッツとチャーリー・バードの共演による「ジャズ・サンバ」というアルバム結実して大ヒット。商売人のクリード・テイラーが次なるヒット狙いで企画したのが、63年に出たこのアルバムということになるんでしょう。なにしろ、前作の主役だったスタン・ゲッツにボサ・ノヴァの創始者のひとりであるジョアン・ジルベルトを共演させ、おまけに御大ジョビン、ついでにアストラッド・ジルベルトというどでかいオマケまでついた訳ですから、さすがクリード・テイラーというか、こういうなんでもあり的な豪華というのはヴァーブの伝統なんですかね。

 さて、このアルバム、内容はまさにタイトル通りスタン・ゲッツのテナー・サックスジョアン・ジルベルトのヴォーカルを並べてフィーチャーしていますが、音楽的にはスタン・ゲッツをフィーチャーしたジャズ的なボサ・ノヴァにジルベルトが加わったというより、ジルベルトのヴォーカルをメインにした小コンボにスタン・ゲッツが加わったという感じです。つまり基本的にはヴォーカル・アルバムということで、その意味で前企画である「ジャズ・サンバ」より、ジャズ的なムードは少なく、「本物のボサ・ノヴァ」っぽいムードがあります。というか、ワールドワイドな意味では、この作品あたりが本当の意味でのボサ・ノヴァの始まりだったんでしょうね。

 曲は有名な「イパネマの娘」からスタートしますが、ジョアン・ジルベルトがいつものクールな雰囲気で歌った後、アストラッド・ジルベルトの声が聴こえくると世界が変わってしまうから不思議、それまであくまでも「通向きの小粋な音楽」だったボサ・ノヴァがメジャーになった瞬間とでもいいましょうか。ともあれ、ジョアン・ジルベルトの声がこれ一発で影が薄くなったのは確か。ちなみにこのアルバムでアストラッドの歌声はこの曲と5曲目「コルコバド」にワンコーラス出てくるだけですが、結果にこれがきっかけになって、ボサ・ノヴァの女王としてジョアンやゲッツ以上の人気者になってしまう訳ですから、音楽の世界というのはわかりません(笑)。

 とはいえ、ここでのジョアン・ジルベルトは、ブラジル・オデオン時代の変わらぬ常なるペースで押し切っているのはさすが。この人、相手がサックスでも、オーケストラでも、はたまたギター一本でも、歌い始めると完全にこの人の世界に染めてしまうんですよね。ただ、このアルバムではちょいとばかりゲッツのサックスがしゃしゃり出過ぎているというか、音量がでかすぎてバランス壊していると思えなくもないかもしれません。アストラッドにおいしいところを持っていかれ、ゲッツに音量で負け、思えばジョアン・ジルベルトのワールドワイドなデビュウ作となったこのアルバム、彼にとっては不幸なアルバムだったのかも....。

 ついでにいうと、このアルバムの随所で聴こえるジョビンのピアノは、このアルバムの翌年出ることなる「イパネマの娘」のシングル・トーンの響きを既に予見しているといえます。うん、やっぱしクリード・テイラーがこのアルバムの録音中に思いついたに違いない(笑)。
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アントニオ・カルロス・ジョビン/イパネマの娘

2005年07月01日 23時41分46秒 | Jobim+Bossa
 今日から7月に突入、実際の季節は未だ梅雨とはいえ、先日の猛暑のせいもあって、当方の気分はもうすっかり夏....ということで、今日からしばらく間、ボサ・ノヴァ&サマー・ミュージック関係のアルバムをちょくちょく取り上げていきたいと思います。けっこう好きなんですよね。この手のリゾートっぽい音楽。えっ、柄でもないですか、どうもすいません(笑)。

 さて、第一弾はボサ・ノヴァ史上の大名盤です。このジャンルの名盤は数々あれど、私にとってボサ・ノヴァといえば、なんといってもこれ。ボサ・ノヴァの創始者のひとり、アントニオ・カルロス・ジョビンがピアノやアコギを弾いて(ボーカルはなし)、アメリカのヴァーブからワールドワイドにデビューした63年の作品で、ジョビンの作った問答無用のボサ・ノヴァ・スタンダードがずらりと並んだ名盤中の名盤です。

 演奏はオガーマン編曲によるクールで格調高いオーケストラがバックに陣取り、ジョビンのシングルトーンで弾いたピアノがフィーチャーされるというのが基本スタイルですが、いったいこの組み合わせを誰が思いついたのか(クリード・テイラーか?)、とにかくあまりに秀逸かつドンピシャな組み合わせだったので、その後、ボサ・ノヴァといったら「こういうスタイルの音楽のことだ」と勘違いする人も出るくらいに、ひとつのスタイルとして一般化したのは、そのアイデアの秀逸さを物語っているというべきでしょう。

 実際、私など子供の頃に聴いた、フランシス・レイの「男と女」とか「パリのめぐり逢い」あたりの音楽の影響なのか、こういう音楽ってのはフランスあたりのイージー・リスニングがルーツになっているもんだとばかり思っていて、「一体、こういう音楽はなんていうジャンルなのだろう」って常々疑問に思ってたもんで、20代後半の頃、ふとしたきっかけでこのアルバムを初めて聴いた時は、ちょっとしたショックを受けたもんです。「私が探していた音楽って、これだったんだぁ」って感じで....。

 ところで、このアルバム、一応表向きはアントニオ・カルロス・ジョビンの自作自演アルバムということになるんでしょうけど、今の感覚でいったら、ジョビンというより、絶対クラウス・オガーマン名義で出すべき内容でしょうね。なんたってこのアルバムの主役はオガーマン編曲によるオーケストラでしょうから。弦の高い方と木管系の管楽器をなんとも効果的に使ったオーケストレーションは、まさしく唯一無比、オガーマンでした実現できない響きが充満しています。

 という訳で、このアルバムに横溢する、理屈抜きまずは感覚的に快い独特なひんやり感とずらりと並んだジョビンのスタンダード・ナンバーもちろん文句なし、ついでに何年聴いても飽きない味わい深さもある....というワケで、本物のボサ・ノヴァというのとはちょっとちがうかもしれないけれど、私としてはベストな1枚です。
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